【第一章:第3話】信じてないなら、見せてやるよ
「……また来たの?早口くん」
ギルドの受付嬢が、眉ひとつ動かさずに言う。
昨日、スライムの掃討を完璧にこなしたのに、どうやら信用はゼロらしい。
「昨日の報告、確認してくれたよな?」
「うん。でもね、君ひとりしか現場にいなかったし、目撃者もいない。魔法使いが爆薬でも持ってたら、それっぽく見せるの簡単だから」
なるほど。そっちの線で疑ってるわけか。
「じゃあさ――」
「次の依頼、誰か一緒に連れてきゃいいんだろ?」
依頼内容は“森の魔獣討伐”。
中級ランク向け、しかも出現頻度が高い危険なクマ型魔獣。
新人が行くにはやや無謀な内容だった。
「正気?昨日のはマグレだったと思うけど」
「じゃあ、なおさら試してみればいいだろ?見たいんだろ、俺の実力」
エレクは堂々と答えた。
そしてギルド側は、“見届け役”として中堅冒険者のひとりを同行させることにした。
「で、アンタが今日の“監視役”か」
「アタリ。カインって名前、よろしゅー」
金髪の軽そうな男。皮肉とノリしかない感じの奴だが、実力はあるらしい。
「早口で魔法ぶっ放す勇者様がどこまでやれるか、拝ませてもらうわ!」
このやろう……完全にバカにしてやがる。
目的地の森は静かだった。
だが数分後、地響きとともに、フォルグ・ベアが姿を現す。
「うわ……でっか……」
でかい。ゴリラみたいなクマ。おまけに毒ツメ持ち。
「カイン、下がっとけ」
「いやいやいやいや、俺が護る係だってば――」
「ファイアランスファイアランスファイアランスファイアランスファイアランス!!!」
火の槍が連射され、5本すべてが正確に魔獣の急所を貫いた。
フォルグ・ベアは一瞬で炎に包まれ、バタリと崩れ落ちる。
カインは硬直したまま、口を開けていた。
帰還後のギルド。
カインの報告はこうだった。
「……マジで速かった。早口ってか……あれもう喋ってすらなかったぞ……」
だが、周囲の反応は冷たい。
「嘘つけ、カインが寝てたんじゃねーの?」
「動画ないの?マジで?」
「やっぱ怪しいよな」
カウンター奥で、騎士風の男が目を細めていた。
「早口の魔法使い……面白いな」
その男の名は、アッシュ。
この日が、彼が“動くきっかけ”になる。
かなでです!
なかなか信じてもらえずけどあきらめないエレクかっこい!!
次回仲間出現?!