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ブラック領主(歴史、新作)
「くそ、どうやったら、生活が豊かになるんだよ」
一年に一度の納税の日。
俺は、もうすぐ役人に持っていかれる米俵を見て、そう言った。
なにもかも、あの領主が悪い。
あの暴君は俺たちの生活を考えずに、重税を課すのだ。
米はくえず、いつも芋ばかりの食卓だ。
いつか、目にもの見せてやる。
俺は、いつもそう毒づいていた。
※
「そこをどうにか、納税を免除していただけませんか? もはや、領民は限界をむかえているのです。このままでは、餓死者がでかねません。どうか、考え直してください。国王様」
私は、陛下に向かって嘆願した。
結果はわかっている。
「よかろう。主の好きにすれば、よかろう。しかし、隣国が攻めてきたときは、どうなるかわかっているだろうな。領主よ……」
無慈悲な言葉だった。
こうして、我が領国の運命は決した。
「領主様。どうでしたか」
面会が終わると部下がこう聞いてきた。
儂は、首を横に振る。
「くそ。あのばか殿が。あとで、目にものを見せてくれる」
部下の怨嗟の言葉を聞くことしかできなかった。




