84話「アクトと敵将軍の激しき交戦!」
エビエ将軍とヤドカ将軍相手にアクトは押し負けていく。
トドメとばかりにハサミの手甲が迫るのをカッと見据える。まだ気力は生きている。
「うおらああああァ!!」
なんとアクトは刀一本で、エビエ将軍の両ハサミとヤドカ将軍の両ハサミを抑えた。
「エビッ!?」
「ヤドッ!」
ギリギギリリ……、競り合いながら互いに睨み合い、額に血混じりの汗が伝う。
徐々にアクトは後ろへズリズリ押し切られ、地面に踏ん張った足が溝を作っていく。
それでもアクトの内に秘める熱き魂がふつふつと燃え滾っているぞ。
「こちとら……売れ残りの敵将軍なんかに負ける訳にはいかねぇんだァ! アイツが……、ナッセが無茶してるのに、俺が復讐なんかに負けてたら笑いものだァ!!」
アクトの奮起した一撃が、それぞれ敵将軍を弾いて退かせた。
「ぐっ……」
「このォ!」
想像以上の抵抗に、エビエ将軍もヤドカ将軍も見開いて戸惑い始める。
「こ……こいつ! たったひとりの人間なのに……、とっくに押し負けてもいいえび…………!?」
「なんで!? 粘れるどん!? この人間風情がぁ!!」
「さっさとくたばれえびぃぃ!!」
「断るァ!!」
復讐心に囚われて憎悪のままにハサミの手甲を振るい続けるエビエ将軍とヤドカ将軍に対し、倒れているナッセを脳裏に浮かべたまま気力を振り絞って刀を振るい続けるアクト。
お互い傷つけ合い、大地を震わせ、血飛沫が舞い、裂帛の気合いが大気に響く。
その戦いは、ゆうに一時間にも及ぶほど長引いた。
「エビルマギア・アクアプレッド」
エビエ将軍が両ハサミから水圧弾を乱射する。
アクトはがむしゃらに刀を振るって全て弾いていく。コンドリオンの不規則な剣戟を防いだ経験があって、確実に見切っていたのだ。
しかも成長をしていて、アクトは駆け出してエビエ将軍を蹴り飛ばす。
「エビッ!」
ヤドカ将軍が「この野郎!」と両手からエネルギー奔流を放った。
「殼砲ヤドカカノォォォォン!!」
「三日月の太刀ァ!!」
アクトは三日月の斬撃を飛ばして相殺し、大爆発が巻き起こって地を揺るがす。
「おのれっ!! この砲撃を相殺するかどーん!」
「あァ? そんくらいなんでもねェやァ!!」
「エビルマギア・アクアウェーブ!」
今度はエビエ将軍がエビの尻尾をピンッてすると、大津波が地面を揺るがしながらアクトへ押し潰さんとする。
質量を相手では敵わないだろうとエビエ将軍はタカを括った。
しかしアクトは刀で十字を描くと軌跡が生まれでてくる。
「三日月の十字太刀ァ!!」
十字の軌跡が一気に極大化して大津波を吹き飛ばしていく。
その煽りを受けて、エビエ将軍もヤドカ将軍も「うわああああああ!!」と吹き飛ぶ。
それでも復讐心を糧に、彼らは受身を取って着地して後ろへ滑っていく。
「その根性ァ見習いてェなァ!」
ヤドカ将軍は片手に貝殻を魔法で具現化していく。
「ならば、えぐれやがるどんっ!! ドリルデ・カザアナーッ!」
怒りのドリル貝アタックがアクトへ襲いかかる。
しかしアクトは刀で受け止め、火花が散った。しかし折れる事も曲がる事もなく、押し止められた。
「今度はドリルかァ!? おもしれーなテメェらァ!」
「なんだどんッ!?」
「ぬぅあァ!!」
なんとヤドカ将軍のドリル攻撃を弾き飛ばす。
しかしエビエ将軍がハサミでアクトの脇腹を突く。そして挟み込んで切断せんとする。
「痛かねェなァ!!」
アクトが刀を振るってきて、寒気がしたエビエ将軍は咄嗟に尻尾を使って後ろへはねた。
それでも傷は浅くなく、アクトの脇腹から血が滲み出している。流石に疲労も合わさって苦しそうな顔を浮かべる。
「エビビ……、ヤツはそろそろ限界えび! ここは一緒に攻め立てよう!」
「やどん!」
エビエ将軍とヤドカ将軍は息の合ったコンビネーションでアクトを攻め立てる。
休ませないよう執拗に猛攻を繰り返し、アクトは徐々に服が破け、傷が付き、血飛沫が舞う。
「があああああああああああああッ!!」
満身創痍で半裸になったアクトは裂帛の気合いで、敵将軍と立ち向かう!
「くっ! あんな深手を負って、なんで倒れないどん!?」
「ふざけるっびあぁぁぁ!!! 貴様らを殺さなきゃ気が済まんえびぁ──っ!!」
しかもエビエ将軍とヤドカ将軍も、傷つきようとも復讐心に全てを捧げて体力の限界をも無視していた。
切羽詰まった極限の均衡! 強靭なようで脆い! されど片時も崩れぬ!!
アクトとエビエ将軍とヤドカ将軍が互角の激戦で、永遠に続くかと思われた。
さすがはスペックの高い魔鱗族。
徐々にアクトを押していく。
「エビビビビ! これまでだっび!!」
「観念して死ぬどん!!」
復讐心を昂ぶらせて、激烈なオーラを噴き上げてエビエ将軍とヤドカ将軍は一気に駆け出す。
オーラの尾を引きながら凄まじい超高速突進でアクトを引き裂かんと迫る。
「うらあああああああああァッ!!」
しかし気合い咆哮のアクトは死力を尽くしたオーラを噴き上げて、渾身込めて刀を振るい、三日月の斬撃を放つ。
それは両将軍のハサミを砕き、粉々に砕け散って四散する。
「な、なにびえっ!?」
「やどどっ!!? などんっ??」
見開いて絶句するエビエ将軍とヤドカ将軍。
武器を失っては戦えない。
「貴様らの敗因を教えてやらァ!!」
「何ぃ!?」
「復讐しか考えてねェ事だァ!! だから俺の気力を見誤ったァァァァ!!」
そう、復讐心だけに駆られては見えない事もある。それに二体の敵将軍は見開く。
そしてアクトの夜叉如しオーラが、復讐心をも上回ってるように思えた。
どこまでも、いつまでも、熱く滾るアクトの気力は更なる高温上昇を続けている……!
「な……、なに……!? バカなっ!?」
「そんな……! 奴の……気力はどこまでッ……!?」
エビエ将軍とヤドカ将軍は狼狽え、畏怖すら抱いた。
だが、それでもニカ大将軍に顔向けできぬと、奮起する。
「それでも道連れにしてやるえびび──────ッ!!」
「ああ、この体ごと爆発して国を巻き込んでやるど───ん!!」
エビエ将軍とヤドカ将軍は一気に一四〇代の高齢に萎びていくが、膨れ上がるオーラは大地を揺るがすほど激しさを増していく。
死なばもろともと両目を輝かせ、全身の装甲がひび割れていく。
寿命をもつぎ込み、己の体を爆弾に変えて、サンライト王国を巻き込んで大爆発を起こそうとする。
「みんな死ね!! 九十九年奥義……、ファイナル・エンド・ヴァニ……」
「させるかァァァァ!!! 極月の無太刀ァッ!!!」
アクトが振り下ろす刀から巨大な漆黒の斬撃が地平線にまで駆け抜け、エビエ将軍とヤドカ将軍を呑み込んだ。
「なん……だと……!? く……くそったれ…………が…………」
「……ぐぎぎ……バカ……な…………!」
漆黒に飲まれてエビエ将軍とヤドカ将軍は粉々に消し飛んでいく。
地平線にまで及んだ漆黒の巨大な斬撃は、唸りを上げながら空へと高く高く噴き上げていった。
そして、ゆうに一時間に及ぶ死闘にやっと幕が下りた……。
「ハアッ、ハアッ、ハアッ!」
アクトは苦しい荒い息をしていた。もし気力が足りなければ逆に殺されていただろう……。
安堵したせいかグラリと膝が崩れ落ちる。
「へ、へへ……やったァ……!」
アクトは満足したようにヘヘッと笑み、大の字で転がった。




