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天才(新作)
「おまえは、天才だよ」
「すげえな、Aさんは」
ここは、おれの楽園だ。
みんながおれを褒めてくれる。
おれは、小さいころから落ちこぼれだった。
学校の勉強にはついていけず、大人たちには常に怒られていた。
おれは、ダメな人間なのだ。
でも、ここにきたらおれは天才なのだ。
おれがいるこの新世界は、まさに楽園だ……。
※
「おい、Aさんの話聞いたかよ?」
「ああ、やっぱりあのひとは天才だな」
おれたちは、Aさんの話で盛り上がる。
この塀の中では、娯楽が少ない。
だから、Aさんの話はおれたちのなかでは最高の娯楽だった。
「まさか、あんな手口を考えるなんてな!」
「あの犯行のニュースを聞いた時、おれは鳥肌が立ったよ」




