宇宙戦争
(同盟軍、第11艦隊壊滅。キッポー中将、戦死)
伝令が取り乱した様子で司令の俺にそう伝えた。
「ばかな。あのキッポー中将がっ!? 奴は、サービス開始以来、一度もログアウトしたことがない怪物だぞ」
(協商軍、最高戦力グレーツ元帥が動き出したようです)
「グレーツ。あの課金野郎かっ」
(司令、左翼が崩れました。ここは撤退しか……)
(すでに大型キャリアの半数が被弾。戦線を維持できません)
部下たちが俺にチャットで悲鳴を上げる。3時間の戦闘ですでに一般サラリーマンの月収分の課金アイテムが吹き飛んでいた。
(後方のサイサイ少将の裏切りです。退路は塞がれました。もう、逃げ場はありません)
「ばかな。あの野郎。リアルは甘えとか俺たちと再三、誓い合ってきたのに……」
(旗艦”グレート・マサヤ”被弾。マサヤ総司令が重傷を負ったそうです)
(総司令が指揮権をあなたに移譲させることが決定したそうです。たかし大将、ご指示を……)
ドアをノックする音が聞こえた。
「ねぇ、たかし? いい加減、部屋から出てこない?」
「うるせえ。今、世界を救っている最中だから、話しかけんな」
「でも……」
「いいから、黙ってろ」
俺は雑念を振り払う。
「全軍に告ぐ。私はマサヤ総司令に代わって全軍を指揮するたかし大将だ。現状、わが軍は撤退も許されない厳しい状況だ。こうなっては、敵中突破を図るしか策はない。我に続け……以上」




