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バイバイ(現実恋愛)
「バイバイ」
彼女が最後に発した言葉はこれだった。
もう夢のなかでしか会えないあのひと。
最後のくちびるの味はもうおぼえていない。
お互いに若かった。どうして、あんなことになってしまったのか。わからない。
たぶん、彼女もそう思っているはずだ。
もう日曜日の夕方。
窓から見える風景もどんどん暗くなる。
夕飯の買い物にいかなければいけない。
ぼくは外に出た。
歩いていると、彼女と似た背格好のひとを目で追ってしまう。
こんなところにいるわけがないとわかっているのに。
「大好きだったよ」
突然、彼女にそんな風に言われた気がした。
涙があふれそうになる。暗くなっていく街にむかって、叫びたかった。
のどが痛くなるほど叫びたかった。
「 」
街灯が自分をあたたかく包んでくれていた。