うさぎとかめのひげき(新作)
童話に『うさぎと亀』というものがある。
有名な童話だ。
自信過剰なうさぎは、鈍足の亀に徒競走を挑んで、油断して昼寝して負けてしまうという筋書きだ。
これを読んだ多くのひとが、「うさぎは怠け者」だとか、「自信過剰なバカヤロー」、一方で亀は「勤勉で真面目だ」とか思うに違いない。
しかし、これは悲劇の始まりだった。
うさぎは亀の策略により、ピエロに仕立て上げられてしまったのである。
そう、この童話は、亀一族によるプロパガンダだったのだ。
うさぎは、昼寝をしていたわけではなかったのだ。
彼女は、大変病弱で、スタミナが乏しかった。
たしかに、短距離走では彼女は優秀なランナーだった。
しかし、競争は、長距離だったのである。
当時は、動物総選挙が間近に控えていた。
地味な亀一族は、その選挙に苦戦していたのだ。
対抗馬は、華やかなうさぎだ。
勝てるわけがない。
だから、亀一族は計略を考えた。
うさぎが、自信過剰で怠け者というイメージを植え付けてしまえば、選挙での当確は間違いない。
そう、この競争は、亀側から仕掛けられたものなのだ。
うさぎは、選挙期間中のため、その挑戦を退けることはできずに、結果的に惨敗した。
そして、体調不良で倒れたうさぎを、怠け者というレッテルを貼り付けられた。
こうして、動物総選挙では、亀一族が圧勝。
一〇年後には、動物大統領へと就任することとなったのだ。
そして、うさぎは……。




