79話「大侵攻! 復讐の帝国軍!」
四天王ニメアを倒してから五日後────……。
サンライト王国を囲むように、大勢の帝国兵士が囲んでいた。信じられないぐらい大がかりな侵略だ。
それを阻むようにサンライト王国兵士達が大勢で陣取っている。
総隊長としてフクダリウスが腕組みして雄々しく突っ立っていた。
参謀のようにノーヴェンがメガネを煌めかしていた。
「むう……、帝国軍というよりは……」
「イエス。もはや魔鱗族の軍勢デース」
海産物で多種多様な魔鱗族だが、なぜかイルカ兵オンリーの軍勢だ。
「イルカが攻めてきたぞっ!」
「見た目的にリザードマンっぽいですね……」
「剣とか鎧とか武具は帝国製だから、れきっとした帝国軍っす!」
「帝国ってのは、海の国か何かか?」
名義上、シュパンシア帝国の軍隊だが、魔海と盟友なので魔鱗族の軍ともいえる。
これほど大規模な戦力だ。今回はニカ大将軍の殉職により弔い合戦をしかけているようだ。
これもガンマ皇帝の意向がかかっているかは不明。
その魔鱗族軍の後方で指揮を取っている二人がいた。
「エービエビエビ! 四天王ニカ大将軍の敵っび! 必ずや滅ぼしてくれよう!!」
「ヤドドド……あいつは面倒見のよい将軍だったど……! 許せんやど!!」
憎しみに満ちた怒りの表情。エビのような風貌で装甲と長い顔と首、そしてハサミの手甲を備え、バックに下がる用の大きな尻尾、細身のエビエ将軍。
頭に巻貝、大柄な体躯、二つの巨大なハサミを手甲に持つヤドカ将軍。
「ああ……、オラたち三匹は……親友だったやど! それを……それを!!」
涙ぐんでいて、ニカ大将軍との楽しかった思い出が走馬灯として脳裏を流れていた。
共に戦友でどっちが多く人間の敵兵を殺せたか競争してたし、妻の振舞ってくれた人肉の料理を共に食べたり、焼人肉屋で宴会したり、拷問ごっこのオモチャを子供に持ってきてくれたり、彼主観でじ〜んとくる思い出なんだぞ。
「破壊し尽くすっび!! 地獄に突き落として後悔させてやるえびぁ────!!」
「皆殺しでやるど!! ヤドドド〜!」
ふざけた語尾つけてっけど、彼らはこれが素であり本気なのだ。
ドカン! 地を揺るがし魔鱗族のイルカ兵が数十匹空を舞う。
「ぬおおおおっ!!」
「はああああっ!!」
なんと先陣を切ってフクダリウスとコンドリオンが互いにイルカ兵を蹴散らしていた。
五メートルの筋肉隆々の男が斧を振るって、大勢を宙に吹っ飛ばしていく。
かたや、コンドリオンは腕を象の鼻に変態して、変幻自在な剣戟で複数の兵を切り伏せていく。
それを見てノーヴェンは安堵の笑みを見せる。
「融合した影響でコンドリオンは象の力を失った懸念もありましたが、その心配はないようデース……」
とはいえ、以前の『血脈の覚醒者』ではなく、なにらかの要素による象の変態能力が新たに宿ったから、以前とさほど変わりがなかった。
この事から、別世界のコンドリオンはインド人要素と、象変態能力を二つ持っていた事になる。
その象変態が今のコンドリオンに残留した形になったのだ。
ここでの話、この世界の誰も知らないが、実は木星より地球に持ち込まれた奇跡Dランクの『怪異の種』による象変態能力なのだ。メタァ!
一方、ドラゴリラは手から指が伸びた長く強靭な片手四本の指刃で両手指八本を振るって敵を斬り裂いていた。
しかも周囲に殺の文字が撒き散らされている。
「喰らえや! ロングフィンガーでの殺人移動やーッ!!」
ゴリラ変態能力は失われたが、なぜか指や腕を伸ばしたりする再生応用能力は個別だった。
まぁゴリラは腕や指を伸ばすとかできないからなぁ。
「おおっ! さすが俺様の親友だぜっ!」
オウガは感激しながら突っ立っているのを、ノーヴェンは横目で一瞥する。
完全にレベルパワーとアビリティをロストしているのはオウガだけデース。故に戦力外デス……。
「この程度、ドンイ闘将に通用するか────ッ!!」
「ドンイ王国最後の王族として、第二の故郷は守ってみせるッ!!」
フクダリウスとコンドリオンはオーラを全身から漲らせ、イルカ軍団を突破していた。
二つの強力なオーラの衝突で大気が爆ぜると共にイルカ兵大勢が宙を舞い、余波が吹き荒れて地鳴りと空震を呼ぶ。
まさに一騎当千だ!
「な、なんなんびえ!? 強いのは闘将フクダリウスだけじゃないえびか!?」
「ヤドドド!? あ、あれはサンライトセブンだど!」
「……あの二人はその中でも飛び抜けに強いえびか……!?」
「ど、どうしようやど? 話が違うやどんッ!!」
たしろぐエビエ将軍とヤドカ将軍。青ざめている。
「冷凍ビームデース!!」
ノーヴェンの周囲で浮いている無数のメガネからビームを掃射。次々と凍りつかせて、それが壁となって後続を食い止めた。
「火炎球!! はあっ!」
モリッカが掌からエネルギー弾を放って爆破。……魔法だよな?
「火炎球連弾! だだだだだ!!!」
モリッカは両手を交互に突き出して魔法を連射。次々と敵兵が爆破されていく。
────開戦してから、三日も戦争が続いていた。
思ったより劣勢になってて、しびれを切らしたエビエ将軍とヤドカ将軍は立ち上がった。
「ええい!! ならば海坊主を召喚びえびえぇぇッ!!」
「出でよヤドドドドド────ッ!!」
地面の魔法陣から、のそっと現れる巨大なタコの顔を持つ巨人が現れた。
これには味方である魔鱗族の兵も戸惑う。
「どう見てもタコ人間をでかくしただけのような……?」
「えぇ!?」
「四天王、もういないからなぁ……」
そう、すでに四天王は全滅しているので決定となる戦力がないのだ。
「タコォォォォォオオオオオ!!!」
その咆哮と共に、地面が震え、大気が騒ぐ。
「カッ!!」
なんと超高速の砲撃で兵士もろとも地面が大爆発。ドガァァァン!!!
これはマッハによる水流の砲撃だ。
振動がサンライト王国内にも響いている。
自宅でナッセはベッドで静かに寝入っていて、リョーコが看病していた。
体調が芳しくなく、起きて寝ての繰り返しだ。特に睡眠時間がやけに長い。
二メア戦でムリをしすぎたせいで数日間はこんな状態だ。
「四天王いないから大丈夫だよね……?」
不安そうにナッセの額を撫でる。
あとがき
ガンマ皇帝「サンライト王国を侵攻するのダメー」
エビエ将軍「くっ! どうしても帝国兵や戦車で出陣する許可が下りないえび」
ヤドカ将軍「だったら、故郷の魔海からイルカ兵を派遣させて、そのまま攻めるどん」
エビエ将軍「エビビビビ! これなら皇帝陛下の許可も関係ないびえ!」
ガンマ皇帝「やけに帝国製の武器防具の受注が多いなと思ったら……」
黒騎士「四天王いないし余裕だろ」
ガンマ皇帝「おっ、そうだな」




