ずっと傍に……
なんとなく書きました。
彼女が僕に言う。
「……ずっと、私の傍にいてくれる……?」
と、どこか不安と怯えを含んだような声音で、そう呟く。
その言葉に僕は、
「ずっと君の傍にいるよ。他には何もいらない」
と、迷うことなく、彼女の瞳を真っすぐ見つめて、心からそう返す。
すると彼女は儚げにほほえんで、僕の首に腕を回す。軽くて柔らかい体が僕に触れる。
彼女の笑みを守るためなら何を犠牲にしても構わない。
そう思いながら、僕も彼女を優しく抱きしめた。
彼女は嬉しそうに喉を鳴らして、可愛らしく
「はむ〜」
と言いいながら、僕のみみたぶを甘噛みしてくる。
「ちょ、くすぐったいよ?」
「あはは」
彼女が笑う。
嬉しそうに。楽しそうに。幸せそうに。心地好さそうに。
それを見ると、僕も幸せになる。
「……?」
突然、彼女に甘噛みされている耳に、激痛が走った。
ふと彼女を見ると、口の端から血を流しながら、嬉しそうに、そしておいしそうに、ナニカを咀嚼している。
「……みみ、おいしい?」
僕が聞く。
「うんっ」
それに彼女は笑顔で頷く。
なら。
それなら。
彼女が喜んでくれるのなら、この程度の痛みなんて、安いものかな。
そう思って、僕は彼女の背中に回している腕に、少しだけ力を込める。
「ずっとずっと、君の傍にいるよ」
「……嬉ひぃ」
「飲み込もうよソレ」
「だっておいしいもん」
「じゃあさ」
「ほにゃ?」
「僕にも、君を食べさせて。そうすれば、死んでも一緒だよ?」
僕がそう言うと、彼女は顔を赤く染め、小さく「うんっ」と答え、目を閉じる。
僕は彼女の耳にそっと唇で触れ、
噛んだ。
「ひゃぅ……」
口の中に、彼女の味が広がる。
甘くて、温かくて、柔らかくて。鉄サビっぽい味もアリだ。
とてもおいしい。
「痛いのに……嬉しいよぉ……」
彼女が涙目で、そんな事を言う。
僕は宥めるように彼女の頭を優しく撫でる。
「ずっと、一緒だよ」
と僕が言う。
それに彼女は、とても幸せそうに笑った。
†††
「まあ、あんなコトしなくても、僕はずっと、君と一緒にいるけどね」
「あれ? じゃあ私が感じたあの激痛に何の意味が?」
「仕返し」
「……いじわる……」
「だってずっと一緒にいたら、死ぬ時も一緒でしょ?」
「……あ……」