チート能力持ちの僕。その隣を歩いている君。
前略。
僕は異世界転生した。
おまけにチート能力も授かって。
これでもう新しい人生は最高に決まっている。
なんて、思っていたが残念なことにうまい話には裏があるというものだ。
要するに僕の力は物凄い燃費が悪いのだ。
具体的には僕の体に宿る魔力は魔王の十倍を超すが、それ故に体を維持するためには特殊なアイテムが必要なのだ。
そのアイテムは当然のようにラストダンジョンや裏ダンジョンに相当するような場所に存在しており、如何に最強の僕と言えどそれを手にするのは中々に骨が折れる。
何せ、魔王を含めたこの世界のあらゆる生命には負けない僕だが、この世界そのものの力には流石に分が悪い。
要するにだ。
格闘技の世界チャンピオンになったところで、隕石が落下してきたら基本的にどうしようもないのに似ている。
当たり前と言えば当たり前の話か。
どれだけチート能力を持っていようが結局のところ僕はこの世界に存在する一つの命という前提からは決して逃れられないのだから。
さて、そんなわけで今日も今日とて自分が生きるのに必要なアイテムを探しているのだが……。
「私は疑問で仕方ないんだよね」
大金で雇った回復術師のお姉さんが今日も今日とて文句を言う。
「なんで、あんたはいつもこんなバカみたいに危険な場所に来るの?」
「いつも言っているだろ? 君に話したってわからないって」
「……本当。あんたは強いだけで腹が立つことしか言えないのね」
彼女は魔王退治の折に万が一にでも負ける可能性を潰すために組んで以来の仲間だが、魔王退治後もこうして何のかんのと僕に同行してくれている。
僕でさえ危険な場所にでも小言を言いながらついてきてくれるのだ。
「あんた、いつか絶対に野垂れ死にするわよ」
「君がいる限りそれはないだろう?」
「ま、そうね」
実際、彼女には何度も命を救われている。
だが、だからこそ僕は思うのだ。
「なぁ」
「なに?」
「君、本当に人間かい? こんな危ないところに毎回文句ひとつ言わずに来るなんて」
「それ、あなたが言うの? あなただってこんな危険な場所に毎回来ては生還するじゃない」
もっともな返しだが実際のところは僕はチート能力持ちだ。
要するにある意味ではこの世界から外れた存在である。
しかし、彼女は純正なこの世界の住民のはずなのだ。
そんな人間が何でチートである僕の隣に立っていられるのだろう。
「あんたという例外がいる以上、私はただの人間よ」
「うーん」
毎回、それについてどう答えれば良いのかわからなくなる。
わからないからこそ実際に何も言わないことにする。
「ほら、よそ見してないで進みましょう。危ないんだから」
「ん。そうだな」
そして、僕は今日も今日とて彼女と共にこの危険に満ちた世界を旅して生還するのだ。
……この世界に『魔王』はいたのに『勇者』がどこにもいなかったことに気づくのはそれから随分と経ってからだった。
お姉さんの本来の役割。
それを奪ったのは誰なのでしょうね。




