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6話「魔法使い 対 サムライ!!」

挿絵(By みてみん)


 そしてそれに応じるべき、ナッセも腰から杖を引き抜いて身構えた。


「オレは白銀の魔法使い(シルバー・マジシャン)ナッセ。後にサンライトセブンに加わる男だ。故に共犯者……」

「ほうァ……」


 頭に血が上っていたアクトは、その構えに息を飲んで気分が落ち着いていく。

 目の前にいるのは白髪の子供のはずなのに、隙が窺えない歴戦の雰囲気が漂っている。そして魔法使いとは思えないほど、接戦に慣れたような仕草が垣間見られた。

 たかが一介の魔法使いと侮れば痛い目にあう。体の本能はそう告げていた。

 アクトはニッと笑う。


「おもしれァ……。どれほどのモンか見せてもらおうじゃないかァ……」

「あの、ここで対決されても困るんじゃが……」


 ヨネ王はボソッと呟き、溜め息をつく。


「すまん。……いい場所ない?」

「仕方ない。明日、コロシアムで対決できるよう手配する」


 というわけで、あっという間に翌日──……。




 歓声湧くコロシアム。サンライト王国の娯楽場の一つで、グラディエーターが戦い合う闘技場。されど古臭い故にグラディエーターの決闘は人気下落しているようだった。

 そんな折、ナッセという魔法使いとアクトという侍の異色対決と言う事で、再び観戦客が舞い込んで来たのだった。


 ヨネ王はやれやれと首を振る。

 いきなり対決しようと食ってかかるアクトを制して、ナッセがコロシアムで正式に決闘しようと言い出してくれたから助かったようだ。


「しかしナッセ君、君は不思議な少年だ」


 まるでサンライト王国に馴染んでいるかのような素振りが見られる。どう見てもやって来たばかりの新参者とは思えない。

 観戦客に混じって、リョーコが急ぎにやって来ていた。

 既に対決ムードだ。


「いきなりなんなの……」


 唐突なトラブルにリョーコも焦るばかりだ。

 前世がどうの、言ってた事も気になる。自分の名を知ってる事に驚きもした。もしかしたらこの展開もナッセが分かっててやっているのかもしれない。



 円形に荒野広がる闘技場。ナッセとアクトは互いに間合いを離して対峙している。


「へへっ、サムライなめんじゃねぇぜ……。魔法使いさんよォ」


 アクトは血滾るように不敵な笑みをこぼす。

 それに対し、ナッセは鋭い双眸で相手を見据えるのみ。

 今までの前世ではあったことのない人物。故にどういう戦い方をしてくるのか分からない。

 だが、本気で戦った方がいいレベルの強さと察し取れる。


「ではナッセ参る!」


 鋼鉄の杖を剣のようにかざし、臨戦態勢に構える。アクトはますます好戦的に燃え上がり、笑みが更に広がる。


「行くぞァァァァッ!!」


 アクトは猛ダッシュで地を蹴り、刀を振り抜く。煌めきの軌跡が弧を描く。

 それを見切ったナッセは紙一重で身を翻しつつ、懐へ杖を振る。


爆裂弾(バーストボム)!!」


 アクトの脇に爆発が炸裂し、吹っ飛ばす。そのまま闘技場を囲む壁に激突し噴煙を巻き上げた。

 その刹那のやりとりに、観戦客は興奮で湧き上がる。


「そうこなくちゃなァァァァ!!!!」

「やっぱ強いか……」


 平然と立ち上がるアクト。脇にはさしたるダメージも窺えない。恐ろしく頑丈だ。

 不殺版(ノーキル)で撃ってたら、逆に反撃食らってた。やべやべ。

 アクトはナッセへと駆けていく。猪突猛進。ナッセは近寄らせまいと、周囲に無数の火炎球を生み出す。


火炎球連弾(ファーア・レッダ)!!」


 ナッセの振る杖にしたがい、無数の火炎球が高速でアクトへと襲い掛かる。


「うおらぁぁぁぁあああああああっ!!!」


 ガムシャラとも言える刀の振り回しでことごとく火炎球を散らしていく。一見、無茶苦茶だが着実に迎撃している器用さも窺えた。この男は強い、ナッセの表情は険しくなる。

 上空へかざしている杖の上で、巨大な火炎球が轟々と燃え盛りながら膨らんでいく。


「そんなデカいもん見え見えで、かわせって言っ……」

灼熱烈火球(ブレズ・ファーア)ッ!!」


 杖を振り下ろして撃つと同時に、なんとナッセは巨大な火炎球に飛び蹴りして超加速させた。アクトは見開く。速ぇァ!!

 着弾し、灼熱の火柱が獰猛に燃え上がった。火炎球系最上級の魔法。最大の火力で敵を跡形もなく焼き尽くすほどだ。

 しかし三日月の煌めきが垣間覗かせ、燃え盛っていた火炎は豪快に破裂すると、散り散りと散っていく。

 ナッセも驚きを隠せず見開く。

 ふう……とアクトは息を切らしつつも、振り抜いている刀を肩に乗せた。


「けっ、魔法使いたぁ……遠くからコソコソ撃ってるだけの臆病者だと思ってたがなァ……」


 身体のあちこちに火傷があるも、力強く一歩一歩踏み鳴らす。まだ余裕があるようにも見えた。

 ナッセはその恐るべき男に戦慄すら覚えた。と同時に、これほどの強者が何故、今までの前世では出てこなかったのか不思議に思えた。


「テメェはその辺の魔法使いとは違うようだなァ。いきなり懐に爆発魔法食らわしてきたり、魔法弾を蹴って加速させたり、とガキのくせに度胸ある。やっぱここに来て正解だったぜ!」

「ここに来て……!?」

「おうよ! 本来ならドンイ王国を滅ぼした帝国に出向くところだったがなァ……」

「あっ、そっか……」


 ナッセは察した。前世では、ここへ寄らず帝国へ突っ走って返り討ちにあったから、会う事すらなかったわけだ。そして同時に、ここに引き留めれば戦力が増える。そう気持ちが固まると、気力が充実していく。


「それならば、やはり帝国に行かせはさせない! ここにいてもらう!」


 ナッセは鋭い眼光を見せ、身構えていく。

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