94話「ナッセの奥の手! 運命の鍵!」
前話からの回想シーンの続き。
「貴様らは本当に良く戦った。サンライトセブンか……。一人一人倒れつつもこの大局を覆さんと最後まで抵抗してきた。心の底から感服するぞ……。貴様らの健闘……決して忘れまい! そして安心して逝くが良いぞ!」カッ!
ガンマ皇帝は片手を向け、光子を収束させていく。
オウガは切羽詰まり、親友を失った事でこの戦いに未練がなくなったと悟る。
このままナッセを押し付ければ俺様だけは助かると、ニヤリと笑んだ。
「今だっ!! 悪いが囮になってもらうぜっ! 糞餓鬼さんよぉ!!」
鋭く疾るビームがナッセへと襲いかかる瞬間、オウガはナッセを突き飛ばす。
ナッセは半顔で振り向き、オウガが悪辣に笑んでいるのが視界に入った。
「おまえっ……!!?」
「フッ! あばよっ!」
ズドッ!!
「オウ……ガハッ……!! な……なぜ……!? なぜこっちに……??」
胸板を貫かれ、激しい吐血。ゆっくりと仰向けに倒れていくオウガ……。
ナッセは見開きつつ手を伸ばす。
地面に大の字で倒れたオウガ、微動だにしない。血が地面に広がる。
信じられないという面持ちのナッセ、震える。涙が頬を伝う。
あんな乱暴な男でさえ、オレをかばってくれた……。最後の最後で……なんで…………。
「オレがすげぇ嫌いなのに……なんで……かばうんだよぉ……!」
そんな打ちひしがれるナッセをガンマ皇帝は嘲笑う。
「よい仲間に恵まれたな。フハハハハッ!! だが、安心しろ! 独りにはさせないぞ! 仲良くあの世で再会するがいい!!」
「…………ガンマ皇帝ッ!」
怒りを篭る小声。ナッセはゆっくり立ち上がる。足元から花畑が湧き上がっていく。
最後の力を振り絞って妖精王の羽を背中から展開。
ナッセは息を切らしながら、瞑想するように目を瞑る。
モリッカ……、ノーヴェン、フクダリウス、コンドリオン、ドラゴリラ、オウガ!
ナッセは亡き彼らとの思い出が走馬灯となって脳裏に流れた。
彼らの生き様と執念と信念、そして死に様。ループした分だけ焼き付いている。
だが、ここで同じ悲劇を繰り返しさせるわけにはいかない!!
意を決し、傷ついた体を奮い立たせたぞ。迫ってくる皇帝竜及び星獣を霞んだ双眸で見据える。
「ぐうっ……」
苦しそうに呻き、胸に手をあてがう。口元の端から血が垂れ、地面に滴り落ちる。
覚悟を賭すべき双眸をカッと見開く。
「晴天の妖精王! 御開帳……『運命の鍵』!!」
胸から光が木漏れでて、中から銀に煌めく巨大な鍵が抜け出てくる。
苦しそうによろめいてナッセは跪く。
「し、しまった……。も、もう……撃つ体力が…………」
立てる事も叶わず、ゼィゼィと息を切らしながら跪いた足が震えるのみ。絶句するナッセ。絶望で胸を満たしていく。
スッと誰かの手が伸びる。
「…………!?」
ナッセを起こすように肩を抱き上げるリョーコがいた。微笑んでいる。
「信じられない……! あの時にオレをかばって死んだはず…………??」
彼女だけではなかった。
モリッカ、ノーヴェン、フクダリウス、コンドリオン、ドラゴリラ。
勢揃いで不敵に笑む。
これまで力尽きたはずなのに、まるで亡霊となって蘇ったかのようだ。
事実、彼らの体は仄かな白い発光を発している。
《…………大丈夫。あたしが支えるから》
リョーコの手がナッセの背中に触れる。グンと力が湧く。愛の力だ。
《あんさんやってくれなきゃワイら無駄死や。頼むで》
ドラゴリラの手が背中に触れる。笑いたくなる余裕が湧く……。
《ニメア戦の時はすみません。生きて欲しかったんです。……でも、やはりあなたが未来の希望でした》
モリッカの手が触れる。戦える気力が漲る……。
《ミーはよく戦ってくれましタ。でもエンドレスで戦って欲しくありまセーン》
ノーヴェンの手が触れる。頭が冴えていく……。
《ドンイ王国再建叶わず、が、お前は自分の願いを叶えてくれ!》
コンドリオンの手が触れる。なんだか自信が湧く……。
《ナッセ殿。いつでも力を貸すぞ。こやつらは今止めねばならん!》
フクダリウスの手が触れる。経験豊かで頼れる気力が入魂される。
リョーコに支えられながら立ち上がる。そして感謝の気持ちで溢れた。
「ありがとう……。オレ一人じゃ、やっぱ何もできない。お前たちと一緒に歩んでこそ、ここまで……来れたんだな……!」
手をかざすと、背中で滞空していた羽が寄り添い弓へと形を変えていく。
「……フッ、化けてまでナッセと共に最後の足掻きか!? そんなもの我に通じぬわッ!! 観念して終焉に呑まれろッ!!」
星獣はビュゴーッと大地を裂きながら超高速でナッセへと向かって駆け出したぞ。
「…………頼む! 『鍵』よ、そしてみんな、最後に力を貸してくれ!」
《うん! もっちろん!》
《せや!》
《はい!》
《イエス……》
《ああ》
《うむ》
ナッセは妖精王の羽で作られた弓を手に握る。そして鍵はクルクルと回転しながら弓矢となるように弓へ収まっていった。
リョーコが体勢を支え、背後にサンライトセブン(五人)が支えてくれている。
沸いた力のおかげで光の糸を引ける。みんなの気持ちを胸に、鍵の先っぽを星獣こと皇帝竜へと狙いを定め────撃ち放つ!!
ドシュッ!! 光の波紋を放ち、『運命の鍵』は勢いよく放たれた。
地面を裂くように余波を引き連れつつ『鍵』は矢尻から光礫を撒き散らしながら、皇帝竜へと目指した。
《《《行っけぇぇぇぇえッ!!!!》》》
ナッセを介して、サンライトセブン(五人)の魂も込められた『鍵』は希望の光で輝く。
まるで彼らが『鍵』を抱えながら突き進んでいるかのようだ。
「そんなもの……叩き落としてくれるわァッ!!」
ガンマ皇帝は星獣の太い腕を振り下ろす。




