革命家(ヒューマンドラマ)
7月9日
俺たちは革命を目指している。
おとなたちは、なにも変わろうとしない。
世界の不公平には目をつむり、自分だけがよければそれでよいと本気で考えている。
俺は、俺たちは、みんなが自由で公平な世界を創るのだ。
あんな大人たちとは違うのだ。
そのために、俺たちはデモをおこなうことなった。
世界から不公平をなくすためのデモだ。
「政府がこれを認めるまで、おれたちは戦うぞ」と演説をすると、
仲間たちが大きな歓声をあげてくれた。
まるで、世界がひとつになったみたいな高揚感だ。
7月16日
親からもらった仕送りが少なくなった。
今月は少しピンチだ。
でも、仲が良いメンバーとの飲み会は楽しい。
「この前の演説よかったな。警察と乱闘騒ぎになってけが人もでたけど」
「大義のためなら、多少の犠牲はしかたないよ。今度は国会に乗り込もうと思っている」
「いいな。おれも一緒にいくぜ」
みんな威勢のよいことを言って楽しんだ。
俺たちがいま、世界の中心にいる。多幸感に包まれた飲み会だった。
※
ある日、わしは大学時代の日記をみつけた。とてもなつかしい思い出だ。
しかし、結局、世界は変わらなかった。
俺たちは普通に卒業して、普通に働いて、普通に退職した。
いまでは年金暮らしである。
世の中は不況が問題になっている。テレビのニュースでは、若者の貧困問題が特集されていた。
「まったく、さいきんの若者は情熱が足りんな」
老いた革命家はそうつぶやいた。