フリーダム(ヒューマンドラマ)
わたしは今、自由である。すべてのしがらみから解放された。
「意地っ張り」
これはわたしのためにあったような言葉だ。
なにをするにしても、他人よりも上を目指していた。
つねに自分と他人を比べて生きてきた。
友達が中古車を買ったと聞いたら、自分は新車を買う。
同期よりも収入は高くなりたかったし、出世もしたかった。
少しでも馬鹿にされたら、根に持つし激怒していた。
つまらない男だ。でも、それがわたしだった。
そんな生活は簡単に崩壊した。
ある日、突然、リストラされたのだ。もしかすると、前兆はあったのかもしれない。でも、他人のことばかり気にしすぎて、大事なことに気がつかなかったのだ。
妻子は当然のように出ていった。
あたりまえのことだ。家族なんて顧みないで仕事をしていたのだから。
そんな男が仕事を失ってかえってきた。滑稽だ。あまりにも滑稽だ。
自分でも笑えてくる。
安アパートに引っ越し、アルバイトで養育費と生活費を稼ぐ日々が続く。
でも、自分は幸せだった。これは見栄でもなんでもない。
むしろ、見栄という重石がなくなったことへの解放感が自分を包んでいる。
「これが本当の自分だ」と世界に向けて叫びたかった。
仕事終わりに一言青空につぶやく。
「今日も幸せだった」と。




