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第四次世界大戦(ヒューマンドラマ)
ずっと昔、世界で「せんそう」というものが起きたらしい。
とても大きな「せんそう」であったそうだ。
というのも、ぼくたちはよく知らないのだ。
むかしは「もじ」というもので、記録を残していたらしいが、「せんそう」ですべてきえてしまった。
ひともいっぱい死んだらしい。
だから、いまはなにもないし、なにもしらない。
いま、ぼくたちは、洞窟で暮らしている。
木の実や小さな動物を狩って、なんとか生き抜いている。
おとうさんがかえってきた。でも、手にはなにも持っていない。
残念。きょうの夕食はどんぐりだ。わびしいな。
おかあさんの機嫌も悪くなる。
けんかがはじまった。
「おとうさんの狩りが下手で困っちゃう」
「おまえだって、木の実盗み食いしてるだろう」
怒ったおかあさんが、石を投げている。もちろん怪我しないように手加減しながら。
おとうさんはこん棒で必死に石をはじいている。
ぼくはふと思った。
「せんそう」というものはこういうものなのかもしれない、と。