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半人の剣客#1  作者: イズ ユウ
5/7

少女

…誰だ?狩りの最中妙な光景を目にする。

森人らしき若い女が何やら箱を魔樹に置いている。

新たな管理者か?…いや恐らく違う。

管理者ならば必ず豪傑公から伝言が出る…それに前任者は、手に負えないと言って最近逃げたばかりだ。

しばらくは来ないとも言っていたから間違いない。

箱の前で悲しげに数分ほど立ち尽くしその場を去る。

…何だったんだ…頃合いを見計らい置いていった箱に近づく。

「スンスン…スン」木目の隙間から匂いを嗅ぐ。

中にはあの女とは別の匂い…人間らしき匂いがするが若干あの森人の混ざった匂いがした。

森人と人間の匂い…まがいものかそれも産まれて間もない。

確か豪傑公のやつが言っていた…確かこれは森人の間では禁忌とされていたはず。

だが困った…取り出してゴブリン共に渡すか…いやそもそも許可なく侵入した者を奴らは赤子と言えど保護するか?

基本奴らは捨て子を見つけたら保護して人間に渡す様にしてるが…このまがいものとなると話は別だろう。

夜が明けたら彼らの意見を仰ごう…死んでいたら食おう。

「ボス!…鹿見つけた!!」

「わかった!…今行く。」

定期的に部下に見回らせるか…

男達を縄で拘束中…援軍が駆けつけて事後処理を始めた。

ゴブリンや狐がいきなり現れると彼女らが驚いてしまうため…檻は僕が解錠する事になっている。

豪傑公(ごうけつこう)が「私が壊せば手っ取り早い…」と言って檻の天井を剥がそうとして…彼女らのトラウマになる恐れがあったからである…ちなみに後に来た妖炎公(ようえんこう)も似たような発言をしていた。

だが男達の所持品を漁っても肝心の(かぎ)がない…尋問が必要そうだ。

「まがいもの」…?豪傑公傘下のゴブリンだ?

「これ」…手に持っているのは、先程の戦闘で投擲した坑魔針(こうましん)だ。

「あぁ…ありがとうございます。」ちょうどいい…

先程少女の首を締めていた男の眼前に立つ…さっきわんわん叫んでたから喉は潰れていなかったようだ。

伝わるかな?…僕は男の目の前で鍵のシルエットを針で書いた。

「abam…iG--g-Ka?」そう言うと男は僕の頬につばを吐く…

「cgmaxtaaz…cEaab…」

「はぁ…」呆れて思わずため息が出た…自分の状況を理解していないようだ…

僕は、男の右太ももに針を深く刺す。

すると男は、獣のような悲鳴を上げる。

「言葉は伝わらないでしょうけど一様言って起きます…これは命令です…早く教えないともっと(ひど)くなりますよ。」

(《以心伝心》を使用すれば良いだけの話では?)

《分析》が正論を掲示する。

子を(けが)す者と言葉を交わす事自体が不快です…

それにこの感じだと僕への殺意しか叫んでないでしょう。

安心して下さい殺しませんし…多少尋問の心得があるので。

(了解しました。)

男が鳴き終わったのを確認してもう一度同じ質問をする。

「はぁ…はぁ…cKcEaab!…DaiG-oaiBWf!!」

早く指か視線で教えれば良いものを…僕は針を引き抜き傷口を《炎魔法 妖炎》を起動して焼いた。

男は再び大きな悲鳴を上げる…すると突然肩をポンポンと叩かれる…先程のゴブリンだ。

「罪人とはいえやり過ぎだ…それ位にしておけ。」

…?止めるにしては早くないか?…まぁ確かにこの方法は昔組長に話した時過剰だと言われた覚えがある…正確な情報を出すには都合が良いと思うのだが…ショック死の恐れがあるからかな?

「わかりました…ですがこれは止血も兼ねてるので少し待ったら火は消しますね。」

止血の合間に手と針を洗う為…《スプラッシュ》で大きめの水球を出して返り血を洗う。

「…森人まがい!弓使いがお前の見て場所吐いた!

 檻のない荷馬車の床に箱がはめ込んであった。」

さっきまでチームだった狐が吉報を知らせる。

ほらやっぱり…人間は、恐怖心を(あお)ればすぐ情報を吐く。

彼本人から出て欲しかったがまぁ…結果的に文句はない。

「了解です。」…血が取れたのを確認してすぐに答えた。

水球と火を消し荷馬車に近寄る…

「はいこれ…」一緒に探し出したであろうゴブリンが檻の鍵を手渡した。

………

……

外で悲鳴が聞こえた…魔物だろうか?

檻を壊せる強力な魔物の場合私達はただの餌だ…

さっき布が光ったのも恐らくその魔物の仕業だ。

さっきの女の子は、無事かな…自警団を呼んでくれてればいいけど…!

何かがこっちに近づいてる!魔物か…自警団か…いや魔物だろう…さっき岩が砕ける音が聞こえたから…それに人間にしては影が大きすぎる。

巨人種ならばこの巨体はあり得るが…彼らは確か砂漠地帯にいるらしいし…さっき見た感じ森っぽかったから絶対に違う。

…影が止まった?……それに野太い男の声が聞こえる。

何が話してるようだけど…

「………………………」

ダメだ…声が小さくて何を話してるか全くわからない……

……?もう1人話し声が聞こえる。

話相手は幼い…もしかしてさっきの女の子か?

「豪傑公待的下際鍵有益田唐。」

こっちもダメだ…外国語っぽい…しかも思い当たる単語が1つもなかった。

でも最低限話が伝わりそうなのは助かったかも…!

布がめくられ反射的に身構える…だがめくったのは未発達の幼い手だ…ということは。

「…大丈夫出隅可?」…さっきの女の子だ…さっきは髪でしか判断していなかった為改めて見ると。

どこかの部族だろうか…2・3枚程の布とひもで出来た服とスカートに腰に止める為のベルトと小さい木箱が2つ…そして木製のカトラスらしき剣。

少し緑の混ざった金髪に青く丸い目をしていて多分私より幼い。

種族は…エルフかな?耳が少し尖っている。

「……!首御見瀬底下際!」

女の子が私を見て急に顔に近づく。

「…っえ…ちょ…近い!」思わず声が出た。

少女は、私の顎を持ち上げて首に巻かれたリボンを解き首を優しくなでる。

「跡弐鳴的無位…良刈田…」

多分心配してくれてるのだろう…?

なんで首を離さないんだ?…少女は何か集中しているようだが…

「……ごめんなさい」

…!言葉がわかる…彼女のスキルか!

「…みのがしてしまって…みることしかできなくて。」

彼女はどこか寂しそうな顔をしている…

…そっか…さっき私が首を締められて…必死に飛び出すのをがまんしてたから。

手を彼女の手首に当ててそっと下げた。

「大丈夫だよ…気にしてないから。

 それより…ありがとう…助けを呼んでくれたんだね…」

こちらの言葉も理解しているようで…少女は落ち着いたのかゆっくりと深呼吸している…

「いまかぎを…っえ…」

………安心したら…目が急にぼやけ始めた…疲れが限界まで来たのかな…

少女は、そんな私を見て頭に手を当て何かに気付くと荷馬車から降り始める。

「ごうけ…こう!…おば……をよんできて……………!」

意識が途切れる前にその言葉が聞こえた。

………

……

直後…荷馬車は、豪傑公領に運ばれ少女らの治療が行われた。

僕は、ゴブリン達に賊を任せて薬草の収集と水の生成…魔法で生成した水は…本人と同じ種族以外が口にすると固有の魔力で中毒症状が起こる可能性がある為…煮沸(しゃふつ)消毒したものを渡した…なので厳密に言えばお湯だ。

………先程倒れた彼女が心配だ…急に倒れたので…額に手を当てたらかなりの高熱だった。

心身ともに疲弊していたことはわかっていた事なのに…すぐに気付くべきだった…あの時…豪傑公と一緒におばさまを呼ぶべきだった。

後悔している途中、ゴブリン達の集会小屋の扉が開く…扉を開けたのは…この森で最も腕のいい医者の女性ゴブリンだ…ゴブリン達の中でも年長でよい相談役でもある。

「…!おばさま!…彼女らの容態は!?」

しわだらけの右手でそっと口に手を当てられ…我に返り周りを見回す…周囲の視線がこちらに向いているのに気付いた。

「すいません…」…思わず口に出た。

それを見て頷いたおばさまは、右手を肩に移した。

「あせんなさんな…弱ってるがみんな無事だ…気にしてた子もただの知恵熱と寝不足だよ。」

「そうですか…」

彼女は虚言が苦手だから嘘では無い…時期に目を覚ますだろう。

「症状を聞いてもよろしいですか?」

「…栄養失調が主だね…最低一週間は、ほぼ食べてない。

 薬はあんたが集めたので十分足りると思うから安心なさい。」

「わかりました…他の方々にもそう伝えておきます。」

「その必要はない。」…後ろから先程まで後始末をしていた妖炎公が声をかけてきた。

「おや…珍しい」っとおばさまが右手を自分の胸元に移して一礼して僕も反射的に一礼する。

「事情は聞いた…もう夜遅い…先程の内容は、明日の会議で述べてくれ。

 それと森人…貴様地図は読めるか?」

拠点の地図があったのか…

それと会議は、3週に一度そして一昨日置こなったばかりなので恐らく…緊急会議だろう。

「方角がわかれば可能です。

コンパスがあれば明確に読めます。」

「コンパス?」

針を抜いて地面に絵を書きつつ説明する。

「方位磁針とも呼んで半透明な箱に細長い菱形(ひしがた)が糸や針で吊るされたものです。」

大体の形状を書き終えると…妖炎公は、形をじっくり見てコクリと頷く。

「わかった…探しておこう。」

「森が荒れるねぇ…塗り薬を準備しとくよ。」

おばさまが話に割り込む。

「助かる。」そう言うと妖炎公は、その場を走り去った。

キャラクター設定

ハーフエルフの主要スキル

《BOXスキル・風魔法》

《ウィンド》

風を放出する魔法。

ゼロ距離で使えば仰け反らせる程度の風が出る。

《エアショット》

空気弾を発射する。

溜めが大きいがその分威力が高く主に足元で起動して加速に使う事が多い。

《エアコントロール》

周囲の空気を操作する。

ただの温度管理に使われる事が多いが戦闘では微調整に使われる事が多い。

《BOXスキル・水魔法》

《スプラッシュ》

水を生成する魔法。

水魔法で生成した水は、本人以外には中毒症状が起こる可能性があり消毒が必要。

《ウォータースピン》

水の渦を作る魔法。

壁に使ったり接近戦で足を崩す為に使われる事が多い。

《ウォーターコート》

水で全体に覆う魔法。

相手に(まと)わせて妨害したり疲弊した味方に纏わせて保護したりする。

《BOXスキル・炎魔法》

妖炎公達との交流で習得した《狐の慈愛》のスキルの1つ。

《妖炎》

薄紫の火球を出す。

弾丸並みの速度を持ち任意の物質にしか引火しない。

《妖炎火花》

火球を拡散するショットガンのような魔法。

命中率が高いが個々の威力が低い。

《暗視》

炎魔法同様《狐の慈愛》で習得。

夜間や洞窟の視界補助に使う。

《餓鬼》

飢餓状態の時筋力が3倍になる。

常時起動させる為に食事は、一日一食にしている。

体に悪い為ゴブリンの医者が栄養剤を渡している。

《捨食》

何も食べずとも魔力が栄養の代わりになる。

生成できる栄養には限度がある為最低限の食事が必要。

《一途な毒》

状態異常は1つしか受けない。

常に飢餓状態の為基本状態異常にならない。

《森林の管理者》

視認した植物に視点を変えたりマーキングしたりできる。

主な用途は現状捜索や伝達のみ。

《分析》

鑑定・解析や魔法の補助などを行う。

サポートやナビゲートに利用する事が多い。

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