Prologue
とある高校の学園祭の準備中。皆が胸を躍らせ、和気あいあいとした雰囲気に包まれた学園で唯一、忙しく駆け回っているものがいた。
「えぇと、次は、、、また職員室!」
廊下を足早に去っていく。
「やばっ!速くしないと」
私の名は猫屋敷ねこやしき碧天そら。高校2年生。自分で言うのもあれだけど人助けを趣味とし、道に迷う人がいれば道案内を行い、重い荷物を持っている人がいれば一緒に運び、募金箱があれば手持ちの現金の5割入れる。そのせいで今もみんなが談笑している中、用事に追われ忙しく学校中を歩き回っている。
「うっわぁ。量やばっ」
教員用のデスクに積まれた大量の企画提案書。この後も学校から支給されるお金の分割や、体育館をライブ仕様にするためのスポットライトの用意。また放課後には頼まれたご近所さんの犬の散歩と、お隣の家の畑の水やりと雑草抜きがある。
「完全にやりすぎた、、」
更に、放課後名前も知らない男子生徒に呼び出されている。正直、時間が押すからめんどくさい。おそらく、また告白だろう。
「はぁ〜」
自覚はないのだがどうやら私はモテるらしい。友人に『私ってモテるの?』聞いたところ、
『え?何、煽ってる?』
『サラサラロングヘアーにぱっちりな瞳!何でもできる完璧人間な上に人助けをする優しい性格!それにでっかいメロン!』
『アンタがモテてなかったら、その他全人類モテないわ!』
とキレ気味に答えられた。
そんな私にも誰にも知られていない秘密がある。
それは「無類の動物好き」ということである。特に猫。犬の散歩を頼まれると必ず一緒に遊び、おもちゃやおやつを買い与え、最後にもふる。募金箱に寄付金を大量に入れるのも相まって、財布はいつも軽い。頼まれごとには一応報酬としてお小遣いがもらえるのだが、、、
っと、話を戻して、なぜ秘密になったかというと。友人と雑談をしていたとき『お互い隠し事はあるのか。』という話題が上がり、ノリで『秘密〜』と答えたところ、「学園の華、猫屋敷ねこやしき碧天そらの唯一の秘密」と学園で噂されるようになった。ファンクラブですら特定できないと、驚きに包まれたらしい。私としてはファンクラブがあることに驚きなのだが。ちなみにファンクラブでは「男っぽい女」とか「心優しき女神」とか二つ名が結構あるらしい。秘密という秘密ではなかったのだが、噂が噂を呼び、何故か大事になってしまった。
自分語りもこの辺にして、用事告白も終わったことだ、散歩に行かなければ。
〜30分後〜
「っし!行くぞぉ!ポチ!」
帰宅して、堅苦しい制服から、ダボッとした白い半袖Tシャツにデニムの短パン。さらにその上から灰色のフード付きケーブを羽織る、ゆるっとした服装に着替えた。
ケープに特に意味はないのだが、気に入っていて肌寒いときに羽織る。ちなみに靴もローファーからスニーカーに履き変えてある。
「ワフッ」
この子はポチ。斜向かいの老夫婦の愛犬である。めっちゃ安直な名前だなぁとは私も思った。でも可愛い。
すでに畑仕事は終わらせてあり、散歩で今日の仕事は終了だ。
いつものコースで公園に行き、遊んでから帰る。今日は反省を活かし、おやつもおもちゃも買い与えない。金銭的にもカツカツだし、おもちゃの増え過ぎやおやつで太り過ぎが起きても、老夫婦は困ってしまうだろう。うん。
「おばあちゃん。散歩終わったよ〜。」
「あら。いつもありがとうねぇ。はい、お駄賃。」
「ありがと。明日はどうする?」
「病院に連れて行くから大丈夫よ。」
「どっか悪いの?」
「大丈夫。定期検診よ。」
「そっか。」
「心配してくれてありがとうね。」
「どういたしまして。また今度ね〜。」
「えぇ。」
と軽く会話をして分かれる。
「ふっは〜。疲れた〜。」
自分の部屋に入り、人を駄目にするクッションにダイブする。
ちなみに両親は『アンタしっかりしてるし大丈夫よ。』と言い残し1年の海外旅行にでかけた。自由人である。ふと横目でカレンダーを確認したところ、学園祭の経理が終わってないことに気づいた。
「うわっやばっ」
「今日は徹夜確定だな」
エナジードリンクを購入しに、先程の格好で近くのコンビニに走って向かう。
あまりに急いでいたため気づかなかった。横から居眠り運転のトラックが来ていることに。
「!」
ドンッ
大きな音がなって視界が反転する。
完全にやった。いや、悪いのは轢いた側だけど。もう少し注意すべきだったと後悔するが、もう遅い。
目が覚めたのか、トラックの運転手が何処かに電話していた。おそらく救急車を呼んでいるのだろう。違ったら許さん。
そんな事を考えているうちにも、血がどくどくと流れ出る。感覚はもうすでに麻痺しており、痛みは感じなかった。
「これ死ぬんじゃね?」的な事を考えているうちに視界が暗くなる。遠くに救急車の音が聞こえた気がした。
こうして私は死亡した。はずだった。
「え?ここ何処?」
気が付くと真っ白い空間にいた。
『やっほ〜』
「うっひゃい!」
『驚ろいた?ごめんごめん!』
目の前にはこの世(実際に現世ではないのだが)のものとは思えないような美しさを放つ女性がいた。
『女神だよ〜!』
「女神様?」
『うん!』
随分と軽い女神様だなぁと思う。
「じゃあ死んでしまったんですね。」
『そうそう。だから転生してもらいまぁす!』
「へ?」
突拍子もないことを言われ、思わず口があんぐりと開く。漫画やアニメ、ライトノベルでは見たことがあるが、まさか自分に起こるとは思わなかった。
『めっちゃいいことばっかしてたから特別です!』
「はぁ。」
『はい読んで。』
女神様が神を差し出す。それを受け取り目を通す。書いてあった内容はこうだ。
転生おめでとうございます。
善行を積んできたあなたには、ご褒美として第二の人生を歩んで貰います。
転生先はよくあるTRPGのような世界です。
魔法や魔物が存在します。
勇者になって魔王を倒すのもよし、魔法使いになって魔法使いを研究するのもよいでしょう。
お好きなように過ごしてください。
この場で、【職業】と【スキル】そしてあると便利な【アイテム】を受け取ってください。
【職業】は選択可能で、付属【スキル】が5つあります。
そこから更に1つ【スキル】がランダムで与えられます。
【アイテム】も同様に3つランダムで与えられます。
すべて受け取ったら自動的に異世界へ送り出されます。
良い人生を。
「つまり、この場は転生前の準備を行う場で、職業を選び、スキルとアイテムを貰うと。」
『そうゆうこと』
『じゃあ早速選んで』
「何があるんです?」
とりあえず聞いてみる。TRPGやRPGは割とやるが、必ずゲームの職業があるとは限らない。
『色々あるけどぉ、オススメはテイマーかな。』
「テイマーあるんですか!」
『あるよぉ。動物好きにはうってつけ。』
『どうする?』
「テイマーで!」
動物好きな私は思わず食い気味に答える。
『わかりましたぁ。』
『付属スキルはこちら!』
〈テイム〉
テイマーとして必須な能力。魔物・精霊を従えられる。付属効果として、従魔の能力が使えるようになる。
〈五感共有〉
五感をテイムした魔物共有可能。偵察や捜索にも役立つ。
〈言語翻訳〉
名前の通り。どんな言語でも全て日本語に翻訳される。日本語で喋っても相手の言語に変換される。従魔とのコミュニケーションにも役立つ。
〈鑑定〉
見たものの情報がわかる。従魔の体調管理や餌集めにも役立つ。
〈調理〉
料理がプロ並みに成る。従魔の餌作りにも役立つ。
「おぉ。チートじゃないですか!」
『ふっふっふ。驚くのはまだ早い!』
『追加スキルはこれだ!』
そういって、自慢げに女神様は、スキルを見せた。
〈魔法〉
スキル〈火魔法〉〈水魔法〉〈風魔法〉〈岩魔法〉〈光魔法〉〈闇魔法〉その他の魔法スキルが合体したスキル。また、魔法は新しくつくることも可能。
「パワーバランス大丈夫ですか?」
訝しむように聞く。大丈夫なはずがない。
『も、もちろん。な、な、なぁんにも問題なぁし!』
すっごい慌てように、どっかの幼児のように心を読めなくとも嘘だとわかる。バレバレすぎる。
「絶対だめですよね。」
『だってぇ、そんなチートスキル出ると思わないじゃん!』
「はぁ。」
『でももう変えられない!』
『次!アイテムはこちら!』
〈マジックリング〉
指輪型のアイテムボックス。普通はカバンか袋のような形で、容量が限られるが、マジックリングは容量無限。更に、内装を変更できる。指輪をかざすか、念じると入る。増えすぎた従魔を中に入れ、家として使用可能。山や海を再現できる。中自体が異世界と言っても過言ではない。マジックリングの中では時間がどれだけたっても、外の時間は経過しない。
〈百科事典〉
ありとあらゆる事が乗っている。元の世界から異世界の知識全てこれ一つで解決する。世界に一つしかないとされている。
〈水入りガラス瓶〉
純度が高い水が無限に出てくるガラス瓶。念じれば、ポーションに姿を変える。戻すときも同様に念じれば戻る。
『なんでぇぇぇ!』
叫びながら女神が膝から崩れ落ちる。本当に女神か疑ってしまいそうだ。
「お疲れ様です。」
『いいこすぎない!?』
急に文脈が途切れ、思わず尋ねる。
「どういうことですか?」
『いい事すればするほど、強いスキルやアイテムが出るの!』
「つまりSSRの確率が上がると。」
『そう!』
『ホントは自由にしてていいんだけど、暴れすぎないでね!』
鼻と鼻がくっつきそうなくらいの至近距離で食い気味に伝えられる。
「わかりました。目立ちたくないですし。」
『よかったぁぁ。』
めちゃめちゃホッとしてる。そうだよな、誰だってミスしたら怒られるもんな。
『っじゃ、いってらっしゃ~い!』
「へ」
初めてですが、精一杯頑張って書いていこうと思います。
改善すべき点があれば遠慮なく教えてください。
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