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第1話 『戦士の顔』

『大罪の魔王』を閲覧していただきありがとうございます‼


この風、この肌触りこそ戦場ってやつなんですよね。


――ゴシャァァァァンッ!



 ポラールとハクが闘技場で模擬戦をしている。

 ハクが本気でやり合える面子が限られているので、他の面子よりも模擬戦の回数が少ない分、一度刀を抜くと凄まじいことに毎回なるので見ごたえバッチリだ。


 能力頼りでLvが自身よりも低い者を完封する力をメインにしているハクだが、『独覇道・無限廼終卓(ムゲン・シマイノタク)』を展開してからの点数の高い役を叩き込んでいくのが最強すぎる。

 何が最強かって、打撃やら魔法ではなく、ダメージを付与だったり切断という概念を付与する力なので決まれば戦いを終わらせられる力が多いのが凄い。


 ポラールの展開する地獄を正面から叩き壊していく姿は暴君だ。



「あの2人がこんだけ本気だったら……そりゃピリピリするよな」



 ポラールは毎日真面目だし、シャンカラも真面目なタイプでイデアも割と真面目なので、そこらへんがピリピリしていても『罪の牢獄』に変化は少ないが、ハクやデザイアが真面目になっていると一気に引き締まる。

 不真面目な奴が急に真面目になるとギャップで凄いことになる現象ってやつだな。


 お昼寝担当のハクが、こうして模擬戦で真剣な顔してやっているのを見て、他の面々も一気に雰囲気が変わったらしいので、さすがウチの最凶兎さんだ。



「最強勇者を持ってこられたら、対峙するのは2人のどっちかになるもんなぁ」



 最強勇者のような正面からの殴り合いに絶対勝ちますよみたいな王道系統に、真面目に正面から殴り合っていたら損をするのはコチラなので、ポラールやハクのような自身の戦い方を強制的に押し付けることが出来るタイプは必須だ。


 『原罪』を使用すれば皆自分の好きなフィールドでの戦いに持ち込めるのだが、最強勇者みたいなタイプは関係無しに喰い破ってくるので、可能であれば戦う相手の見極めはしっかりしとかないとな。



「出来れば『女神』に勝つギリギリまで見せたくない『原罪』が多いなぁ」



 あの模倣性能が無ければ、何も考えず『原罪』という俺たち最強の手札を切り放題で楽しめるのだが、あんな簡単に模倣されてしまうと使いにくくなってしまう。

 まだ半分も見せていないくらいなのに、すでにバビロン・アヴァロン・イデアあたりの『原罪』の模倣を頻繁に出されると、俺たち的には最高にやりづらくなる。


 そんなことをのんびりと観戦しつつ考えていると、スライム形態のメルが座っている俺の膝上までやってきた。



「ますたー……疲れた」


「そりゃ五右衛門と阿修羅に巻き込まれたら仕方ない」



 ポラールとハクの熱に当てられた阿修羅に巻き込まれていた五右衛門とメル、かなり暑苦しそうな模擬戦をしていたんだろう。溶けてしまいそうな感じでクタクタになっているメルを撫でながら、まだまだ白熱しそうなポラールとハクの模擬戦を観戦する。


 メルも『女神』のように認知を弄れる力があるので、阿修羅と五右衛門から上手く抜け出してこれたんだろうな。

 そう考えると、『女神』の不認知の力ってのは何処まで考えても厄介なもんだ。



「みんな……どれだけ早期決着させれるかに意識を置いてる」


「長引くと面倒になりそうだから……それも一理ある」


「……疲れた」


「お疲れ様」



 『女神』たちと戦う上で、戦闘を長引かせてしまうと相手側のほうがメリットが多そうだというのが俺たちの見解だ。

 過去の勇者まで戦力として駆り出してくるんだから、手札の数は明らかに『女神』陣営のほうが多い。ならば俺たちは火力に特化して全ての戦闘において早期決着を狙って破壊していきたい。


 幸いにも、ウチには敵と戦うよりも殺すことに長けている能力が多いので、なんとか行けるだろうと踏んでいる。

 

 今まで散々やってきたので警戒はされているだろうが、最後なので出し惜しみせずに詰めていきたい。



「レーラズくらい落ち着いてくれればいいのに……」


「今のところお昼寝してるだけに見えるけどな? まぁレーラズらしいんだけどさ」



 ウチの面々でトップクラスに手札を明かしていないレーラズ、もしかしたら最終決戦では出番が多くなるかもしれないと伝えてあるが、本人は気にすることも無く、いつも通り優雅にお昼寝タイムに没頭している。


 シンラなんかも手札を見せたことが少ないので刺さりそうではあるが、シンラは3属性特化だから効き目が薄くなるかもしれない。



「……ますたー、なんだかんだ戦うこと考えるの好き」


「あぁ~……自分が戦うのは好きじゃないけど、誰かが戦うの考えるのは好きかもな」


「1番最初の魔王戦争の時も……それなりにウキウキしてたって聞いた」


「罠作っている時なんかは最高に良い顔してたかもな」


「……今楽しくない?」


「……最高の仲間がいてさ、ラスボス前まで来て心残りも特にない。こんなにも熱気ある最後の仕上げを見てて……楽しくないわけないさ、なんたって大魔王だからな」


「ますたーカッコつけてる」


「……さすがに大魔王らしくしてみた」


「なんか似合わないね」


「…あまりにもストレートだ」



 負ければ自分だけじゃなくて、多くの人が死んでしまう状況ではあるが、素晴らしく強くて頼りがいのある仲間たちが居てくれるおかげで、こんな状況でも楽しみを見出せていられる。

 『女神』がどれだけ強いか分からんけど、俺たちは俺たちなりに最高の仕上がりを出来ているつもりだ。


 最弱だった魔王の底力……見せてやろうじゃないか。

最後まで閲覧していただきありがとうございました‼


書籍やらアプリコミカライズやら色々あります。

お小遣いに余裕のある方、よろしければ!


次話もよろしくお願いいたします。

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