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平行世界
「私は、あなたの娘です」
ある日突然、娘が訪ねてきた。だが、男には娘なんていない。
「キミは誰だい?」
「私はあなたの娘です。でも、ここではない別の世界での話ですが……」
男は、自称娘を連れて、病院に行き、検査を行った。
DNA検査の結果は、彼女が言う通りの結果を示していた。
「キミはどこから来たんだい?」
「この世界とは、まるで違う世界です」
「どうして、キミはここに来たんだい?」
「お父さんにどうしても会いたかったから」
「でも、私はキミのことを知らないんだ!」
「そうですか。なら、一晩だけ、私をここに泊めてください。明日の朝には別の世界に帰ります」
男は、頷いた。
※
娘は、早朝、男の部屋を出てきた。
血塗られたナイフをもって……
「そうやって、あなたは私の母を捨てたんですね。あなたが裕福で幸せな生活をしているのに、私たちは地獄のようなところで生きていかなければならなかった。それが許せなかった。親子なのに、私とあなたは住む世界が違う」




