第3話 彼女の謎を追え
会社の玄関口は1階になっているが、この会社の出入口は実は2階になっている。つまり、階段を降りた先に、玄関口があり、通常、バイク便ライダーは、その玄関口の外側にバイクを停める。
その日は、5月の快晴の日で、ある意味、絶好の「バイク日和」と言える、いい天気だった。
田井中が階段を降りて、応じる。
薮田、大竹、吉田の3人は2階の出入口付近に潜んでいる。
「こちらが今日の荷物になります。大田区の大鳥居にある会社までお願いします」
この会社がある場所は、江東区の森下。そこから大田区の大鳥居まで道が混んでいなければ、おおよそ35分くらいで着くが、通常、都内の日中は混むので、40~50分はかかる。
「かしこまりました」
その声は女性そのもの。そして、その容姿は。
身長160センチ前後、体重は痩せ型。長い髪は綺麗な艶があり、どう見ても20代か30代。
田井中が言ったように、手足も細いし、肩幅も狭い。もちろん、胸の部分も女性らしい膨らみがそれなりにある。
そして、白いフルフェイスヘルメットを正面から見ると。
シールドに黒っぽいスモークがかかっており、はっきり言って、外から「よく見えない」が正しい。
その佐藤と名乗るライダーは、恭しく、コピー機のパーツが入ったビニールの包装紙を受け取ると、それをライムグリーンのバイクに備えつけられている、社名が書いてある、黄色くて、四角いリアキャリアに積み込んだ。
そして、バイクにまたがると。
―グオオオーン!―
すさまじいエンジン音を轟かせ、あっという間に出発して、遠くに行ってしまった。
その加速力はすさまじく、爆音を響かせ、あっという間に車列をかき分けて、彼方に消えていった。
「速え!」
「いやいや、スピード違反じゃないかね、ありゃ」
大竹と藪田が会話を交わす中、吉田が呟く。
「ところが、あの人、一度もスピード違反で捕まってないんだよね。謎すぎる。やっぱり私たちにしか見えない幽霊?」
「吉田さん。それはないですよ。だって、お客さんも見てますから」
田井中がからからと笑い声を上げる。
「だったら、私たちと顧客だけが見てる幻かも」
4人の背筋が寒くなっていた。
まだ、怪談には早い5月の東京。
果たして、彼女は何者なのか。
何故、容姿が変わらず、プロフェッショナルな仕事をするのか。その答えとは。