49話「恐るべきドラゴンの圧倒的パワー!」
思わずナッセが「ヤバっ! 散れっ!!」と叫び、フクダリウスたちは跳ねるように場を脱する。
瞬時に竜さんが通り過ぎて、向こうの建物を粉々に粉砕した。派手に破片が飛び散っていく。
「なんという破壊力だ……」
フクダリウスに乗ったコンセット二体が瞬時にオウガとドラゴリラの位置を入れ替えた。
そのままナッセたちは走り続ける。
リョーコも慌てて追いかかていて「ど、どこへいくのよっ!?」と叫ぶ。
「ここにいては温泉街に被害が出る。森へ入った方がヤツも戦いにくいはず」
「うむ!」
「イエス! 平地で戦えば、ドラゴンには敵いまセーン! エクセレントな判断デス!」
「だが、どうするのだ? ナイフが効かないんだろう?」
コンドリオンの言う通り、竜さんは竜のオーラを纏っている。
瞬時に竜さんが飛びかかっていて、ナッセたちは見開く。速すぎる。ニヤリと笑む竜さん。木々の間に飛び込むと同時に、竜さんの突進が木々を薙ぎ散らした。
この一撃だけで五本以上も巨木が吹き飛ぶほどだ。
「轟雷閃っ!!」
ナッセが木の隙間から杖を突き出し、雷撃を放って竜さんを感電させた。
さしもの竜さんも「ぐあっ!」と呻く。
続いてノーヴェンの無数のメガネが木々の間を飛び交ってビームの弾幕を覆い被せて爆破の連鎖が竜さんを呑み込む。
モリッカはコンセットを散らばらせて、氷の矢を次々放つ。
「効くかあッ!!」
竜さんは爆風を弾き飛ばし霧散させ、氷の矢すら粉々に消し飛ばす。
それでも構わず上から無数の魔法陣が吹雪を放つ。
「魔導円陣・六段射撃・氷雪礫!!」
四方から吹雪が吹き荒れて竜さんを氷結で覆おうとする。
それでも竜の衣の表面でこびりつくだけで、本体にはダメージがいかない。それは分かっている。それでもナッセは浮遊魔法陣を飛び交わせながら吹雪をかけている。
「凍らせるなど無駄な事を────!」
「やるなら『氷塊監獄牢』をチョイスしてたよ!」
「なにっ!?」
吹雪で視界がおぼつかない。竜さんは見開く。
しかも冷気だけは衣を貫いて体に痺れが及んでいる。電撃攻撃も含め、本来なら衣がなければ細胞ごと凍結して死ぬほどの威力だが、この程度しか効かない……。
やはりドラゴンは異常に防御力が高い。だから──!
「今だあっ!!」
「ぬおおおーっ!! フクダリウス・タイフーンッ!!!」
あらかじめ五メートルほどに筋肉を隆起させたフクダリウスが斧を振り回して巻き起こした竜巻の奔流が竜さんを呑み込む。そのまま後方へ押し流していって奥行きで衝撃波が爆ぜた。
遅れて地鳴りと空震が広がってくる。
「よし!」
ナッセとフクダリウスは確かな手応えに笑んだ。
「なるほど! 竜さんの衣を破るには、フクダリウスのような圧倒的パワーがいるのね!」
「ああ」
ナッセ、モリッカ、ノーヴェンでちまちま攻撃して気を引いて、フクダリウスのパワーでどーん!
コンドリオンはかつての友が敵になったから戸惑っているので、戦線から引いてもらった。
「かああああああーっ!!」
なんと嵐のように吹き荒れて、煙幕を吹き飛ばして竜さんが姿を現す。
未だ竜の衣が覆っているが、額から血筋が垂れている。効いている。しかし怒りで表情を歪めている。ギリッとギザギザの牙が歯軋り。
更に膨れ上がっていく圧倒的な威圧感。地響きが大きくなってくる。
「むうっ……、あれに耐えるとは……! しかも逆鱗に触れおったか……!」
「普通なら木っ端微塵に死にマース!」
「くっ!」
吹きすさぶ風にナッセもフクダリウスも戦慄にゾクゾクする。
ボコボコと竜さんを覆う衣が不気味に膨らんでいく。更に濃度を増していって透明率が下がっていく。ズズズズ……と圧迫感のある威圧とともに、更なる肥大化を続ける。
「おいおいおい!? 待て待てっ!」
「さっそくドラゴン化してきましたよっ!?」
鱗が明確に浮かび上がり、大きな両翼が羽ばたき、ズンと太い両足が地面を踏みしめ、鋭い鉤爪の両手、ギラリとした龍の目、ツノを生やして牙を剥く竜の頭。
周囲の大きな木々もよかすだけでベキベキとへし折れていく……。ズズンと横たわる木。
「塵芥にされる敗北の味を知れっ……!!」
大きなドラゴンとなった竜さんが響かせる大声。
そんな巨躯にナッセ、モリッカ、ノーヴェン、フクダリウス、コンドリオン、リョーコは驚愕に満ちた。
振り下ろしてくる爪がひと薙ぎしただけで、前方の巨木がことごとく切り倒され、衝撃波が吹きすさんで完膚なきまで破壊が荒れ狂った。
ナッセたちは「うわあああああああああああっ!!」と吹き飛ばされていった。
後方の木や岩山とかに身を打ち付けて「がはっ!」と苦悶し、地面に転がる。
「み……みんなっ!?」
ナッセは身を起こしながら、周囲を見渡す。フクダリウスもモリッカもノーヴェンも地に伏していて、起き上がろうと震えている。
コンドリオンは額から血を流して「な、なぜなんだ……? なぜ……?」と疑問を呈している。
「悪いが、キサマらを売る事にした……! サンライトセブンさえ殺せば、借金を帳消しにするとな!」
煙幕を吹き飛ばし、頭をのぞかせる巨竜こと竜さん。
間違いなく殺意を漲らせててコンドリオンは愕然とする。借金を無くすために友人を殺す気なのだ。躊躇いは微塵にない。
すると更に上空で渦を巻いている暗雲が視界に入った。暗雲の中心から、激しく迸る稲光を散らす巨大な雷球が圧倒感を放つ。
「天空轟雷閃ッ!!!」
ナッセは杖を振り下ろし、巨大雷球が一気に落雷して竜さんを穿つ。
周囲を稲光が迸り、破壊が荒れ狂って地響きとともに衝撃波が破片を流していく。
フクダリウスたちは「くっ!」と吹き荒れる烈風に腕をかざす。
「ナッセさんっ!?」
「これは……雷系最強の魔法デース……。ドラゴンにも通じていると思いますガ……?」
「さすがに効いてるでしょっ!」
はぁはぁ、息を切らすナッセ。しかしワナワナ見開いていく。
「なんかしたか……?」
平然と笑う竜さんに絶望を覚えた。




