来世(恋愛)
「久しぶりにいつものところで会わない?」
わたしは久しぶりに彼女を遊びに誘ってしまった。
やってしまったという後悔と、「OK」がもらえた喜び。
複雑な心境というのはこういうことをいうんだろうな。
いつもの店で、彼女を待つ。
世間からすれば、ルール違反の行為かもしれない。
それでも、自分では我慢できなかった。
大好きなダルマのようなウィスキーを飲みながら、彼女を待つ。
待ち合わせ時間ピッタリに彼女は到着した。
「久しぶり。1年ぶりくらい?」
「そうだね。何飲む?」
「どうしようかな」
2人で昔話に花が咲いた。
たのしいひと時だった。
「それで?なにかあった?」
「なにかないと会っちゃダメ?」
「その言葉からして、なにかあったでしょ」
すべてお見通しらしい。
「うん、その」
言葉を濁しながら、かくごを決めた。
「今度、結婚することになったんだ」
「そう、それはおめでとう。ついにだね」
「うん、ありがとう」
新居のこと。式の日取り。ポツポツと話していく。
楽しい2時間だった。
最寄りの駅で解散。いつも通りだ。
最後に彼女はいたずらっぽく聞いてきた。
「ねぇ、わたしのこと好きだったでしょう?」
おれは少し考えて、こう答えた。
「それは来世にでも、答えるよ」
答えているようで、答えていない不思議な回答。
ふたりにとってはそれで充分だった。
お互いに笑いあった。さわやかな笑い声だった。
「それじゃ、来世で」
ふたりは解散した。