98話「竜と妖精の融合フォース!」
静まり返った病室。──ここはサンライト病院。
ベッドに寝かされているナッセ。それを前に医者とマーミ僧侶は俯いたまま告げる。
「……残念ですが、手の施しようがありません」
「そんな!」
声をあげたのはアクラス。
モリッカ、ノーヴェン、フクダリウス、コンドリオン、オウガ、ドラゴリラ、アクラス、ガンマ皇帝、ヨネ王、リョーコ、ミキちゃんなど関係者が囲んでいる。
「ナッセ……」
リョーコはナッセの手を両手で包み込み、心配そうにしていた。
猫の姿をしている聖霊ミキちゃんもその上でフヨフヨ浮いているぞ。表情は悲しげだ。
「申し上げにくいのですが、ナッセは心身ともにボロボロです。大技を多用し肉体に微細な損傷が蓄積、何らかの理由で魂に多大な損傷が、これではいつ死んでもおかしくないです」
「ええ……、本来ならいつどこで倒れてもおかしくない状態でした。今回の協議で緊張した事もあり、それが引き金になったのかも……」
「………………今夜持つのかさえ……難しいでしょうな…………」
「今夜……持たない!?」
リョーコは顔を青くして震える。
だが、誰もどうしようもなくて悔しそうに俯く事しか出来ない。
「……さて、そこまで末期に至っているのならば、我が終焉に導くしか他はあるまい」
「ガンマ皇帝っ!」
ミキちゃんはキッと睨む。そして立ちはだかる。
突然の黒頭蓋骨の宣言にアクラスは食ってかかる。
「何言ってんだよ!! ナッセだって息子だろ!? 責任持つって言ったじゃないか!!!」
「ああ……、その通りだ。責任は持とう。だからこそだ!」
「すみませんが、ガンマ皇帝殿……、そのような事はさせられません!」
ミキちゃんに並ぶようにフクダリウスが立ちはだかり、続いてノーヴェンとモリッカもつく。
ドラゴリラは「え? ええ?」と戸惑うばかり。腕を組んだままオウガはそっぽを向いてフン。
コンドリオンはどうすればいいのか分からず、突っ立っている。
「いや……、済まない。誤解を招くセリフで悪かった。我が終焉に導くはナッセではなく、ナッセを取り巻く死の運命ぞ」
「…………な……なにを?」
アクラスは戸惑い気味だ。
「大丈夫そうであります……」
ミキちゃんはゆっくりと下がる。殺気が無いのを察したのだろうか。
フクダリウスも他も避けていく。
黒頭蓋骨はペコリと会釈し、ナッセの眠るベッドへ近づく。
「まぁ、見ておれ! こう言う事もあろうかと密かに模索しておいたのだ。竜と妖精の力を合わせる時、究極のフォースが生まれる。その力こそ万能の素なり! 聖霊ミキよ、フェアリーフォースを……頼む!!」
しばし間を置き、頷く。
「分かったであります!」
「かたじけない……」
ガンマ皇帝とミキちゃんは寄り添う。闇と光が手を取り合う。本来なら有り得ない光景だ。
足元の花畑が更に広がり、ミキちゃんは猫の姿から徐々に人型へと姿を変えていった。整った顔立ちが女神と思わせられる美貌だ。背中に花が咲き、その花びらがいくつか宙へ独立し巨大化して羽になっていく。
あれこそが、ナッセ以上の完成された妖精王たる姿。
「では、我も……」
黒頭蓋骨は威圧感溢れる巨大な漆黒の皇帝竜へと姿を変えた。
途方もない闇のフォースが四方八方に溢れてきて、誰もが震え上がるほどだ。
「あ、あれが皇帝の真の姿……!?」
「ううっ……、大地が震えるほどの恐ろしい力だ……ッ!」
「あんなのとナッセは戦っていたのかっ!?」
「つーか、あのネコも同じくらい!?」
妖精王と魔獣王。その荘厳とした二人の大きな存在感に一同はビックリする。
凄まじいまでのオーラがサンライト王国をも席巻するぞ。ビリビリ……!
「では、いくであります!」
ミキちゃんは片手の上に、花畑から舞った花びらを一玉へと収束させていく。その一玉は収束圧縮を続け徐々に輝きを増していく。
皇帝竜は燃え上がるオーラを片手へと凝縮させて、ギュオオオと唸りを上げていく。荒々しい光球が荒れ狂わんばかりに放射状の余波を撒き散らす。
「こ、このドラゴンフォース……、竜さん以上だ!」ビリビリ……!
汗を垂らしてコンドリオンは叫ぶ。
ガンマ皇帝はドラゴンフォースを片手に、ミキちゃんも片手にフェアリーフォースを、互いに手を合わせる。
本来なら相反する属性同士で競合するはずが、ゆっくり時間をかけて混ぜるように融合されていった。
暖かくて力強い光が溢れていく……。
「竜と妖精の究極回復魔法……、絶対完全治癒・双・究極魂気!!!」
ガンマ皇帝とミキちゃんが揃って手をかざした。
眩い閃光を放ち、ナッセを中心に凄まじい激流の光柱がズンと天井を抜けて天高く衝く!
地響きと共に、凄まじい光の余波が花吹雪と共に周囲に撒き散らされた。
回復魔法なのに、この震撼。
「こ、こいつ……!」ビリビリ……!
「すげー! マジで最強のフォースやんけ!」
「オーノー……、こ、こんなのは有り得ないはず……デス……が!?」
ゴゴゴゴ……、やがて光の柱は病院を覆い尽くすほどに太くなっていた。
ナッセへと無数の癒しの光の雫が吸い込まれていくのを、固唾を呑んで見守る一同。




