32話「頭脳ノーヴェンと特異モリッカで簡単攻略!」
「当たりのパネルなら動かないが、ハズレの罠パネルと見分けがつかない。それが厄介だ」
「むうっ……」
ナッセの言葉にフクダリウスは顔を曇らす。
今度の試練は底が見えない大穴の部屋には高低バラバラにパネルがたくさん浮いていて、踏むと発動するトラップがあるという……。
オウガはドラゴリラへ振り返って、大穴の方へ指差す。
「おいっ! 親友よ、タルパ秘術で穴を埋めろっ!」
「む、ムリや!」
「ドンイ王国丸ごとタルパできるだろうがっ!!」
「ありゃ、元々ドンイ王国があったからこそ無制限でタルパできたんや! そない抜きじゃ十メートル範囲までしかタルパ秘術できんねん! そもそも穴を埋めるって苦手や!」
ドラゴリラが首を振って、オウガは「ぐぬぬ……」と憤る。
いわゆる、条件下ならチート級の効力を発揮できる制約スキルだ。彼の場合は、滅亡した国を媒介にすれば射程距離・効力範囲・持続時間・消耗を無視してタルパの国を具現化できる、って感じか。
「……オレだけだったら、身体能力を高める魔法でなんとかなってたがなぁ。素早くパネルに一瞬触れて移動すれば仕掛けにハマらない。それがみんなにできるか……」
溜息つくナッセの台詞に、フクダリウスは「ううむ」と唸る。
「それデス!」
なんとノーヴェンがナッセを指差した。キランとメガネを煌めかす。
「ど、どういうことですか??」
コンドリオンは頰に一筋の汗を垂らす。
「ナッセ君、ユーは何人まで抱えて走り抜けられますカ?」
「あ、ああ。成人男性なら一人。女か子どもぐらいなら二人くらい……」
「オーケー!」
ノーヴェンはキランとメガネを煌めかす。コンドリオンは戸惑う。
「ま、まさかナッセさんが一人ずつ運ぶってことですか?」
すると、オウガが「バカにするなっ! 俺様だって渡れらあっ!」と飛び出す。フクダリウスが「待てっ!!」と呼び止めるが、彼は聞かない。
オウガは「バーニングモード!」と全身から火炎を噴き上げ、加速して飛ぶ。
「こんなもの俺様の熱血で越えられるぜっ!」
浮遊パネルに着地し、さぁ次へというところでガクンと落下。見開いたオウガも落下。
すると間一髪、オウガは浮く。
みんなが騒然する最中、ナッセが手を差し出して浮環力を発動していた。間に合ったと安堵の息。ふう……。
引き戻されたオウガは冷や汗たっぷりで床にへたり込んでいる。
「ハズレでも踏み抜けるには、一秒の十分の一くらい一瞬でないとムリだ」
オウガは絶句。いつもなら「糞餓鬼がぁ」と食ってかかるのに、痛感して俯く。
ドラゴリラは「そない知ってるっちゅー事は、試した事があるんやね……」と聞き、ナッセは「ああ」と頷いた。
「オレなら抜けられる。作戦は?」
ノーヴェンは頷く。
「まずはナッセ君がリョーコとコンセットを抱えて出口まで行くのデス! 後は、みんなを抱えたフクダリウスと入れ替えでフィニッシュ!」
「名案やわ〜。さすがノーヴェンやな」
そう、コンセットが出口に着きさえすれば、入れ替えだけで全員運べるのだ。
「なんで私だけ!?」
驚いたリョーコが口を挟む。
「重量の問題デース。女性のリョーコとコンセット二人ならナッセでも運べますし、フクダリウスが持てる重量にも限界はありマス。では早速頼みマス」
よし来た、とばかりにナッセはリョーコをお姫様抱っこして、背中にはコンセットが抱きついている。リョーコが赤面していくけど気にしない事にしよう。
ノーヴェンはリョーコとナッセが親密なのを察しているので、敢えて抱っこさせたのだ。
「疾風迅雷転化ッ!!」
ナッセの全身に電撃が迸る。リョーコもコンセットもビックリしているがダメージはないようだ。
「オレの魔法力で覆ってるから感電しないよ」
「あれがナッセの身体強化系魔法……。オー、エクセレント……」
「行くよ!」「うん」
予備動作とナッセが屈むと、リョーコは首に回している腕でぎゅっと抱き締める。
地を蹴ると稲妻が駆け抜けるように、稲光の軌跡がパネルを転々して迸って出口まで着地。
踏破されたパネルは遅れて効果を発動し、落ちて行ったり、揺れ始めたり、クルクル回転始めたりした。
「こっち着いたぞ!」「着いたー」
ナッセとリョーコは手を振った。コンセットはナッセから降りる。
ノーヴェンの指示通り、体躯の大きいフクダリウスにみんなが張り付いた。
フクダリウスは「よし、いいぞ!」と合図を送る。
「では、入れ替えデス!」
「っしゃー!!」
コンセットは気合入れ、瞬時にフクダリウスらと位置を入れ替えた。抱きついているメンバーも一緒だ。今度は向こうでコンセットがポツン。
モリッカが解除を命ずれば、コンセットはボンと煙にかき消える。
「ミッションコンプリートデース!」
相変わらず冴えてるな。これなら最後まで全員生き残れそうだ。ナッセは頼もしそうに笑んだ。
「ナッセ君、みんなでフォローしますカラ心配なさらず……」
ノーヴェンはナッセの肩に手を置く。
二つ前の前世を思い出す。ナッセとノーヴェンだけが生き残った崩壊後の世界。そこでは二人で過ごして世界の再生や来世について長らく話をしていた。
自分が来世へ転生する前に、最終的にノーヴェンは愛する家庭を持てていた。その後の結末は知らない。
そして今のノーヴェンには前世の記憶は持っていない。
なのに面影が感じられる知的な笑み……。
「ああ……」
向こうのノーヴェンは元気でやっているのだろうか? 愛する妻と子沢山の家庭で世界は再生へ向いているのだろうか? 懐かしさと寂しさが同居してか、思わず涙が溢れる。
「ありがとう。よろしく頼む」
「エエ……」
笑顔でナッセとノーヴェンは拳を突き合わせた。




