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るーちょ ろくろく

作者: snowman

オレの名はケビン。キャデラック乗りのケビン。

今日もゆっくり愛車と共に風になる。


オレは干からびた中古のキャデラックに乗り込み、その道を走り続けた。

パンチの効かせたロックミュージックをガンガンに響かせながら楽しく走り続けた。

途中で女も酒も調達し、ご自慢の愛車で全てを愛した。


ある日、オレは不注意にも酒を飲みながら走っていた。

よくある思いこみだ。


「ここならポリスはいない」


酒の勢いもあって、勢いよく愛車のキャデラックは走り続ける。

途中「キャデラックランチ」の方向に乾杯をして走り続ける。


楽しく叫んだ!


10代の若い頃のように、はしゃいだ。

今のこの瞬間を楽しんでいるのが自分でもわかる。

しかし、ナイトメアというのは起きている時にも突然に姿を現す。


「悪いことをすれば見つかる」


親父の教訓を思い出した。

ポリスだ。

楽しい気分に水を注す。

これだけは全世界共通のポリスの・・・


まぁ・・・良いところだ。


仕方なくオレは両手をあげながら車から降りる。


『ヘィ キッド!ビアは大人になってから飲みな!』


口の悪いポリだ。

こういうポリは買収しやすい。

オレは賄賂をどれくらい渡そうかと考えていた。

オレが考えている間、ポリは話し続けた。


『オレの法律では、ビアの飲酒運転は禁止されているんだ。

飲むなら、マルガリータを飲みな!』


マルガリータ?

オレは一瞬、思考回路が停止した。

もちろんそれは、酔っていたからではない。

ビアの飲酒運転がダメでカクテルなら合法なのか。

バカな。それ以上に「オレの法律」ってなんだ。


こいつは本当にポリなのか?


ドラッグでもキメてるのか?


とりあえずジョークで返してみることにした。


『ミスター、マルガリータはオレの女だ。

ミスターの女はなんて名前だい?はっはっは!』


マルガリータ繋がりで攻めてみたけれど、ちっとも面白くない。

アルコールが回っていて楽しい自分と、ポリに捕まって冷静な自分がいる。


『ジョニー・・・』


ポリスがボソッと呟いた。

ポリスの目がイッていた。


『・・・ジョニー?マイッガ!』


ナイトメアは続く。

オレは溜息と共に絶望を吐き捨てた。

彼は日本語で言うところの「ゲイ官」ってやつだ。


『キッド・・・今なら優しくしてあげるわよ』


突然に、彼の口調がかわった。

この時ほど、神さまにお願いしたことはなかった。


『さあ、早くアナタご自慢のキャデラックに両手をつけてケツを向けなさい!

少しでも変な動きをしたら挿すわよ!』


ポリスはヒステリックに叫んだ。

どうせ変な動きをしなくても・・・いや、それ以上は考えないことにした。


アーメン。オレは祈った。


しぶしぶ両手をキャデラックのボンネットについて後ろを向いた。

フロントグラスで見えた自分の姿が涙を誘う。

ポリスは自分の持っていた拳銃を取り出した。


長さ約20cm


黒く鈍い光を発する拳銃は、発砲後のように少し温かみがあった。

オレは絶望の淵に立った。


しかし、その瞬間オレはあることを思い出す。


その閃きは、


聖母マリアのようでもあった。


それはパンドラボックスのようでもあった。



『ちょっと待ってくれ。その前にポリス手帳見せてもらえるかにゃ?』



オレは渋く冷静に、そして酔っていた。

そう。このゲイ官はまだオレにポリス手帳を見せていなかった。

本当にポリスなのか疑わしい。

ゲイ官は拳銃を突きつけたままポリス手帳を取り出した。


『これかい?キッド』


厭らしい声で耳元で話しかけるな、と心の中で叫んだ。

本物か。もうダメか。

オレは半ば諦めながら正論を吐くことにした。


『ポリスがこういうことしていいのかな?』


次にこいつが言うことは決まっている。

それは分かっていることなんだが・・・。


『飲酒運転現行犯で逮捕とどっちがいい?

まぁ、よくて懲役10年ってところだね』


だろ?腐った野郎だ。

もういい。諦めた。

今を我慢すれば、あとの人生はハッピーに違いない。

今を忘れるために、女を抱けばいい。

それだけの話だ。


『よし、わかった。ガツンとやってくれ。だけどちゃんと見逃せよ』


本当にいいのか分からないが、酒の所為にしてしまえばいい。

どこか心の逃げ場所が欲しかった。


『いや、しかし・・・ちょ・・・ちょっと待ってくれ』


『もう待てないわよ』


そういいながら息の荒いゲイ官はオレのパンツを降ろし・・・。

その時オレは、一台の車から降りてくる人の気配を感じた。

どんな人か分からない、たまたま通りかかった人でもかまわない。


どうかオレを助けてくれ。


半裸になったオレを助けてくれ。


『トニー!』


男の声がした。

ゲイ官の動きがピタリと止まる。


『ジョニー・・・』


ゲイ官は怯えた声を発した。

どうやらこのゲイ官はトニーという名前らしい。

そんな名前はどうでもよかった。

相棒のジョニーが来たらしい。

そんなこともどうでもよかった。


『トニー、何やってるの!!』


『ジョニー、オレは・・・』


ゲイ官がゆっくりとジョニーの方に向かっていった。

オレは膝まで落ちたパンツを履き、キャデラックから両手を離した。


『もう、あたしという女がいながら・・・くどくど』


男だろ?と心の中で鋭いツッコミを入れた。


『とりあえず、あたしのポリススーツ返して!』


なにぃ!

あのピー野郎、ポリスではなかったのか!


オレは頭にきた。

しかし冷静になって、

キャデラックの運転席に置いてあった酒と空いた酒瓶をトランクルームに置いた。

証拠隠滅だ。

こっちでは運転席に酒瓶があるだけでも犯罪なんだ。

だから、運ぶときは絶対にトランクルームに入れないといけないワケだ。

余談はともかく、二人は口論していてオレの存在は忘れているようだ。


助かった。


オレは二人がイチャついているのを横目にキャデラックに乗って、この場を立ち去ろうとした。

もちろんリアルポリスのジョニーは黙っていない。


『ちょっと待ちなさい』


やっぱ飲酒運転はダメだよな。

オレはジョニーに買収を持ちかけようとした。

売春よりマシだと先ほど勉強した。

ジョニーがこっちに向かってきて話しかけてきた。


『あなた、トニーとやったの?』


見当違いなことを言ってきた。


『襲われかけただけさ』


オレは冷静に、あきれたように返答した。


『飲酒運転も程々にね。これからは気をつけるのよ』


ジョニーはそういいながら、手を振りながらトニーのもとへ歩んだ。

「なかったことにしよう」ということか。

幸いにもオレは「やられていない」ワケだから納得した。


さっきの出来事を全て忘れようとした。


オレはキャデラックに命を吹き込んだ。

心躍るエキゾーストノート。

激しく燃える16ビートのロックミュージックが響き渡る。

オレはこいつとまた旅に出る。

嫌なことを忘れてまた走る。

二人だけの世界に入っていた。


そんな時に変態ジョニーが叫んだ。


『ポリスプレイは楽しかった?』


オレはもう救えないなと思いながら苦笑いをした。

もう好きにしろ。

そんな気持ちを込めて手を振りながら、

思い出になってしまった場所を後にした。


飲酒運転はダメだな。


オレは今回の件で反省した。

人生終わるところだったかもしれない。


「悪いことをしたら見つかる」


親父の教訓を今度は自分の・・・

世界中にいる35人くらいの子供に伝えようと思う。

もちろん教育に悪いからゲイの部分は伏せて、な。


オレの名はケビン。キャデラック乗りのケビン。

今日もゆっくり愛車と共に風になる。

さて、今日はどんな良い酒と女に巡り会おうか。


The enD

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