87話「葛藤の吐露! ナッセとフクダリウス」
防衛戦が終わって二日後の晩────!
みんなそれぞれ戦いの傷や疲労をようやく完治させ、戦後処理を終えた。
また表彰式が行われた。
ニヤニヤしているオウガとドラゴリラが呼び出されて、ヨネ王様に跪いた。
「俺様と相棒のおかげで大侵攻は阻止できました!」
「せや! ワイらが身を扮して海坊主とか倒せたんや!」
「うむうむ! さすがはサンライトセブン最強の謙虚で努力家なオウガ、そしてそれに次ぐドラゴリラじゃ! 奮発するぞい」
既に本当の事情を知っているヨネ王は褒め殺しているようだった。
そうと知らないオウガとドラゴリラは嬉しそうに、輝かしいトロフィーと高い賠償額を受けとった。
フクダリウス、コンドリオン、ノーヴェン、モリッカ、リョーコ、ナッセにはそれぞれ報奨金が渡された。
〜回想〜
時系列で言えば、竜さんと戦った後だ。
とある個室。ヨネ王とナッセは静寂の元、向き合っていた。
「いいのかね?」
「ああ。昇進は全部辞退する。オレはそういうものに興味がない」
「……そうか。残念じゃのう。つか、オウガとドラゴリラ以外のサンライトセブンも昇進を断ってたぞい」
「えっ!? みんなも!?」
「相変わらず欲がないのう、とは思っとるんじゃが……」
「オレは」
言いかけた。
もう自分に時間が残されていない。今も、体を死が蝕んでいると……。
余計に心配させたくはないと思って、口に出せなかった。
「…………できれば、この国に長くいてもらいたかったがのう」
ヨネ王も察しているんだろうか、僅かに動揺を誘われた。
「ナッセ君。君には友人を作り、彼女と恋愛し、結婚して家族を作り、そして老後ゆったりとこの国との思い出を懐かしみながら余生を送ってもらいたかったのだが……」
悲しげなヨネ王の優しい笑みから溢れる言葉に、ナッセはじんと心に響く。
「…………済まぬ」
申し訳ないと、頭を下げた。
〜回想終わり〜
楽しく明るい今宵の宴。
浮かれたオウガとドラゴリラはどんちゃん騒ぎを繰り返し、周囲に失笑を巻き起こしていた。
コンドリオンもノーヴェンと一緒にワイングラスを手に、酔いながら「ははは」と笑う。
モリッカもオレンジジュースを手に笑顔を振りまいていた。
「どうした? 浮かぬ顔だな?」
静観していたナッセの側の椅子に、大柄なフクダリウスがドカッと腰掛けた。その様子をモリッカはふと見やる。
「お構いなく……」
「そうつれない事を言わんでくれ。ナッセ殿は防衛戦を終結させた主役ではないか!」
それでもナッセは涼しい顔のままだ。頑なな口を開こうとしない。
「ナッセ、聞きたい事があるがいいか?」
「……何だ?」
「いや、答えは分かっているのだが敢えて聞きたい。…………全てが済んだらこの国を去るのだろう?」
ナッセはピクッと驚きを胸に、ゆっくりとフクダリウスへ顔を向けていく。
「ワシに前世の記憶はない。だが大体はお前の話から察しているぞ。幾度もなく繰り返してきた前世で堪え難い悲劇を繰り返してきたのだろう。その度に強さを求め、ついには妖精王にも覚醒した。己を化け物と化してでも、元凶であるガンマ皇帝と決着をつける事に全てを賭けたと、な」
「ああ……、全てはオレが背負った業だ」
脳裏に、これまでの前世で散っていった凄惨なシーンが呼び起こされた。
そして耳に残る戦死者の断末魔。
ナッセは動揺に胸をかき乱され、俯きつつ身体を震わせていく。はぁ、はぁ、と過呼吸じみていく。
目を瞑り、落ち着けと何度も心で唱えた。それでも緊張で震えは止まらない。
だがナッセの背中をフクダリウスの手が優しくさすった。無骨で大きくてそれでいて優しい暖かさ。
「そう自分を責めるな……。お前は悪くない」
ナッセは悲しげな顔でフクダリウスへ見上げる。
「最悪な未来を繰り返し見てきた……。だからループするたびに、もっと、もっとって……」
彼が青ざめて漏らすような声で言ってる様子に、フクダリウスはどんな未来を見てきたのか気になった。
「最悪な未来……。言いたくなければ無理に言わなくてもいい」
遮るようにフクダリウスは首を振る。
「ううん。おっさんには知って貰いたいから言うよ。何年か先の未来で“星獣”が甦るんだ。それで……世界は終わっちまう…………」
「ふむ。帝国が世界を独裁体制で敷く未来かと思ったが、それよりもっと最悪か……?」
「その帝国が呼び起そうとするんだ。あの親父……いやガンマ皇帝が“星獣”の力を我が物とするんだよ」
「その星獣とやらは凄いのか?」
「ああ……。むちゃくちゃだよ。多くの国が消え、大勢の人が死んでしまった。まるで星そのものが襲ってきてるみたいだった……」
ワナワナと震えるナッセに、フクダリウスも「ううむ……」と唸る。
だからか……、貪欲なまでに時空間含む数々のスキルを得て更に大爆裂魔法をも会得し、最強や万能へ近づこうとするのは……、そうした絶対的な滅びの未来への恐怖所以か。
彼にしか脳裏に写っていない凄惨な終わりの未来……。
想像を絶するものなのだろうか?
あとがき
オウガ「おい、お前ら! 俺様のおかげで、この平和が生まれたんだぜっ! ごははははっ!!」
兵士たち「ああ。そうだなぁ……」ギロッ!
オウガ「ひいっ! もう戦いは終わったんだ。もう戦わないでいいんだよ?」
兵士たち「今まで手柄を横取りしたり、パワハラしてくれたりしたな……!」
オウガ「この糞兵士ども! 暴力反対だっ! やめたまえっ!」
兵士たち「「「お前が言うな──────っっ!!」」」
ボコボコボッコッボッコボコボコボコボコ!!
オウガ「ぎゃえええええええええええっ!!(泣)」
……こうして手を打ってくれましたとさ。めでたしめでたし。




