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8話「不穏な予感! 黒天の騎士!!」

挿絵(By みてみん)


 淡い橙色の陽が差し込む夕方。サンライトの城下町は綺麗に整っている路地に、家が建ち並ぶ。所々草原と木々、花畑があり、のどかな雰囲気を醸し出している。

 そして中心部の交差点では、高々と時計塔が聳えている。観光スポットとしても悪くない。

 夕日を浴びて、ナッセとリョーコは買い物袋を手に帰路についているようだ。


「ねぇ、聞いていい?」


 リョーコが首を傾ける。


「なんだぞ?」

「なぜ、そんなに真剣にやってるのか教えてもらっていい?」


 やはり気になるのだろうか? 教えたところで誰も信じない事柄だというのに。

 そんな彼の心情を察してかリョーコは足を止める。そしてナッセの顔を覗き込む。そんな彼女に思わず仰け反る。


「あんた、いつもそんな真剣な目をしてるから……。気付いてなかった?」


 ナッセは見開く。

 これからの未来をどう変えようかばかり考えあぐねていた。それが顔に出ていたみたいだ。

 答えを待つように、リョーコは膨れっ面でこちらを覗き込んだままだ。

 思わず、口元を綻ばせた。


「ちと将来の事を考えてた」


 無難な答えを口に出す。何度も転生してバッドエンドを見てきたから、今度こそハッピーエンドを目指したいとか、馬鹿正直には言えない。


「ふーん。それでサンライトセブンに入隊しようって事ね」

「はは。まぁそういう事だな」


 ごまかし笑いをして、そう返す。リョーコはまだ納得いかないようだ。


「むー、なんであたしの名前知ってたのが気になるじゃないのー」

「いつかは話すよ。今はそのタイミングじゃないってことで」

「ねぇ、それ前にも言われたけど、今じゃダメ!?」


 しょげたような控えめな彼女の顔。上目遣いの瞳。意外と色気があるように見えて内心面食らう。

 だが、まさか数年後の未来で人類が滅んでしまうなんて言っても信じてくれるのだろうか。


 そんな時、視界に黒騎士と桃色の女の子が映った瞬間、ナッセは瞬足で飛び出していった。リョーコはそんな唐突とも思える行動に呆気に取られた。

 気付けば、少し先の所で女の子の手首を引っ張る黒い鎧を纏う不気味な騎士がいた。そこに駆け付けるようだった。

挿絵(By みてみん)

「生意気なガキだ。やはり他国の人は……」


 割って入った鋼鉄の杖が手甲を叩き落す。その突然の痛みで女の子の腕を離す。

 手際よくナッセは女の子の前に立ちはだかっていた。その鋭い視線に、黒騎士は一瞬怯みそうになるが、ナッセの姿に気付くと「フフフ」と薄ら笑みを浮かべた。

 全身を漆黒の鎧で包み、腰には大きな剣を差している。顔は黒い仮面で覆われて表情が窺えない。


「女の子に手を出すとか恥ずかしくないのか!? 黒天の騎士アクラス!!」

「愚て……、いやガキ! 久しぶりだな!」


 ナッセを知ってるらしい黒騎士。

 遅れてリョーコが、ぐずる女の子を介抱する。ナッセは黒騎士と向き合ったまま微動だにしない。


「お、お兄ちゃん……。ありがと」

挿絵(By みてみん)

 女の子はピンクの髪の毛で、ポニーテール。前髪がやや短くベリショ。幼さを残す釣り目。瞳はエメラルドっぽい色。水色のキャミソールで可愛らしい。


「エレナちゃん。もう大丈夫」


 半顔で振り向いてナッセは微笑む。が、エレナは自分の名前を呼ばれて驚いたのか、素っ頓狂な顔になる。

 白銀のイケメン。キャッツアイを連想させる綺麗な双眸。そんな不思議な風貌にエレナはドキッと赤らめる。まるで運命の王子様が駆けつけて助けにきてくれたのだと錯覚する。

 運命の出会いだからこそ名前を呼ばれたのだと思い込む。


「お、お兄ちゃん…………。だぁれッ?」


 もじもじ照れ臭そうに聞くエレナ。ナッセは背中を向けたまま「ナッセだよ」とだけ告げる。


「ナッセちゃんッ…………」


 惚れ惚れしたエレナは酔いしれるように表情を弛ませる。


「そういや、貴様! なんでここにいる!?」

「……人のことは言えないんじゃないのか?」


 うぬぅ、黒騎士の唸り声が聞こえる。リョーコは、ナッセと黒騎士がお互い知っているのにも驚かされる。


「こいつも知ってんの!?」

「ああ。サンライト王国への侵攻を目論んでいる帝国の男だ! 今は下見って事か」

「な……!? ふ、フン! そんなところだ……!」


 黒騎士は一瞬驚いたようだが、落ち着いてきた。少し違和感がする。


「いい機会だ! 愚て……ガキの腕がどれほどか見てやろうっ!」


 黒騎士は剣を抜くと同時に、雷光が如く振るわれる。


星幽剣(アスラール・セイバー)ッ!!!」


 ナッセは鋼鉄の杖から光の剣を発生させ、居合抜きの如く瞬時に振り抜いた。弧を描く光の軌跡が、黒騎士の剣と交差する。

 衝撃が爆ぜて烈風が吹き抜ける。微かな地響き。

 リョーコはビリビリ……と身を貫く衝撃に焦りを滲ませる。


「ほう……!」


 黒騎士は剣を収める。


「黒天の騎士……!」

「貴様とは初めてだったが、この一撃……相当な腕と見受けする。今日のところは退いてやる」


 黒騎士は満足したように踵を返して去っていった。

 リョーコは呆然とした。あのナッセと張り合える黒天の騎士は未だ本気を出していない。

 強さの底が知れぬ黒天の騎士アクラスの背中。それが脳裏に焼き付いた。


「っきゃ~~ッ!! ナッセぇ~~~~ッ!!」


 ますます惚れ込んだエレナはナッセに抱きついてはしゃいだ。首をロックして頬擦りしまくる。ナッセは「ち、ちょっと!」と戸惑うままだ。

 リョーコは「はぁ……」と呆れる。

 そんな和気藹々を尻目に、夕日の空は夜空へと染まっていく。




 帝国へ帰還した黒騎士が歩く先に四天王が立ちはだかっていた。


「サンライト王国は侮れんぞ……。特に愚……ナッセとかいうガキはな……」


 黒騎士が通り過ぎていって、帝国の四天王は怪しく目を輝かせた。

 鳳凰のような火炎の尻尾を揺らす女性、腕を組む青年、太ったバーテンダーのオッサン、カニのコスプレしたような将軍。

 いずれもただならぬ威圧が滲み出る……。


「へぇ、そんな事が? ドンイ王国のように燃やし尽くしてやろうかしら? ふふふ」

「……ガンマ皇帝は「捨て置け」とおっしゃってたが……、やはり敗北の味を知りたいね」

「ふっふっふ。いいじゃないかな? 念の為、僕が先に仕掛けるかね……」

「ニカカカ……。陛下はあの小国など眼中にない。勝手にしろ」


 帰国した黒騎士はそんな四天王にドン引き。


「親父もなんとかしろよな。あんなイロモノ四天王……」

あとがき


 エレナは一話のみの一発キャラですw

 以降、出てきませんw


エレナ「納得いかないッ!」ムキー!

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