あの日(ヒューマンドラマ)
あの日……
おれは、朝食を食べながら、テレビをみていた。
そこに流れたおどろおどろしいアラート。
アナウンサーが某国から「ミサイルが発射されました」、「地下や頑丈な建物に避難してください」と繰り返し言っていた。
「ああ、いつものことか」おれはそんな風に思っていた。
そして、すべてが光に包まれた。
あの日……
わたしは、学校に行くための準備をしていた。
携帯のアラームが突然、鳴った。
アラートだった。
「ああ、また」そんな軽い気分だった。
しばらくして、遠くで光がみえた。
あの日……
自分はテレビを見ていた。
テレビをみていたはずだった。
さっきまでそこにはアナウンサーがいたのだ、たしかに。
でも、すべて光が飲み込んでしまった。
もうテレビは映らない。
あの日……
わたしは、勤務先の病院にいた。
ここは運よく、ミサイルの被害を受けずにすんでいた。
しかし、おびただしい、犠牲者と負傷者が運び込まれてくる様子をただみていることしかできなかった。
もう、医療器具はそこをついていた。
特殊な負傷者に対応する術は、もうどこにもない。
あの日……
わしは農作業をしていた。
いくつもの光が空で爆発した。
東京のほうで「大きな光」と「きのこのような雲」をみた。
それはすぐにわたしの頭の上にもやってきた。
あの日……
東京は壊滅した。
いや、ちがう。
きっと世界はすべて崩壊したのだ。
もうなにも情報は入らない。
おびただしい遺体と蔓延する伝染病。
わたしたちはいつ、自分にその番が回ってくるか怖がっている。
あの日……
安全な食料はすべてなくなった。
攻撃の後遺症によって、汚染されたものしかわたしたちは食べることができない。
その食べ物すら奪い合いが始まっている……




