なつの思い出(新作、恋愛)
俺は、仕事の帰り道で、昔のことを思いだしていた。
※
それは、たぶん、小学校一年生のころだった。
おれは、家族と一緒に海に行ったのだ。
しかし、そこは夏休み。海はすごい人だった……。
はしゃぎすぎて、おれはすぐに迷子になってしまった。
周囲は知らない人だらけ……。
おれは、心細くなり泣き出してしまった。
泣いていると、同い年くらいの女の子が近づいてきてくれた。
彼女は、泣いているおれをみると、ニッと笑いかけてくれて、アイスをくれた。
二本セットになっているチューブ状のアイス。
その後のことは、よくおぼえていない。
アイスはいつの間にか食べてしまっていたし、気がついたら家族が迎えに来てくれた。
彼女には、ちゃんとお礼も言えなかった……。
※
「おかえり。暑かったでしょう」
家では、妻が待っていた。
「ああ」
おれは、簡単に答える。
「アイスでも食べる?」
妻は、そう言って、おれにアイスを差しだした。
思い出のチューブ状のアイスだった……。
「ああ、ありがとう」
「これ、懐かしいでしょう?」
妻がそう言ってきた。
「子供のころ好きだったよ」
「わたしも。そう言えば、このアイスには思い出があってね……。家族で海に行ったときに……」




