66話「サンライトセブン帰国へ!」
広がる澄み切った青空の元で赤、青、黄、紫と彩る花畑。蝶々が戯れる。
その上で仰向けで手足を広げたまま倒れている竜さんがいた。
既に人間形態に戻っていた。
ボーッと青空を見ている。
「俺の負け、か」
力無く竜さんは目を瞑って呟いた。
側でナッセとドラガオンが立っていた。
「ドラガオンさんは分からないが、オレは勝ち負けなど考えていなかったよ。ただ」
「ただ?」
「……荒んでたら、いい気分になれないと思って」
ナッセの物憂げな表情。足元の咲き乱れる花畑に花吹雪。そして背中に花弁のような淡い羽。
中性的なその華奢な顔は、どことなく女神のようにも錯覚させられる。
「それもそうか…………」
竜さんは安らかに笑んだ。
翌日。元通りになった龍脈温泉の門前で、竜さんとサンライトファイブ、龍人が居合わせていた。
「色々済まなかったな。俺は……シュパンシア帝国を抜ける……」
「そうか」
「イエス……。これで四天王の二人はリタイア、皇帝も激おこですネー」
「さぁな? 俺はニメア令嬢に四天王として仕立て上げられただけで、皇帝がどう思ってるのかまで聞いちゃいない」
「ガンマ皇帝…………」
そう呟いたナッセは静かに目を細める。
「ワレも新しいものを得たんやです。ほんなドラゴンフォース手に入れてもろたです。ありがてぇやです!」
「……三人の人格が合体したから変な喋り方になってるわね」
ドラガオンの口調に、リョーコは後頭部に汗を垂らした。
「つか、元に戻らないのか…………!?」
うろたえるフクダリウス。ワナワナと肩を震わせている。
「すまへんわです……。身も心も融合してもうてです。もうあかへんですぜ」
ドラガオンは申し訳なさそうに頭を下げる。
フクダリウスの脳裏に、コンドリオンとの思い出が走馬灯として流れていく。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおー!!!!」
フクダリウスは空に向かって、体を荒ぶらせ、顎が外れる勢いで慟哭した────!
「もはや別人だもんな」
「しかもイケメンだもんねー」
「……コンドリオンはともかく、オウガとドラゴリラより役に立ちマース」
ナッセはため息、リョーコは感激、ノーヴェンはウンウン頷く。
「……融合を解除する魔法がどこかにあるかもしれない」
「なにっ!?」
竜さんの意味深な言葉にサンライトファイブは食い入る。
「ど、どこにあるんですか!?」
「オーワンダフル!! ナイス情報デス。でも場所はホワッツ!?」
ノーヴェンの変な言葉に竜さんはムカついていたが、抑えた。
「あくまで噂でしか聞かないがな。知ってるのはそれくらいだ。すまないな。なんかの縁があれば、また会おうぜ!? アバヨ」
竜さんは手を振って、清々しく去っていった…………。
その後で、また温泉街でゆっくりした。三週間ぶりの温泉だぜ。
龍人さんはランサーンと一緒にお辞儀して「またな」と手を振って、フッと転移していった。
かくてサンライトセブンは数々の障害と修行を経てパワーアップして、サンライトファイブとなってサンライト王国へ無事帰路についたのであった…………。
────その道中。
「コンドリオン王子……! コンドリオン王子〜〜〜〜!!」
「ワレが王子ではあかへんですか?」
「黙れぇぇぇえ小僧ぉぉぉお〜〜ッッ!」
激昂したフクダリウスの目にも留まらぬ斧の乱撃を、仁王立ちで突っ立ったままドラガオンは指一本で捌き切っていく。
凄まじい激突で大地が震え、地面が裂き、大気が騒ぐ。
「ち、ちょっと待つでがす!!」
「うるさいわぁぁぁあっ!!!」
指と斧が幾重に交錯し、大地を揺るがすレベルの衝撃波が爆ぜ続ける。
「なんだかなぁ……」
「そういうのは興味ありませんね」
「とはいえ、フクダリウスも気の毒デース……」
「まぁいいんじゃないの?」
ナッセ、モリッカ、ノーヴェン、リョーコは深い溜息をついた。
ようやく馴染みのサンライト王国が見えて来たが、まだ前途多難のようだ。
ドラガオンとかいう合体キャラと馴染めるんだろうか……?
シュパンシア帝国にて四天王は動揺しながら会合していた。
「ま、まさか……ドラゴンが破れるなんて…………!」
「これで四天王は二人にか……」
巨大な黒頭蓋骨のような姿で佇むガンマ皇帝は赤い眼光で、四天王の一人を見やる。
「我が四天王でもあり、ドンイ王国を滅ぼした張本人でもある鳳凰ニメア令嬢よ。この失態の責任とるがよい……」
「えっ!? ちょっ!? 待って待って!! 負けたの竜ちゃんでしょ?? 私、関係なくない??」
「イワシローやリュンサンをけしかけたのだろう……! あと命令に背いてドンイ王国を攻め落とした罪も償ってもらおうか!」
二メアはガタガタ恐怖に震え上がっていく。
「待ってよぉ……! 私は帝国の事を思って……」
「勝手に命令を背き続けた貴様は、極刑あるのみよ!」
「くっ! ならば私が皇帝に取って代わってやるわーっ!」
魔獣王である二メアは巨大な鳳凰へと身を変えて凄まじい嵐を巻き起こして反逆をしたが、ガンマ皇帝には全く歯が立たなかった。
ズタボロに打ち伏せられた二メアは「ガフッ」と吐血。
見下ろす皇帝は黒頭蓋骨の姿だったのが大きな闇のドラゴンへと変貌していて、赤き目を輝かせていた。
「愚かな……、皇帝に勝てると儚い希望を抱いていたか?」
黒騎士は「あーあ、言わんこっちゃねぇ……」と呆れる。




