第11話 『スライム』の役割
『大罪の魔王』を閲覧していただきありがとうございます‼
スライムが人気になって何年経過しただろうか?
ドラクエ偉大すぎるだろ。
無理に押し付けられる美学を燃やす『正義の火』を第6尾とし、五右衛門の『原罪』を渋りつつも粘りある時間を過ごしてくれたおかげで次の階層に切り替えることができた。
『女神』は俺がやろうとしていることを最後まで見届けた上で、俺たちの希望を粉砕して高笑いするつもりだろうから、適当にやってても行けるように見えるが、少しでも隙を見せればアマツがやられてしまったような惨劇が襲ってくるだろうから……本当に油断できない。
五右衛門が担当していた『暗黒湿地帯』の次の階層、メルが担当してくれている『星海』だ。
「ん~……魔王なのに、ここまで風情ある階層を多く用意するのは少しムカつきますね」
「ウチの最高に可愛いスライムちゃんたちが輝ける舞台だ」
「……照れる」
――チャプッチャプ
メルが俺の近くまでスライム形態のまま寄ってくるのを皮切りに、大量のスライムたちが輝く星に照らされる海の浅瀬から出現する。
あまりのスライムの大群に『女神』の顔が思わず引き攣ってしまっているので、もしかしたら精神攻撃のほうが効くのかもしれない。
メルの『星核の根』からの『嫉妬』の力をもってしても、残念なことに『女神』の内側は探れないらしいので、メルと大量の分裂体たちで時間を稼いでもらうしかない。
「スケルトンと言い、ゴブリンと言い……そこのスライムと言い、Gランクの魔物のくせに目立つものですから、せっかくの物語に新鮮さも無ければワクワクもありません」
「最弱候補の魔物が成り上がって活躍するからこそ、心躍るように感じる観客がいるのかもしれないぞ?」
「私がそう感じることが無いから腹が立っているのです。最初こそ最低ランクの者たちが活躍するのは理解できますが、運良く能力を手にしただけで永遠と目立たれて面白くありません」
「Gランクしか召喚できない縛りが無ければ違う道もあったかもな」
「先の蝦蟇は召喚した魔物ではないでしょう? 外の世界から捕らえては配合することを繰り返す選択肢もあったでしょう」
「中途半端に高ランクの魔物たちよりも、Gランクくらいのほうが『大罪』が馴染む気がしたんだよ。そうしろっていう縛りだったしな」
「徐々に乗り越えていく王道を壊した罪は深いですよ」
「今の流行りは強者であることを土台とした物語なんでな」
――ギャリギャリギャリギャリッ!
『女神』の腕が蛇腹剣に変化し、凄まじい速度で俺目掛けて襲い掛かってくる。
そんな『女神』の攻撃に反応したメルの『歪み渦巻く怒りの海』が迎え撃ってくれた。
蛇腹剣と蛇腹剣の競り合いは階層一杯に広がり、いたるところで金属が擦れ合う不快な音が鳴り響く。
人気の物語と言えば『女神』の言うような主人公が酸いも甘いも経験し、少しずつ成長していくようなモノこそ美しんだろうが、俺みたいな小心者には難しい話だ。
毎度毎度死にかけるような思いをしてまで成長していくストレスに俺は耐えられないし、力が無いと冒険できない性格だから『女神』が思うような展開になるとも思えない。
……やっぱ『魔王』ってのが合ってたのかもしれないな。
「Gランクの魔物を馬鹿にする言い草は嫌いだな……どんな魔物だって主役になれるもんだぞ」
「いつから魔物が主役であることが主流になったのですか? 私が求めるのは『勇者』こそが輝く物語ですッ!」
「『凹み竜巻く災いの海』」
――ザシャァァァァンッ!
『女神』の怒りとともに増える蛇腹剣に対し、メルは『歪み渦巻く怒りの海』から放つ砲撃『凹み竜巻く災いの海』で蛇腹剣を破壊していってくれる。
一瞬で蛇腹剣が舞い踊る大荒れの戦場になった。
メルの意識の矛先を操作する『嫉妬』の力は不認知で回避されてしまうそうなので、メルとしてはやりづらい相手だと思うので、俺は早々と第7尾の解放を目指さないといけない。
痛む感覚は捨てた。片目しか視えてないし、味覚やら左腕の力やらも捧げた。
「これは元々アンタの力だしな。お世話になったけど俺の懺悔のための薪になってもらうか」
蛇腹剣同士がぶつかり合う音が響く戦場でポツポツと呟く。
『女神』は主人公至上主義みたいな考えだったり、モブはモブらしく散ってくれという王道らしさが好みなようで、今では主人公よりも目立ったり人気だったり強かったりするキャラが盛りだくさんの時代を認められないのかもしれないな。
好き嫌いは誰にでもあるけれど、自分の好きなモノ以外を絶対悪として否定し踏みつけるような行為は如何なものだろうか。
「……ますたーと『女神』似てるとこあるね」
「うわぁ~……ガラクシアも言ってた気がする」
「あんまり人に自分の考えとか指摘されたくないタイプ。……けっこうな自信家」
「俺って自信家か?」
「……控えめなように見えて、けっこう自信家だと思うよ」
「まじかよ。互いに他者の意見を受け入れづらいってことで燃やしとこうか」
「……自分は批判されたくないくせに、他人にはキャンキャン言いがち」
「……最低じゃないか?」
「……要素があるってこと」
痛覚の大半を捨てたはずなのだが、あまりにも凄まじい痛みを感じてしまった。思わず気絶してしまうかと思ったが、俺と『女神』はお互い様が再びそれっぽく成立させられたなら、まぁ良しとしておこう。
メルの分裂体たちの踏ん張りと数の暴力で『女神』の無限に増え続ける蛇腹剣に対抗できているが、そろそろ危険そうなので急がないとな。
「……どっちも外野からキャンキャン咆えたがり、しかも面と向かってもキャンキャン咆える面倒なタイプ」
「……許してくれメル。俺はまだ死にたくない」
「ますたーも気を付けないとああなるよ」
「……よく学べたよ。そんな俺と『女神』を忘れぬように、『否定の火』を第7尾に灯すとするか」
「……ますたーふぁいと」
「負けられないからな。ありがとうメル、最後の準備を皆としといてくれ」
「はーい」
メルのおかげで色々な気付きと第7尾である『否定の火』を解放することに成功した。
俺は蛇腹剣が踊り舞う中、次の階層へと世界を切り替えることにした。
最後まで閲覧していただきありがとうございました‼
ゲームって影響力凄いですよね。
自分なんて影響受けすぎてます。
次話もよろしくお願いいたします。




