68/124
別の世界へ(新作)
わたしは、この世界をもうすぐ離れなくてはいけない。
ここは、とても温かい世界だった。
わたしは、この世界に甘えていた。
だって、この世界はとても居心地が良かったから……。
少しずつ、私の意識が混濁しはじめた。
ああ、ついに終わりだ。
わたしは、慣れ親しんだこの世界に別れを告げる。
「わたしは、ここに居られた時間、とても幸せだったよ。ありがとう」
そして、わたしは新しい世界にたどり着いた。
そこで産声をあげる
まだ、見ぬ母に見守られながら……。
これが、自分がはじめて聞いた自分の声だった。




