34話「これが闘将フクダリウスの底力だ!!」
休める所へ腰を下ろしたら、密室に閉じ込められた上に左右の壁が押し潰そうと迫って来る。
「げげっ、ヤバイやん!! ひぃ、ふう……、お、押し潰されてもうわー!」
「ぬうぅ!」
フクダリウスは筋肉を隆起させ、渾身の力を振り絞って斧を振り下ろす。ガツン、と衝突音と共に振動が部屋中を響き渡った。しかし壁は無傷。
「な!? さ、さっきまでと違って硬すぎるッ!!」
一同は絶句した。恐らく全方位囲む壁も同じ強度だろう。それが狭まってくる。ドラゴリラは慌ててタルパの壁を出現させて左右の壁を支えるも、逆に崩されていく。
「……じ、時間稼ぎにもならへんっ!!」
あまりのどうしようもなさに、コンドリオンはガクガクと震えだす。顔色が真っ青だ。
「おおおおッ!! 魔導円陣・二〇段射撃・烈光魔蓮弾!!」
「フルパワー・サウザンド・メガネビーム!!」
ナッセが、ノーヴェンが、最大火力でもって壁に集中砲火を浴びせ、爆音響かせて爆風が吹き荒れる。数度、部屋を揺るがす大技が炸裂し続けた。が、依然として無傷。
フクダリウスは険しい顔で「むう……、あれでもか!?」と唸るしかない。
「ならばっ! 星幽剣ッ!!」
ナッセは眩く輝く光の剣を振るい幾重の軌跡を描いた。ザギギギ、と引っ掻き音が劈く。カミソリのような鋭い切れ味による斬撃ですら、壁に擦り傷一つも付かない。
「くっ」と焦りを滲ませる。
「おおおッ!!!」
裂帛の気合を発して、目にも留まらぬ超高速の斬撃で幾重に連ねるように斬りつけるが、斬撃音が鳴り響くだけだ。
杖の先っぽから光の刃が消え、悔しくて歯軋りする。
「くそ……」
「分厚い壁も斬り裂いた魔法の剣ですら通らないのデスカ……」
ノーヴェンは悟った。この異常な強度も時空間魔法によるものだが、ここまで絶対的なものとは思わなかった。時空間を操る魔法はどれだけ次元が違うのだろうカ?
「出口がどこかにあるのか? ……ううっ、み、見当たらないッ!」
フクダリウスは絶句。どこを見渡しても完全に密閉されていて穴一つない。
「これじゃあ、どうにもならへんっ!!」
「ダ、ダメかッ……!」
オウガもドラゴリラも絶望に屈して膝をつく。ノーヴェンも真っ青で「どうすれば……? どうすれば……?」と狼狽える。コンドリオンに至っては真っ青で放心している。
それでも左右の壁は容赦なく迫ってきている。
「……すまんな」
ナッセは前へ一歩踏み締めた。まだ顔は青い。
「な、なんで謝るのよ!?」
「こんなはずじゃなかった……! だが、ここでみんなを死なせるわけには行かない! みんなで、みんなで……生き残るんだ!!」
ナッセの目の奥に滾る炎が見えた気がした。本気の気持ちを吐露しているんだ! リョーコは悲壮感な目を見せる。切羽詰まったナッセは腕を交差する。
「──これしか……」
「ナッセ待て!」
驚いたナッセが振り返ると、フクダリウスが憤怒の表情で力んでいる。
地響きが大きくなっていくほど、全身から滾るオーラは凄まじい。ナッセもみんなも「ど、どうする気だ!?」と戸惑う。
それでもフクダリウスは全身の筋肉を膨らまし続けている。
「かああああああああああーッ!!」
全オーラを筋肉に変換するかのように気合いを発して、ボンと全身が更に膨らむ。
もはや全長五メートルほどの大男だ。
迫り来る左右の壁を、フクダリウスは筋肉隆々の腕を伸ばし、左右の手で抑える。ズズン、と重々しく振動。
「ナッセが独り善がりに戻らぬよう、ワシも奮闘しなければなっ!」
サンライトセブンとして、仲間として、そして足手まといじゃないと証明する為にも、フクダリウスは全身全霊でもって挑まなければならぬと気概を見せた。
すると狭まってきた左右の壁が完全に抑えられた。ナッセ達は「え?」と硬直。
「────と、止まった!?」
リョーコは目を丸くする。
「ぬうううおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」
全身からオーラを吹き荒びながらフクダリウスは必死に左右の壁を抑え込んで、顔を真っ赤にして叫び続けていた。
すると扉を塞いでいた壁が徐々に上がって行く。ナッセとリョーコはパチクリする。
「もしかして、あの左右の壁を止めると逆に開く仕掛けなのか!?」
「うそぉ!?」
「今まで一緒にいてくれたけど……そんな力が……!?」
コンドリオンはフクダリウスの底力にも驚かされて、仰け反る。
「今の内だあっ!! さっさと脱出しろおっ!!!」
「お、おう!!」
「はいっ!」
オウガとドラゴリラを筆頭に、ナッセたちも急いで扉を抜けた。
振り返るとフクダリウスが左右の壁を抑え付けたまま、ズンズンと床を踏みしめながら扉へ近づいていく。ようやく彼も扉をくぐると、左右の壁が後方で挟まりきってしまう。最後に扉もひとりでに閉まっていく。ズズン!
「お、おっさんッ!? 大丈夫なのかッ!?」
駆け寄るナッセに、元のサイズに縮んでいくフクダリウスは笑む。
「グフフッ! 闘将はあれしき、屁でもない! だから……遠慮なく頼れッ!!」
「……おっさん」
彼がいなければ、あのフロアは抜けられなかった。
サンライトセブンの中で一番の膂力を持つ男。それが闘将フクダリウス。
そして、ただ強いだけではなく人情も熱い人格者だ。本当に頼れる男だ。
「ありがとう……。じゃあ困った時は頼らせてくれ」
「フッ! 任せておけ」
ナッセとフクダリウスは清々しい笑みで頷きあった。フフッ!




