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5話「異国侍アクト現る!!」

挿絵(By みてみん)


 午前十一時。城の中を通され、王が座する謁見の間でナッセは丁重に跪く。


「君は、確かナッセ君だったね」

「単刀直入に願います。私はサンライトセブン精鋭隊へ入隊を希望します」


 ヨネ王は面食らった。

 サンライト王国外からやってきた人間が、いきなり懇願してきたのだ。唐突すぎて間を空けてしまっていた。


「ナッセ君。その情熱は子供ながら素晴らしい。だが……」


 最初はそういうものなのだと、ナッセは目を瞑る。

 だが最初にアピールしておく必要があった。ヨネ王にこちらの存在を焼き付けて、のちのちの活躍で認められていく方が確実なルートだった。


 すると、途端に扉が木っ端微塵に砕かれた。


「「「え!!?」」」


 ヨネ王と、大臣、兵士、そしてナッセも驚き振り向く。

 床に散乱する扉の残骸に構わず、一人の男が足を踏み鳴らしてきた。

 体格は大きく、露出されている胸元と腕から筋肉質なのが窺える。加えてやや濃い肌。出で立ちは着物を着ていて腰に刀を差している。身長はゆうに百八十くらい。黒髪がボサボサして天然パーマのようだ。目はやや垂れ目だったが瞳には怒りを宿していた。


「き、君……。何かね?」


 突然の訪問者にヨネ王も驚くばかり。その王を守るべき、傍らの兵士が得物を手に立ち塞がる。

 ナッセも驚きを隠せず、唖然としていた。


 まただ、こんな事、前世には────……。


「やい!! 耳ぃかっぽじってよォォォく聞け!! 俺ァ、ドンイ王国のアクトだァァァァァァァ!!!!」

挿絵(By みてみん)

 鞘から抜いた刀の切っ先を天に向かって振りかざして、そう名乗りを上げた。しばしの間。一同は唖然とした。


「……遠くから遥々来られたようですね?」

「ったりめぇだァァァァァァ!!!!」


 謎のハイテンションの大男。やや呆れ気味に気分がシフトしていく。とは言え前世では会った事がない。


「ナッセ君。知り合いかね?」

「いや、初対面だが……」


 振ってきたヨネ王に聞かれ、咄嗟に首を振って否定する。知り合いであっても多分否定していたと思う。こんなん小っ恥ずかしいわ。


「アクト殿。今日はどのような要件で……?」


 アクトは身を震わせ、刀を逆手に持ち地面にぶっ刺す。怒りに満ちた顔でヨネ王を睨む。


「しらばっくれるんじゃねぇェェェェ!!!! 幻影のドンイ王国どういう事だァァァァァァ!!!」

「ド、ドンイ王国……。確かに我が国の同盟国だが? 君は何を言っているのかね……?」


 謎のハイテンションにヨネ王もたじたじのようである。

 ナッセはバツの悪そうな顔で頭に手を当てて、状況を察した。


「そうか……。そういやドンイ王国はニセモノというか幻影だったな」

「ナッセ君……それはどういう……??」

「実はドンイ王国は帝国によって滅ぼされて、とっくに存在していない」


 なのに、今でもなぜか()()と存在している。

 だが、それはサンライトセブンの一人の、()()()が作り出した"質量のある幻影"なのだ。

 一見すれば本物のように実在しているように見えるが、人間はゲームのキャラクターのように、設定された言動を繰り返すだけの人形でしかない……。

 ただ建物の質感とかは本物そっくりだから、なおさらニセモノと分かりにくくなっている。

 なぜ手の込んだ幻影を作り出さなければならなかったのかは後述するとして、アクトという男はもう一人の生き残ったドンイ王国の人間なのだろう。


「この男を含めると、生き残った本物のドンイ人は二人。まさかこんな事……」


 頭が痛い……。いずれはドンイ王国の幻影を解消して割り切る事になるのだが、よりによって生き残りが()()()()来るとは。


「あんなんニセモノ認められるかァァァァァァ!!!」


 ドガァン! ドゴゴォン!!


 気が付けば床に兵士が数人横たわっており、ヨネ王はアクトに胸ぐらを掴まれてゆさゆさ揺らされていた。既に気絶していて泡を吹いている。

 新しい問題も積み重なって頭痛の種だ。


「待て!! 犯人は知ってる!!」


 毅然とナッセは告げた。アクトの手が止まる。ヨネ王を離し、こちらへ振り向く。


「犯人だとァ!? 知ってんのかァ……?」

「ああ。犯人はサンライト王国のサンライトセブンの一人であるドラゴリラだ」

「やはり、てめぇもグルかァ!?」

「いや! 今は()()知り合っていない! ヤツは訳があってタルパで作られた国で心の傷を埋めている」

「タルパァ……!? 妄想生成の秘術かァ?」


 なぜだかアクトは知ってるようだ。


 タルパとは、現実の世界に“存在しているかのように”自分で思い込んで妄想する。

 これを極めると現実の世界で自他ともに認識できるようにまでなる。

 そこに行き着くまでかなりの想いの強さが要る。

 キャラ一人ならともかく、国ごと具現化させるのは相当なレベルだ。


「そいつァ連れて来い!! 色々言いたい事があるァァァ!! この刀で語り合いたいくらいだァァァァァ!!!!」


 刀を手に、怒りを発散するようにぶんぶん振り回している。


「……落ち着け! ここは王様の御前だぞ!」

「生き残った人がたくさんいたと、ぬか喜びさせやがってァァァ!!! 肩透かしされた想いァどうしてくれんだァァァァ!!!」


 あー、気持ち分かるわ。

 前世じゃ、もう一人の生き残りのコンドリオンも、国ごと偽物と知って激怒してたからな。

 今ここで、真実を暴露されたら厄介な事になりかねない。このタイミングでコンドリオン王子が知ると、準備が整ってないドラゴリラと確執ができる。そうなれば最悪修復不可能にまで陥り、サンライトセブンが分解されかねない。

 ……止めるしかないな!


「だが、まずはオレと語り合え!! 実はオレも共犯者だ!!」

「何ァ……!!?」


 ナッセの真っ直ぐな瞳。されどアクトは怒りの矛先を彼に向けた。刀で構え、臨戦態勢に腰を落とす。

 そしてそれに応じるべき、ナッセも腰から杖を引き抜いて身構えた。


「オレは白銀の魔法使い(シルバー・マジシャン)ナッセ。後にサンライトセブンに加わる男だ。故に共犯者……」

「ほうァ……」


 頭に血が上っていたアクトは、その構えに息を飲んで気分が落ち着いていく。

あとがき


 コラボ出演としてアクトが登場します。

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