ずるやすみ(コメディー)
ぼくが気が小さい。
仕事でもいつも怒られてばかりだ。もう本当につらい。やすみたい。仕事なんてもういやだ。
でも、自分から有給休暇の届け出をする勇気もない。ぼくは本当に駄目だ。
自分でいえないなら、他のひとにいってもらえばよいじゃないか。ぼくは安易な思い付きをした。
同僚から「休め」といってもらうにはどうすればよいか、ぼくは真剣に考えた。そして、たどり着いてしまったのだ。あの、悪魔の方法に。
決行の朝がきた。曇った朝だった。
コンビニで、トマトジュースを買う。あの、ドロドロする赤い液体を。それをいっき飲みし、職場へとむかう。のどにまだトマトの感覚がある。これは成功だ。
そして、席についたぼくは、咳をする。大げさに咳をする。そして、ティッシュで口をぬぐう。
完璧だった。そこには、ピンクの液体がついていた。もうこれは、よくテレビで見るあれにしか見えない。
みんなが咳をしているぼくを見つめている。よしここまでは計画通り。
ぼくはハンカチで口をおさえながら、トイレへとむかった。少しよろけながら。
そこで、時間を潰す。もう、みんなピンクのティッシュに気がついたころだろう。
ぼくは計画の成功を確信した。これでだれかが「休め」といってくれる。
遠くではサイレンの音が鳴り響いていた。




