会議
頭が重い…布が生暖かい………布?
しばらく布団など羽織ったり掛けたりするものとは無縁の生活をしているため現状に疑問を抱く。
恐る恐る目を開くとそこには鉄ではなく木の枝が複数縦に並んだ天井………どこだここ?
確か私は、檻の中にいたはず…助かったのかな?
体を起こし周りを見渡すと…檻の中で一緒にいた2人が静かに眠っている。
出口は………あそこか…とりあえず外を見たい…
重たい体を起こして出口に近づきのれんを通……った。
「尾矢…御北化位」 「ウァ!!」
外でゴブリンが出待ちしてた!!…やばいどうしよう!!…どうしよう!!
思わず引き返し寝ていた場所に引っ込み近くの一人 を叩き起す。
「むぅ…がぁ…マッテ」待てない!!ゴブリンが普通に入って来た!…ん?あれ?今…人語話してた?
「キガイ…クワエナイ」
よく顔を見ると明らかにしわだらけで高齢な女性のゴブリンだ…加えないと言うより…加えれないが正しいのではと思うぐらいには細身で小さい。
多分大丈夫…かな?
「…ゴハン…イル?」
「…っえ…あっはい。」
しばらく何も食べてない…たとえゴブリンの食であっても何か口に入れて置きたい。
「ホカノ…オコシトイテ…」
私が返答するのを見て彼女はそう言うと、室内から去った…
「……なに?」起こしていたハムスター耳の男の子が目を開ける。
今更!?って今起きたのか…
「周り見て場所が明らかに違うでしょ…」
「………ほんとだ………脱出できたの!?」
起きてすぐだったからか間を開けて質問してきた。
「多分…そうだと思いたい…」
「…?どういうこと?」
「えっと…」
ちょっと待て…振り返ろう…今は、多分ゴブリンの村(仮)にいるとして昨日の夜は……男に首を締められて…それでその後………あ!!
あのエルフの子だ!!…関わってるとすれば彼女しかいない。
「多分だけど今は、ゴブリンの村にいる。
でも多分…人種に友好なタイプだと思う。
昨日の夜、エルフの女の子が一緒にいたから。」
「…まじか」冷静にただその一言を口にした。
………
……
…
その後すぐにもう1人…犬耳の女の子を起こして状況を説明した。
…が彼同様冷静な反応だった…まぁそれどころではなかったからか…安心したからか。
私も少しパニックにはなったものの…すんなりと受け入れていっている。
奴隷よりはまし…だからか?
姿が見えない他の子は大丈夫だろうか…
「オ待タセ…」 「「ウォ!!」」
入口からさっきのおばあちゃんゴブリンが…鍋と器を持って来た…
それに対して起こした2人は、さっきの私とほぼ同じリアクションだ…
「…ってそうだった…ゴブリン村なんだっけ。」
男の子が冷静に状況を確認し…おばあちゃんゴブリンは、鍋を開けて器にスープを注いでいる。
「…ハイ」「ど…どうも」
器とスプーンを渡され…思わず手に取る…中には細かく切られた何かのお肉と野菜が入れられた薄く黄緑色で半透明のスープだ。
温かいがゴブリンの食事だ…体に良いのだろうか…だがいいの匂いがするのも事実だ。
「…クエル?」 「あっ……えと…いただきます。」
腹をくくるしかないか…匂い的には問題なさそうだし…
そう思いスープを思い切り口に注ぐ………
「…!美味しい…」
辛いけど気になる程じゃないお肉もかなり柔らかく…くさみも感じない。
ちょっと苦味を感じるのは恐らく野菜…いや…故郷でも取れる山菜が入っているからか何処か落ち着く。
「………はぁ…ごちそうさまでした。」
その様子を見ていた2人は、スープを飲み始めた。
「あの…エルフの女の子や他の子達はどこに?」
「ん?」
あっそっか…あっちからすれば外国語だからゆっくり…
「他の…子供…達は?」
「アァ…別ノ小屋…キミ達…具合…悪カッタカラ…別二シタ。」
具合が悪い?…確かに言われて見れば体が重い…風邪かもしれない。
他の2人も顔が少し赤いし…
「じゃあ…エルフの…女の子は?」
「エルフ…亜之娘可…会議…イッタ…ショウニン…朝ニ」
会議…まぁ…当然か彼女が最初に私達を見つけたから。
「ソロソロ…終ワル…思ウケド?」
「そうですか…来たら…呼んで。」
一旦待って彼女に話を聞こう…そうした方が身のためだと思うから。
「…ワカッタ」
朝の日差しが上がる頃…割とすんなり寝床の木箱で目が覚める。
昨日の事件があったからか…いや昔からいや何か起こると翌日まで意識がしっかりしている為元々だろう。
今日は緊急会議と賊の基地の捜索…後者は、地図が見つかったって言っていたから簡単だと思う。
まだ少し暗い…会議は基本朝か正午頃だが体感2時間程度の猶予がありそうだ。
その間に素振りと今日の食事の確保…余裕があればゴブリン達のところに行って彼女達の容態確認かな。
「顔洗おう…」無意識に声を発して…小川に向かった。
魔法で洗った方が早いのだが魔力は極力使わない様にしている。
狐達の体を洗う為川で水浸しになって…二度手間になることがよくあるからだ………
「…っあ」兎だ…しかも結構大きい。
ここでは鹿や兎は、数が多くよい食料だ。
しかもこちらに気付いていない…が距離が遠いから針を構える。
あの大きさなら山菜スープに混ぜればちょうどいい…予定変更だ。
針を兎目掛けて投擲…首に直撃して…倒れた。
………
……
…
ゴブリンの集落は、僕の初期スポーンである魔樹…《ベルソー・ロ》から小川とそれとは別の滝壺を越えた場所にある。
そもそもあの木は、妖炎公領と豪傑公領の境目付近にある為両者の拠点に行き来しやすい。
「おや…早いねぇ…おはよう。」
入口付近でおばさまと遭遇した…彼女は比較的早起きだから別に珍しい訳ではない。
「おはようございます。
さっき顔を洗おうとしたら…偶然兎を見つけまして。」
先程狩って心臓を引き抜いた兎を見せる。
「おぉ…これまた立派なのを…くれるのかい?」
「はい、昨日の保護した…子供達に栄養失調なのでしょう?」
おばさまに兎を渡すと胴体をまじまじと覗く。
「あぁ…確かにこれなら山菜と合わせれば人数分は、足りる…新鮮な方がいい…すぐに調理しよう。」
「山菜はあります?」
「確かまだ余ってたから…鍋に水入れてくれる?」
「わかりました。」
調理場に足を運び2つ鍋を取り出し魔法で水を注ぎ込む。
井戸は、一様あるのだが遠く…労力的に煮沸消毒した水が適切なのだ。
妖炎の火は、特殊すぎて調理には向かないので火打ち石で着火して薪を焚べる。
「兎はやっとくから…山菜のアク抜きお願いね。」
火が大きくなってすぐにおばさまが山菜の入った籠を持って来た。
「わかりました。」
鍋を火の上に置いて…籠を拾い…水が煮立ったのを確認して片方の鍋に入れる。
一度茹でてアク抜きする為だ…10分ほど待って山菜を回収…川に向って山菜を冷ます。
戻ると…おばさまが兎の解体を終えていて背中の肉をサイコロ状にカットしていた。
「鍋に入れて…そこのも…」
鍋の隣には山椒や削った生姜に似たの香辛料があった。
鍋の中を確認すると底に兎の骨が沈んでいる。
「はい」
冷ました山菜と香辛料を鍋に入れる…
「よし…どいたどいた…」
切り終わったおばさまが鍋に肉を入れてゆっくり棒でかき混ぜる。
「…なにしてる?」
豪傑公が後ろから声をかける…彼も基本早起きだ。
「おはようございます。
兎を偶然見つけたので…子供達にスープを…」
「そうか…一杯いいか?」
彼の1杯は…3杯分なのだが…
おばさまの方に目を向ける。
「多少のおかわりも想定してるから…大丈夫だよ。」
ならば大丈夫か。
「はい」
………
……
…
「………はぁ…ごちそうさまでした。」
スープを飲み終えてすぐに妖炎公に呼び出せれた。
会議は、それぞれ遠隔でメッセージを送れる為全員起きたのを確認して行われる。
「…悪くはなかった。」
豪傑公がこういう時は、多少なりとも満たされている時だ。
「そういえば豪傑公…子供達はどうするおつもりで?」
「…後で話す。
いちいち説明するのはめんどくさい。」
「わかりました。」
今向っているのは3陣営の境目だ。
「森人…寝床にいないと思えば。」
道の最中妖炎公と合流する。
「おはようございます…妖炎公。」
「ん?…スンスン…貴様ら兎でも食ったか?」
鼻を僕に当てて食べた物を当てた。
「はい…偶然見つけて…脚…燻製にする為に持ってますが…いります?」
具が胴体で事足りたらしく捌いた足が残ったのだ。
「後で片方寄越せ。」
クールを装っているがしっぽがぶんぶんしてるから台無しだ。
「わかりました。」
微笑むのを我慢して答えた。
「…ついたぞ。」
視線を前に向けると大型ライブのステージほどの切り株が目の前に現れる。
見慣れたがやはり大きい…昔…3陣営の領主が争っていた時…大木に落雷が落ちて大火事となり…残ったのがこの切り株らしい。
その切り株の周りに何人かの狐やゴブリンが座り込んでいる。
「来たか。」…妖炎公が声を出す。
反対側から…人並みの大きさをした大蛇達が現れる。
もう1人の山岳地帯の領主…飛鱗公の傘下だ。
「飛鱗公は子の世話で出れぬ為代理で来た!」
彼女は、名の通り特徴的な鱗を持つ大蛇で魔術長けている。
だがこの時期は蛇達は産卵期で巣の奥で卵を温めている事が多い。
「そうか…では始めよう。」
豪傑公はそう言うとこちらに視線を向ける。
こういう緊急会議時…目撃者から主張するのがここでの決まりだ。
僕は切り株の上に乗り…内容を述べる。
「昨日の夕暮れ頃…妖炎公…豪傑公領の境目を警備していた所不審な人間達を確認。
様子を伺っていた所…荷馬車に檻を確認、中身は獣人族の子供…奴隷商と思われます。
豪傑公の援助にて獣人族の子供達は、保護…栄養失調や高熱などの症状があり豪傑公領で治療中。
賊は、捕縛して現在…妖炎公領で監視しています。」
蛇達は、静かにこちらを睨みつけ先程代理を知らせた蛇が切り株に登った。
「賊は、最近確認された森荒しか?」
「確定ではないですが…間違いないかと。」
「保護した獣人達はどうする?」
「それは、私から…」後方から成人男性程の体格のゴブリンが手を上げた。
彼は、豪傑公の側近の一人でゴブリン達の中でも有力者だ。
「いつも通りか…上がれ。」蛇は、彼に指示し彼はそれに従った。
「察しの通り…体力の回復を確認して…人界の村に渡します。
今朝…人語のわかる伝令役を村に出立させました。」
「捕虜と獣人達から…何か有力な情報は?」
「それは彼女次第です。」
「え…」僕?
「まがいもの…これを。」
彼は、腰のベルトに付けてる袋から巻かれた紙と丸い箱を取り出し手渡してきた。
「開いても?」そう聞くと彼は頷いた。
紙を横向きに広げるとこの森の一帯を示しているような地図…そして箱の方は開けず…上の面を見るとコンパス特有の針が方角を示していた。
「それは?」…蛇が初めて見る者に興味を示す。
「彼女の注文で探していたものだ…上手く行けば敵の拠点がわかる。
…っでどうだ?」
「ちょっと待って下さい…照らし合わせていますので。」
針の方向から北を向いて下に置いて現在地を特定する。
「代理の方…左端を抑えてもらってもよろしいですか?」
「おぉ…こうか?」蛇は、太い尻尾で左端の辺を抑える…少し隠れてしまっているが支障はないので止めはしない。
………中央からやや右上が多分現在地の大切り株…昨日の戦闘地点がそれより左端斜め下…それが狐とゴブリンの境目で…切り株より上は、飛鱗公領だから。
「わかりました…敵の拠点は、飛鱗公領…陣営拠点の洞窟の反対側です。」
敵拠点の方向に指を指して場所を示す。
「…!事実か!?」代理の蛇が言葉を荒くして問う。
「えぇ…ここは確か警備対象ではなかったはず…抜け穴を突かれたみたいです。」
毒エサは周囲の動物や魔物の露払い…伐採は拠点の制作に使ったのだろう。
それに彼女達の運搬をしていた事から拠点はほぼ完成しているかもしれない。
「今回はこちらに責任があるようだ…飛鱗公に直ちに了承をもらい…私達が奴らを迎撃する。
両陣営…それでよろしいか。」
蛇達がガヤガヤと混乱しながらも代理が冷静に対応する。
「その答えは、ちょっと待って下さい。」
先程言ったようにこの時期…飛鱗公やその傘下達は出産時期だ。
下手に拠点の警備が薄くなれば飛鱗公はともかくその傘下は敵に奇襲されて壊滅する恐れがある。
実力を信じていない訳ではないが…念には念を入れたい。
「豪傑公…妖炎公…双方から意見はありませんか?」
後ろを振り向き彼らに質問した。
個人的に、彼らの助力が欲しいからである。
「はぁ…貴様の言いたい事はわかる。
そこならば私の陣営が近かったはずだ。
害が出る恐れがある…助力しよう。」
妖炎公が察して答えてくれた。
彼の言っている事も事実だ…言ってたとおり賊のアジトは妖炎公の領地の近くでもあるから乗ってくれると思った。
「ならば事後処理は、我らが行おう。
今人間に言い訳するように伝令役に伝えた…」
豪傑公が右手をそっと上げ賛同した。
「ありがたい…ならば日を合わせる必要がある。
可能性な限り早急に対処したい。」
「そこは飛鱗公と妖炎公にお任せしましょう。
拠点に戻ったらすぐに伝えて下さい。
豪傑公もそれでよろしいですか?」
彼は静かに頷いた…了承したという事だろう。
「各陣営…他に連絡は?
………無いようなので会議は、以上とする。」
タイミングを見計らい…有力者のゴブリンが終了の合図を出した。
キャラクター紹介
妖炎公
樹海の長の一人で森林の来いエリアを領地としている白銀のオス狐。
妖炎公の名は、豪傑公が付けたもので意味はそのまま狐達が使う《炎魔法 妖炎》から来ている。
狐達の中でも妖炎の使い方に長けており爪や牙による近接攻撃と組み合わせて遠距離、近距離双方に対応でき実力は豪傑公と互角らしい。
ハーフエルフの最初に見つけた人物でもあり基本的に彼女のことは認めている。
食べなかった理由は、
「赤子やメスの肉は食べないようにしている。
成長や繁殖を待つ必要があるからな。
そもそも肉が細すぎて食えそうにない。」
…だそうだ。
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読んでいただきありがとうございます。
今回は戦闘なしのお話で食事や調理などの初めて書くシーンがありましたので少々不安です。
次回からは、本格的な戦いにシフトする予定です。
かっこよくかけるように頑張りますのでよろしくおねがいいたします。