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96話「王様との最終協議」

挿絵(By みてみん)


 〜回想シーン終わり〜


「気付いたら封印を解かれたばかりの自分に戻っていた。そして帝国の再建に身を投じようと決めたわけだ。ナッセと……あいつらの絆には勝てん。そう思い知らされたよ…………。我に大切な者がいなければ、なおさらな……」

「親父…………」


 浴場を後にして、自動販売機から購入したコーヒー牛乳ビンをゴクゴク飲み干す。


「許してくれとは言わん。だが、我が息子として最後まで責任は持つ」

「そんな、改まってくれるなよ。普通でいいしさ」


 照れ臭そうなアクラスに、黒頭蓋骨はどこか感涙を覚えた。

 こういう当たり障りのない親子の関係……。

 かつての自分は矮小で下らぬものと見下していたが、それは無知故の愚かさでもあった。子を持つ親の気持ちを知らぬで見下す資格などない。

 我の生まれ持った巨大な力に自惚れてた自分こそ、軽率で恥ずすべき存在なのだとしみじみ理解できる。


 それを教えてくれたのはナッセとサンライトセブンだ。



 黒頭蓋骨とアクラスは自室へ戻り、二人揃ってカードゲームをテーブルの上で嗜み、呻いたり笑い合う。まるで普通の人間同士でやるみたいな和やかな触れ合いだぞ。


「これを発動するぞ。それでこれを墓地に──」

「ち、ちょっと待ってくれ!」

「アクラス、これで何度目だ? 発動できるカードがあったら言え」

「……なかなか難しいよな」

「ああ。このゲームも人生もな……」


 何度もテーブル上のカードが入れ替わりを繰り返される。


「我の勝ちだ!」

「くそ、もう一度だ!」

「うむ! 受けて立とう!」


 ノリに乗って「フハハ終焉に沈め!」「甘いぞ親父!」と盛り上がっていったりもした。



 時計の針が二つとも正午を指す頃、二人はベッドへ仰向けに着き「おやすみ」と一言。仄かなライトを消した。

 しん、と真っ暗闇に覆われる。そしていつしか意識も沈んでいったぞ……。




 サンライト王国に朝日が昇る……。平穏にスズメがチュンチュン鳴くぞ。


 ナッセとリョーコはテーブルで朝メシを食べていた。

 並べられているのは、ご飯、目玉焼き、ほうれん草、牛乳。


 ……緊張するな。帝国との協議……、ガンマ皇帝がどう出るか……か?


 牛乳を飲もうとコップを掴むと、取り損なって倒してしまいテーブルクロスに液体をぶちまけてしまう。


「緊張してる?」


 リョーコは手拭きで溢れた牛乳を拭き取りつつ、心配そうにナッセを見やる。

 彼の手は震えていた。


「済まぬ…………。緊張してるかも」


 ナッセは疲れたような目で、震える手を眺める。視界が霞む。

 ドクン……、ドクン……


 ヤバイな……。ちょっと早い…………。


 その様子に危惧したリョーコ。


「ナッセ! あたしも一緒に行かせてもらうよ」

「いや、巻き込みたくねぇ!」

「ううん! そんな事いってられないでしょ!」


 深刻そうなリョーコは首を振り、頑なな同行を決め込んだ。




「うむ。ナッセにはリョーコがいないとな。よろしく頼むよ」ニッコリ


 謁見の間でヨネ王は快く承諾した。ナッセは呆然。


「…………って事でよろしくね」

「ぐっ……」


 あっけからんとするリョーコに、ナッセはジト目で悔しそうにする。


「今日にて午前十時より、シュパンシア帝国の皇帝と協議を行う事とする。サンライトセブン、幹部、大臣、各々の役目を自覚し取り組んでもらいたい。ワシは皇帝と上手くやっていけるよう努力する」

「はい!」


 ヨネ王、大臣、幹部、そしてサンライトセブン、隊長、兵士長などがピンと背筋伸ばす。



 サンライト王城手前の城門にて、ガンマ皇帝こと黒頭蓋骨と正装したアクラス王子が通ろうとする。緊張してるからかアクラスの表情は強張っているぞ。

 それを迎え入れるようにヨネ王を筆頭にサンライトセブンらを引き連れていた。


「遠路はるばるご苦労様です。シュパンシア帝国のガンマ皇帝殿……」

「うむ。サンライト王国のヨネ王殿の歓迎を心より嬉しく思う」


 ガッチリと両者は握手した。

 黒頭蓋骨はこの姿の時は手足は無いのだが、横から半透明の腕がニューと伸びて握手してきたのだ。



 高級感漂う装飾が散りばめられた広大な会議室。

 ヨネ王とガンマ皇帝は向かい合うように椅子に座す。そしてその長テーブル両脇をサンライトセブンなどが並ぶ。ナッセとリョーコ二人は一緒に配置されていた。


 今の父……、いや皇帝は『運命の鍵』から解放された方か? それとも……?


 ナッセは唾を飲み込む。

 と言うのも、量子世界(りょうしせかい)に封じ込めた皇帝竜は改心しなければ一生出てこれない。そうなった場合は、別の違う並行世界(パラレルワールド)の皇帝竜で間を合わせる事も有り得る。

 前世でもそうだった……。

 まだ邪悪な意志を持っているのなら、ここで開戦する事も有り得なくは無い。皇帝竜の戦闘力を考えればサンライト王国を壊滅させる事など容易だろう。


 勝てないにしても……、最悪な場合ハナっから全力全開でやるしかねぇ……!


 妖精王化するべき、内に力を収束させる。


 どの道最後だ。

 もう幾ばくも無い命……。

 ここで開戦してくれるならむしろ都合がいい。下手にチマチマやって、数年後に最終決戦となったら本領発揮できないかもしれない。



「……してシュパンシア帝国とも友好を深めたいのだが……」

「うむ。我も同じ意見。いがみ合う理由も無い。共に交流を行い、経済流通を良くしていくのが有益と考えている」

「おお! それは喜ばしい事じゃて」

「もはや我らには争う理由など無い。……それともう一つ条件を飲んでもらいたい」


 ざわり、場に緊張が走る。

 当のナッセも冷や汗を頰に垂らす。理不尽な要求来るか……?

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