17話「ナッセとモリッカの邂逅」
ナッセが“モリッカ”と言った少年は、一見するとどこにでもいそうな魔法使いっぽい感じだ。
緑で統一された半袖の魔法使いローブ、そしてマント。まだ幼さがある顔つきで短めの黒髪。ちょっと頼りなさそうな雰囲気である。
そんな懐かしい彼に、ナッセも表情を和らげる。
かつて二人で肩を並べて、数々の困難を潜り抜けた記憶が蘇る。お互い魔法使いという事で気が合っていた。
「ナッさん! 僕がついています!!」
「ああ!」
だからサンライトセブンの中ではよく協力して戦う事も多かった。
それを思い出しながら、ふと口に笑みがこぼれる。
「オレはナッセ。よろしく」
「え? う、うん、よろしくお願いします」
ナッセにつられて自分も思わず会釈する。だが、ナッセの顔が強張るのを見て畏怖した。彼の脳裏には帝国との戦いを思い返していた。
「ナッさん……、僕の分まで生きてくださいね…………」
ナッセが涙ぐみながら必死に手を伸ばすも、モリッカは優しい笑みを残して光の彼方へ消えた。そして驚天動地の大爆発が爆音を響かせながら広がった。
「うわあああああああああああああ!!!」
慟哭し絶叫するナッセ。あれほど自分の無力のなさを悔いた事はなかった。今でも心に深い爪痕が残っている。
「……モリッカ。今度こそ死なせはさせない!」
真剣な眼差しのナッセ。訳が分からないモリッカは戸惑うばかりだ。
「やいやい、白髪のチビ! 弱そうだの貧弱だの脆弱だの思ってんだろー!」
二足歩行の三頭身のキツネ獣人はモリッカの側でプンスカ怒っている。
「まだ悪口言ってないでしょ……。どんだけコンプレックスなのよ」
呆れたリョーコが溜め息つく。その態度に怒ったコンセットが飛びかかるが、ナッセが抱きかかえて止める。そして降ろされる。
「いや、すまない。そうは思っていない。……むしろサンライトセブンの中でレアな宮廷魔法使い。対象者と召喚獣の“位置を入れ替える能力”は世界で二つとない」
「おう! なんだよく分かってんじゃねーか!」
ナッセの説明に、コンセットは上機嫌で拳を振り上げる。
「すみません。僕のコンセットが失礼な事を言っててすみません。でも、どこで会ったんでしょうか?」
内気っぽい性格で、何度かぺこぺこ頭を下げる。そして“位置を入れ替える能力”と言ったナッセに視線を向ける。
「やっぱり知ってるのね。でも、どういう理由で知ってるか話したくないんだ?」
拗ねたような、ジト目と窄めた口のリョーコ。ナッセはどことなくプレッシャーを感じた。
「ああ。理由は後で話すよ」
「絶対だからね!」
リョーコは鼻息を鳴らす。当のナッセは一筋の汗を垂らす。もう隠しきれないし、誤魔化すのも面倒だ。白い目で見られてもいいから本当の事ぶちまけるか。
「……話したくない理由は分かりませんが、なぜ僕と能力を知っているのか気になりますよ!」
モリッカがナッセへ歩み寄ると、困った顔でそう言う。その食い気味にナッセも少し仰け反る。
「全くだぜ! なんで知ってんのか教えてくれたっていいじゃないか」
コンセットはナッセの尻を叩こうとするが、ひょいと避けられる。その仕草にモリッカは僅かに見開く。これは自分の能力を知っていないと出来ない。やはり知っている。
「ますます興味ありますね……」
「いえ、それは興味ありません! じゃないんだな」
「ええ!? 口癖まで知ってるんですかっ!」
驚くモリッカ。コンセットはまたナッセへ触れようとするがスルリとかわされる。何度も触れようとするがひょいひょいかわされる。そんなもどかしさにコンセットは不機嫌そうに頬を膨らませる。
「触ったっていいじゃねーかーよー!」
「あらかじめ触れて『印』をつけないと、入れ替える能力は適用できないんだろ?」
「ギクッ!」
コンセットは目を丸くして竦む。
印をつけた対象は、いつでもコンセットと位置を入れ替えれるのだ。いつでも好きな対象を入れ替えるんだったら反則級だ。
「へー、モリッカって人はどういう人物?」
リョーコはニヤニヤ聞く。モリッカは顔を赤らめて「あわわ」と慌て始める。
「や、やめて下さいよ! もう!」
ナッセは落ち着くように息をつく。
「──このサンライト王国にも何人かいる“血脈の覚醒者”の一人だよ」




