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資産家の老人(コメディー)
とある資産家の老人は、SNSでこうつぶやきました……。
「おれの財産か? 欲しければくれてやる。看取れ。そうすれば、この世のすべてをお前にやろう」
世はまさに、「大介護」時代。
SNS上では、大反響。
この老人は、大富豪として有名でした。
仕事ばかりにうちこんでいたため、遺産を継ぐ家族もいませんでした。
そして、つい最近、自分が不治の病に侵されていると告白したばかり。
遺産は確実に手にはいる。
多くのひとが、介護の募集に応募しました。
集まった履歴書は数十万枚。
紙の束は、老人の寝室に運ばれました。
「社長。これが応募の履歴書です」
部下がそう言いました。
老人は、管に繋がれながら、その束を見て鼻で笑いました。
「死にかけの老人が、こんな数の書類を確認できるわけがないだろう?」
三日後、老人は天へと旅立つのでした……。




