25話「時空間魔法を操る仮面女子!?」
とある山奥の扉を開けると、広大な玄関が広がっており装飾や壁画が神秘さを醸し出している。リョーコは呆けていた。だがナッセは眼前を見据え、鋭い眼光を見せている。
彼の前に仮面の女が立ちはだかっていた。黒髪ロング、黒いローブ、猫か狐を模した白い仮面。正体不明の仮面の女は沈黙しながらも殺気を放つ眼光を覗かせていた。その後ろに扉がある。
「……このダンジョンに用がある。通してもらえないか?」
「否!」
誰か、と聞いても口にしなかったのに即返答がこれである。リョーコは恐る恐る指差す。
「前世もいたの?」
「いや、いなかった」
「ええっ!?」
ナッセは訝しげに仮面女を見据えていた。
前世の時は誰もいなかったはずだ。だからそのまま玄関を通り過ぎて行った。今回の歴史もなにか変化があって、このような事態になっているかもしれない。
仮面女は腰を落として身構えた。
「帰りなさい!」
そして仮面の奥の目が金色の虹彩で、瞳孔から六方向にトゲの紋様、更に白い縦線に変わる。ギン!
尋常じゃない殺気にリョーコは青ざめる。
「ち、ちょっと!? やる気なの!?」
もう完全に通させない気だ。なぜそうなのか理由は分からない。
それに、あの魔眼は……。
ナッセは杖をかざし身構えた。
「……邪魔してくる理由は分からないが、力ずくで通させてもらうぞ!」
「行くわ! 時空間魔法『漆黒花舞』!」
仮面女はギンと魔眼で凝らしてくると黒い花吹雪が渦を巻いて自ら姿を消した。その瞬間、ナッセの背後から仮面女が飛び出す。
気配を察したナッセは驚きつつも咄嗟に杖で懐を庇い、仮面女の蹴りを受け止め仰け反る。仮面女は蹴りを見舞った後、宙返りしつつ間合いを離れた。
リョーコは呆然とする。
「初見で見切るのはさすがね」
仮面女は再び魔眼を凝らし、花吹雪によって姿を消す。
ナッセは事前に「爆裂連弾」と爆発魔法を周囲に撒き散らす。が、仮面女は真上で発生した花吹雪から落下してくる。
それを察して、ナッセは杖を高くかざす。
「やはりな! こっちが見えてるからこその転移! 氷剣槍!!!」
地響きと共に床から氷柱を次々と生やしていく。玄関を埋め尽くすほどの氷柱の群集が広がっていった。
まるで針地獄のように、落下してくる仮面女を待ち構えるのみだ。
これで下手すれば自分から串刺しになって自滅する。
「よっしゃ!」
リョーコはガッツポーズする。
「……無駄! 闇焔!」
仮面女の魔眼がギンと凝らされて、氷柱が一斉に黒炎に包まれていく。そしてナッセの体を黒炎が包む。獰猛に喰らい尽くそうとしてくる。
「ぐあああっ!!」
床を転がって消炎しようとするが、それでも黒炎は勢いを増して貪ってくる。たまらず「光輪爆震天ッ!!」と光属性魔法を全身から発して黒炎を吹き飛ばす。
満身創痍のナッセは「うぐぐ……」と震えながら身を起こしていく。
「驚いた。早い判断もさる事ながら、対抗できる最適な魔法で破るとはね」
────厄介だ! 闇属性と融合した火炎系魔法は、水では消せない!
今のように光属性魔法で浄化しない限りは破れない!
「あなた一人でやろうとするなら無理。……帰りなさい!」
仮面女は突っ立ったまま冷徹で無慈悲な眼光を窺わせる。
ナッセ以上のワープ連発による多次元移動、闇属性を絡めた魔法、そして魔眼、ただものではない。
「その魔眼は『魔繰眼』……だな」
「そう、知ってたのね」
「自らの魔法を精密に練り上げれる魔眼、と聞いた事はある。だから時空間ワープを一瞬で発動できる上に連発もできて、闇属性を火魔法に混ぜれた。恐らく全属性にもできるはず……」
「正解。ここまで見切るのは、さすがね……」
仮面の奥の魔眼が細められる。
ナッセは辛うじて二の足で立ち上がり、決死の視線を見せる。
「……ここまで頑なな邪魔するという事は、帝国の者か? こちらが時空間魔法を会得されては何かと都合悪いとか?」
「ブー不正解」
「どうしてよっ!? 理由ぐらい言いなさいよっ!?」
リョーコの抗議にも仮面女はただ沈黙するのみだ。
答えたくはないようだ。ナッセはその間に傷口に手を当てがって回復魔法の光を灯している。それでも仮面女は静観するのみだ。リョーコは不審がり、訝しむ。
「だが、それでも新たな時空間魔法を得るためにも諦めるわけにはいかない!」
「あんまり固執しないで」
そう呟いた仮面女は腰を低くして阻止する構え。




