訳アリ洞窟
俺はアルバスに任務を任された。
その内容は王都の城の西にある山にある洞窟でモンスターが大量に発生したとのこと。
モンスターといっても、どれも弱小モンスターばかりで並の騎士で解決できるそうだが、量が多いので俺の新しいチームの団結力を上げるいい機会になるかもっていう訳で俺らに任されたらしい。
ちなみに城の東には街があり、城の城下街ということですごく賑やかな街らしい。
まずはそっちに行きたかった。
「なぁクラハ、なんで洞窟にいるモンスターなんて倒さなきゃ行けないんだよ」
「聞いてなかったんですか?」
「いや、任務の内容話している時ゴキブリを食べるのに必死だったからさ」
「残せばよかったじゃないですか」
「そんなマナー違反なこと王の前でできるかよ」
俺はあの時結局ゴキブリを食べた。
エビの味がすると言うから少し期待したのだが、全くそんな味はせずとにかく生臭く、触角が口の中で暴れてとにかく気持ち悪かった。
次からは外してもらうように言っておこう。
「いいですか、あの山は鉄鉱石がたくさん取れるんです。そんな場所にモンスターが突然大量発生したのは奴らが関わっているに決まってます。多分資金源を奪うつもりなんでしょうね」
「そうか、ただその洞窟に住みたいという純粋な気持ちだったりしてな」
会話をしながら森の中を歩く俺とクラハ。
ちなみにクラハ暇だから俺らについて来たらしい。
それに、どうやら城に居てもどうせ戦争にも役に立たないし何をやらせても邪魔になるからできるだけ連れてって欲しいとアルバスにも頼まれたので仕方なく連れてきたのだ。
そして俺とクラハの前で道案内をしながら歩いてくれる女の子2人。
ラシュとメルル。俺の一応部下ってやつだ。
「なあ、俺あいつらのこと全く知らないんだけど、どんなやつなの?」
「そうですねー、まずラシュさんは普段は方言なんですけど、怒ると普通の喋り方になりますね」
「そうなのか」
こりゃまた癖の強いキャラ設定だなと思いラシュに目を向けると
「ラシュちゃん、背中に虫が着いてますよ」
「あ、ほんまか、あ自分でとるから平気や」
といったがメルルがラシュの背中をはたき虫を落とすと
「何背中に触ってんだよコノヤロウ!なめてんのか!?」
とすごい流暢に喋りだした。
いや、まず怒ったら流暢に喋るって言うのはわかったんだけど、あいつの怒りのツボ浅くね?あまり関わりたくはないタイプの女だ。
「それで、メルルはどんなやつなんだ?」
「そうですねー、メルルさんはすごく頭が悪いんですよ」
「どうゆう事だ?」
と思いメルルに目をやると怒っているラシュに向かって
「よくわかったね!実はずっと飴を舐めてたんだー、あラシュちゃんも舐めるー?」
「ええの?貰うわー」
と会話を繰り広げている。
仲直り早いな。
「俺、あんな奴らといるとすごく疲れそうな気がするんだけど」
「大丈夫ですよ、あの二人、実力だけはすごいんですよ?でも個性的過ぎて周りから変人扱いされてい処遇に困ったアルバス様が剛様に押付けたんですよ」
「おい、サラッとやばいこと言うなお前」
そんなこんなで歩いていると頼まれた洞窟まで俺たちはたどり着いた。
洞窟の入口は人間1人分ぐらいの大きさで中は暗く奥まで確認することは出来ない。
「よし、2人とも先入っていいよ」
「何言ってるんですか?先に入るのはリーダーの方ですよ?」
メルルが俺が先を譲ってやってんのに余計なことを言ってくる。
いや別に、ビビってるとか、もしモンスターに襲われたらとか、考えてねぇし!
「いやいや、さっきまでずっと先頭歩いてくれたじゃん。だから、前はお前らに譲る!」
「何い言うとんねん、ビビってるんか?おお?」
「はぁ!ビビってねぇし、なんなら少し楽しみなぐらいだし!」
「じゃあ、先に行っていいよ?」
「いや、それだけは譲ってやる」
いや、本当に怖いという訳では無い。
そんなやり取りをしているとクラハが提案してきた。
「ここは平等にじゃんけんで決めましょう」
「そうだな!!そうしよう」
そうして俺らはじゃんけんをした。
「なぁ、何も見えないんだけど…灯りとか持ってないの?」
「大丈夫ですよ、もう少し進めば灯りがあるところに着くので」
「なぁ、さっきからウチの背中触るのやめてくれへん?」
「いやですよー、はぐれちゃいますー」
「だから!触んなって!」
「ここは洞窟だよ、サバンナじゃないよ」
後ろがうるさい。なんで俺が先頭を歩かなきゃ行けないんだ。
てゆうか、ラシュの奴背中触られるの嫌がりすぎだろ。敏感なのか?
俺らは暗闇を壁を伝って歩き続けた。
少し歩くと灯りが見えた。
「お、灯りだ。よし、降りるぞ」
灯りの向こうには階段があり下へ向かっていた。
俺たちはその階段を降りると1つの扉があった。
俺がそれを開けようとすると
「待って、開けちゃダメですー」
後ろからメルルが開けるのを阻止してきた。
「どうしたんだ?早く向こうに行こうぜ」
「いや、向こうからたくさんの敵反応が出ているんですよ」
「なんだそれ?」
「あ、そうでした!メルルさんは獣族なので鼻がすごく効くんですよね。昔図鑑で呼んだことありますよ、獣族の鼻は危険を察知できるって」
なにそれ、すごい便利じゃん。
「じゃあ、この扉の向こうに敵が沢山いるのか?」
「そうなんですよー、どうしましょうか?」
「どないする、リーダー」
「うーん、そうだな。このまま帰って王様にやっぱり無理でしたって言うのはどうだ?」
俺のその言葉に3人はカスを見る目でこちらを見てくる。
「いやさ、だってこいつらにはただ資金源を奪われただけなんでしょ。それなら新しい鉱石の取れる洞窟を見つけてさどうにかすればいいじゃん?しかもこいつら別に直接俺らに害を加えたわけじゃないんだろ?俺はなんにもされてないやつにいきなり襲い掛かるなんて出来ないよ」
「「「……」」」
黙ってこちらを見つめる3人。
いや、ここにはモンスターがいるということはこの前のスカーレットとかいうやつみたいなのがたくさんいる可能性だってある。
そんな危険なとこに実戦素人の俺が行ったところでそれはただの自殺行為だろ。
そんなことを考え俺は振り向き3人にそれじゃといい洞窟の出口に向かった。
「あ、あの!本当に帰るんですか!?」
と言いクラハが俺を追ってくる。
「まー、あんなやつ元々期待してへんからな、ほなメルルとウチでこいつらいっちょやってくるわ」
「では、行きましょうか」
そんなことを言い、ラシュとメルルが勢いよく扉を開けかけ出す。
そんな2人を見送った俺とクラハはその場で立ち尽くす。
「な、なあ、クラハ。あの二人は大丈夫だよな?」
「どうでしょうね。でもあの2人であれば大丈夫だと…思いますよ?でももしかしたらー」
「そうか、じゃあ帰るか」
「えぇ??」
俺は帰る支度をし降りてきた階段を上る。
いや、あの二人は強いんだろ?なら大丈夫だろ。
それにあの二人は自分でこの部屋に入っていったんだ、俺には関係のないことだ。
「おい、クラハ危ないからほら、手を繋いでってえ?」
後ろを見てクラハに手を差し出すとクラハはそこにはいなかった。
「まさか、おい…行ったのか?俺を残して…」
俺は少し自分が情けなく感じてしまった。
いやかなり情けなく感じてしまう。
女の子たちは命はって頑張っているのに俺は逃げようとしてばっか。
「っ〜〜!はっぁ!わかった行くよ!」
俺は扉の取っ手に手をやる。
「よし…ふぅー…行くよ…よし……行くよ?」
俺は扉を開ける。
そこには……倒れているモンスターの山とその上で寝るメルルに腕立て伏せをしているラシュと食パンを食べるクラハというなんともカオスな光景が広がっていた。
「…あれ?終わった…のか?」