孤島にて(ミステリーホラー、新作)
私たち四人は、今、無人島に閉じ込められている。
サークルの夏合宿。
不審死した大富豪が所有していた無人島でのキャンプ。
大学生のバカなノリの三日間になるはずだった。
でも、それが私たちにとって恐怖の三日間になってしまった。
最初の日の夜。
Aは死んでしまった。
夕食のカレーを作った後、海岸の散歩に彼は行くと言っていた。
私たちは花火の準備と片付けをしておくねと笑顔で彼を送り出した。
私は台所で、食器類の片付け。
Bは、花火の準備。
Cは、テントの準備をしていた。
私は、仮の台所で包丁などを洗っていた。
肉を切ったので、包丁を丁寧に洗う。
そうしていると、 花火の準備をしていたBの悲鳴が聞こえた。
私たちは急いで、Bのもとにむかった。
Aは、海岸で腹から血を流して倒れていた。
Cが、脈をとってみたが、彼は首を横に振るだけだった。
恋人を失ったBは、泣き崩れていた。
「もしかすると、この島には俺たち以外の人間がいるのかもしれない」
Cは、真っ青な顔をしてそういう。
私たちもうなづいた。
このサークルメンバーに殺人鬼がいるなんて信じたくはなかった。
「今夜は交代で見張りをしながら、寝よう」
Cの提案に私たちは同意した。
二時間おきの交代。
異変が起きたら、みんなを起こす。
木の枝、ベルトなど、なにか、武器になるものを必死に集めた。
「おい、起きろ」
Cが私を起こした。
どうやら交代の時間らしい。
「変化は?」
「特になし。大変なことになったな」
Cは責任を感じているようだった。
この合宿は、彼が計画したことだからだ。
「Cくんのせいじゃないよ」
私はそう言って慰める。
「ありがとう。そう言ってもらえると、少しは気持ちが軽くなる」
「Cくん。まだ寝ないの?」
「ああ」
私たちはしばらく雑談をかわした。
「実はさ。俺、おまえのことが好きだったんだ」
「どうして、このタイミングで」
「言えるときに、言っておかないとさ」
彼の目は潤んでいた。
私たちは、少しずつ顔を近づける。
彼の吐息が、私を温めた……。
「武器になるものをここに置いておくね」
私は彼にそう言った。
朝起きたとき、C君の姿はなか った。
私は、Bと一緒に彼を探した。
そして、太い木に首をつった姿の彼を見つけてしまった。
私たちは、泣き崩れた。
二日目の夜まで、私たちは抱き合ってすごした。
Aは、半狂乱だった。
私もずっと彼女に抱き着いていたためか、手首が痛かった。
「どうしたの?」
Aは私に聞いてきた。
「ちょっと、手首をひねっちゃったみたい」
私はそう答えた。
しばらくすると、Aは顔色が真っ青になって震え始めた。
「どうしたの?」
私は心配になって聞く。
「私にわかっちゃったの。誰がみんなを殺したのか」
「本当?」
「うん」
「それで、誰が犯人なの?」
「私は殺される」
彼女はなにかに取りつかれたかの ように、テントを飛び出した。
私はあわてて、彼女を追いかけた。
「逃げないと、逃げないと」
彼女はそう大声で叫んでいた。
「どうしたの? ねぇ、Aってば」
私は彼女を必死に呼び止める。
「あなたは呪われている」
崖の端で彼女は私にそう言った。
「どういうこと?」
私はAに手を伸ばした。
彼女は、何も言わずに崖から身を投げた。
「あっ」
崖には、私だけが取り残された。
風で、私の赤いワンピースがなびいている。
「みんな、いなくなっちゃたな」
私はそうつぶやく。
もう、誰も返事をしてくれなかった。