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遅い初恋(新作)
このまえ、彼女ができた。
三十歳手前で、ようやくできた彼女。
恥ずかしながら、はじめての彼女だ……。
はじめての男女交際。
緊張の連続だった。
デートで手をつないでいいのか?
食事はどこがいいのか?
見るべき映画はなにか?
今までの人生で考えたこともない世界がそこには広がっていた。
しかし、彼女にはまだ言えていない。
「あなたが、はじめての彼女です」と……。
恥ずかしくて言えないのだ。
おかげで一カ月も本当のことを言えてない。
今日、おれは彼女に真実を告げる。
※
レストランでの食事の帰り、おれはついに口を開いた。
「じつはさ、おれ、きみ以外の女性とお付き合いしたことがないんだ」
ついに言ってしまった。
顔が真っ赤になっている。
彼女は少しだけビックリして、顔が赤くなる。
「実はわたしも……」
そう言って、ふたりは顔が同じ色になる。
そして、彼女のほうから唇を合わせてくれた。
「ふたりともファーストキスだよ」
彼女は恥ずかしそうにそう言った。




