23話「時空間ダンジョンへ!」
朝飯の済んだ皿がテーブルに置かれ、空の食器が並ぶ。
「あー、食った食った」
満腹のリョーコは椅子の背もたれに背中を預け、つまようじで歯を掃除する。
「……お前おっさんか」
皿を片付けるナッセはジト目で見やる。
水道や食器を洗う音が収まった頃、ナッセは首にマフラーを巻いてキリッと精悍の視線を見せる。それをふと見たリョーコ。
「どっか行くの?」
「ああ」
今日も快晴で平和日和のサンライト王国。
その周辺の草原には何匹かモンスターが潜んでいた。青くて丸っこい液体状の“スライム”に、人間の腰辺りに達する高さの巨大なカタツムリの“クミーン”。
レベルが低い内はこいつらでも強敵だ。スライムですら、その体当たりは鉄のバットで全力スイングされたのと同じくらいのダメージを食らう。
クミーンの殻は硬く、引っ込んで身を守るだけではなく、殻で体当たりして攻撃する。重くて硬いので、当たりどころが悪ければ死ぬ。
巨大ネズミが火炎魔法を放つ“メイジマウス”など、初心者にとって他にも厄介なモンスターもいる。
「轟雷閃!」
ナッセは上空に杖をかざし、暗雲を発生させて無数の落雷が迸る。それは地上にいるスライムたちに降り注ぎ、ドン、ドン、ドンと消し炭に屠っていく。
あっという間に全滅し、リョーコは斧を両手に唖然とする。
「ち、ちょっと! あたし何もできないじゃない!?」
「ん? いいんじゃない? 一緒にいれば経験値入ってくるし」
「それはそーだけど……。むぅ……」
膨れっ面するリョーコ。納得いかなさそうだ。
それもそのはず、ナッセ自身のMPの広さを活かして延々と撃ち続けるだけでモンスターは片付いてしまう。
一番安全で効率が良いはずだったが、リョーコは自分自身で動くのが好きなようだ。ナッセは目を瞑る。
「……分かった。魔法は控えるよ」
作戦は“まほうをせつやく”だな、と思った。
しばらく歩いていると、またモンスターの群れがやってきていた。
スライムにクミーンが数体と徒党を組んでいるようだった。こいつらの団結力ってどこから来るんだろうかなどとふと思っていた。
普通生態系じゃお互い食う食われるの関係であってもおかしくないはずなのに、どっか社会あるんだろうか。
そもそもモンスターと言うのは通常の動物と異なり意図があって人を襲う総称の生き物だ。
何千年も前から生態系に溶け込むことはせず、何故か人間社会を阻害するように自然界で生きている。
「せいやーっ!!」
気合い一閃、リョーコは斧を振り下ろしてクミーンの殻ごと断ち割る。破片と体液が飛び散る。襲いくるスライムも横薙ぎで真っ二つ。その隙をついてスライムが体当たりしようとするが、ナッセはすかさず「氷牙弾!」と氷の矢で撃ち貫いた。
「さんきゅー!」
リョーコはフォローを受けて、モンスターたちをことごとく断ち割っていった。ほどなくモンスターを片付けていった。
戦闘終了後、モンスターが持っていた通貨を袋に入れながら思った。彼らも人間の通貨を使って自分の社会の経済回してんだろうか、と。
だが、確かな文明を確立しているモンスターの集落など誰も見たことがない。世界は広いが人知れず高度な文明の都市は未だ見つかってないってのもおかしな話だ。魔族魔界などと異世界の噂も物語と絡んで聞くが信憑性は高くない。
自分も何度も人生を繰り返しているがモンスター側の社会はまだ何も分かっていない。だが、今のオレにとってはどうでもいい事だ。
このままハッピーエンドを向かえれば……なんだっていい!
木があちこち点在する草原の獣道を歩きながらリョーコはナッセへ振り向く。
「ってか、どこへ行くの??」
「時空間魔法が取得できる伝説のダンジョンだよ」
一方で、ヨネ王様は謁見の間で跪いている黒マントの女性と話をしていた。
「……ってわけじゃ。頼むぞ」
「もちろんよ」
声を発するはキツネを模した仮面。
話が終わったのか、仮面の女は立ち上がり周囲に黒い花吹雪が渦を巻く。ズズズズと仮面女を呑み込むように収束していくと忽然と姿を消した。
余韻と花吹雪が緩やかに散り、虚空へ溶け消える。
それと同時刻、ノーヴェンはフクダリウス、コンドリオン、モリッカとテーブル越しでなんか話していた。
「メガネ電信によると、時空間ダンジョンへナッセがリョーコを連れて向かっているようデス」
「……黙って行きおって」
フクダリウスはため息をつく。
入隊できた矢先に、また一人でなんとかしようとしているのが窺えたからだ。
「僕もドンイ王国の件で恩がありますし、助けに行きましょう」
「はい。僕もなんだかナッセさんを放っておけない気がしますので……」
「メガネ電信で……ミスターナッセの場所は特定してますので、急ぎまショウ」
コンドリオン、モリッカも立ち上がると、ノーヴェンもメガネをクイッとしながら立ち上がる。
フクダリウスも赤い仮面をかぶって「行くぞ!」と一緒に部屋を出ていく。
彼らが去った後、隣の部屋で盗み聞きしていたオウガは「糞が……!」と不機嫌に顔を歪ませた。
「ワイらを置いてゆくなんて、心外やね……」
「サンライトセブン最強コンビの俺様たちも行くぞっ!!」
「せや!」
オウガとドラゴリラも追いかけていった。




