39話「シュパンシア帝国四天王の襲撃!?」
最終試練────……。
全員は迷路を突き進んでいた。
団結が固まっていったサンライトセブンはゴーレムなど問題にならなかった。迷路は普通になっているのでゆっくりでも充分だった。
ボス戦への扉が見えた。
「行くぞ!!」
扉を開けた。そこは比較的広く、薄暗い。
天井が高くスポットライトのようにとある人影を照らしていた。
「ん? ボスは……? つか誰だ……!?」
「むっ?」
「気をつけてくだサイ。かなりの威圧を感じマース」
ナッセは緊張を解かず、フクダリウスもノーヴェンも腰を落としていく。
リョーコが「ねぇボスなの?」と聞いてきたが、ナッセは「いや違う」と首を振って否定。
最終試練で出るはずのボスはいない。
代わりに人影が不穏に佇んでいる。
「その特徴的なマント……! まさか……帝国のっ!?」
コンドリオンは驚いていく。人影はフフッと笑う。なんと……!
「いかにも! シュパンシア帝国四天王が一人! 北のイワシロー!!」
すると背後から巨大な女を象った像が現れ、唸りをあげていく。振動が床に伝わって行く。
「あ、あんさんも……タルパ使いやねんっ!?」
「え!? 他にもいたんですか?」
「そのようやね……」
同じタルパ使いとしてドラゴリラは仰け反る。
モリッカは他にもいた事にも驚いていた。
「君だけではないんだよ……、タルパを極めし者はね! ふふっ」
彼のタルパで具現化された像……。
体型としては胸が大きく胴体が細く尻が大きい。黒髪ロングで顔は美しい。女神像とも言うべき風貌か。
両翼が優雅に広げられ、ゆっくりと足を踏み出す。
呆気にとられる一同。
「ふふっ……、では全員始末するかね……」
なんと女神像はギャグのようにチューを長く伸ばして、イワシローを吸い込んだ。シュンとキスが縮んで顔面に収まる。
そして喉から透ける腹へ転がり落ちたイワシローがくるまってドヤ顔していた。
「…………我が俺嫁願望の極地! それはママの腹に回帰す! バブみ最高!」
すると周囲の風景がぺしゃん、と床に押し潰された。辺りは真っ暗。
ウゴゴゴゴ……、と少しずつ風景は方眼線広がる広大な空間へと明るくなっていった。
周囲の風景は海の中を思わせる青い空間。キラキラと天の川のような光の帯が横切って行く。どうやら不定期な間隔で左右から横切って行くようだ。
「エンカウントして、亜空間へ引きずり込まれたんだ!」
「ま、まさか! ヤツも時空間魔法使い!?」
「そんな事がありえるのですカ……?」
騒然とする一同。
ズンズン、と踏み鳴らし女神像はこちらを見下ろした。意思があるのかも窺えない無機質な顔。
右手には錫杖。左手には剣。背中からの両翼は左右に広く滑らかに羽ばたいている。
リョーコは「また変態と戦うなんて……」とナッセの後ろにいる。
「我が“マイワイフ・メイデン”に見とれながら死ぬがいいよ……。どやぁ」
「へっ、上等だぜ! 糞人形が!」
オウガはそう言うと、全身から炎のオーラが吹き上げた。
「ごおおおおおおおっ!!」
気合いを発してオウガが飛びかかるが、イワシローが「つばさでたたく!」と命令する。
それに従い女神像の翼がビンタのように振るわれる。
オウガは「ぶべら!」と吹っ飛んで、壁に大の字でビターンと激突して、目を丸くしたマヌケ顔で「あがが……」と床へ落ちていった。
「ならば僕がっ! 象ァ、長鼻剣ッ!!」
今度はコンドリオンが象の腕を振るう事による剣の乱舞で、あちこちを切り裂いて破片を飛び散らせていく。だが女神像は直立不動だ。
そのまま顔面に打ち込み、木っ端微塵に砕く。
だが、女神像の振るった錫杖が地面スレスレで薙いできた。
「危ないっ!!!」
「そうはさせへんっ!!」
ドラゴリラは床に手を当て、突き出た石壁で阻む。ドスンと衝撃で壁と床が震える。
秒コンマ遅れながらも壁は粉砕され、錫杖に打たれたコンセットは身を屈折させて「ぐああっ」と血を吐きながら、遠くへと吹っ飛んだ。
ズズン、落下地点から煙幕が噴き上げる。
そして血塗れになった仰向けのコンセットは煙に溶け消える。
「ど、ドラゴリラさんのおかげで、間に合った……!! ぐ、ぐぅ……」
痛む胸に手を当てがったままモリッカは安堵、そして膝をつく。
コンドリオンは「た、助かりました……」と肝を冷やした。
入れ替えでなんとか助けられたが、コンセットがやられた事で多少のダメージが響いたのだろう。リョーコは絶句した。ホイホイ身代わりにすればいいと安易に考えるのは危険だ。コンセットが全員やられたらモリッカは死ぬのかも知れない。
「それがコンセット召喚のリスク……」
ナッセはフクダリウスとノーヴェンへ見やる。彼らも悟って頷く。
モリッカに頼りっぱなしじゃあいけねぇ。
苦い顔でコンドリオンは見上げる。
「くっ……! なぜだ……!? 確かに大ダメージは与えたはずですが……」
「な、なんでやねんっ!? もうボロボロにしたんやろが!?」
「この俺嫁の上を見てみるがいいよ。どやぁ」
女神像の上には天使の輪のようなバーが浮いていた。
そのバーがググッと短くなると、ボロボロだった女神像はキュービックの破片が損傷部分に纏わり付いて埋めていって元通りになってしまった。
さっきまでが嘘のように無傷の女神像がそこにある。唖然とするみんな。
「……あのバーをどんどん減らしてゼロにしないと、我は絶対に倒れないのだよ……。ふふっ」
「なにそれー! インチキじゃないのっ!?」
リョーコは拳を振り上げる。
苦慮するナッセのほおを汗が伝う。
「本来のボスの代わりに、まさか……帝国の四天王がここに来るとは……!」
この展開は前世にはなかった……。
まさか帝国に、前世を知ってるヤツが…………?




