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食欲
「お主たちの食欲はやがて、世界を喰らいつくすだろう」
これから食事をしようとするところで老人に声をかけられた。
「どうして、食事がまずくなることを言うんですか?俺はそんなに大食いじゃないですよ」
「そうではない。そんな話をしているのではない。これは世界の命運をかけた話じゃ」
「じゃあ、一介のサラリーマンにそんな話をしても無駄です。偉い政治家にでも言ってください」
俺は立ち去る。
「ひとりひとりの気持ちが変わらなくては、この危機は救えないのだ。人の欲望には際限がなく、その欲望を満たすための資源は有限なのに……」
老人はまだぶつぶつ言っている。
モニターには、巨大台風の接近のニュースが映しだされていた。