第3話 『射貫く者』
『大罪の魔王』を閲覧していただきありがとうございます‼
射法八節とかいう言葉
かっこよすぎる。
ただ透過しているのではなく、何かしらの核だけこの世に残し、それ以外は消失しているのではないかと思えるほどの攻防完璧なスキルセットを見せてくるグリーンコメット。
『見えるけど見えない者』・『ただそこに刺さる矢』・『射法八節・落日弓』の3つのスキルだけで、俺は死を突き付けられ、相手の気分という理由で見逃されるほどに圧倒された。
グリーンコメットの不可避の矢が再度放たれようとしていた瞬間、俺たちは各々咄嗟に浮かんだ対処法を試していく。
まずは阿修羅が4人に分身し、グリーンコメットを囲むように陣取り、俺はメルと『UNION・SiN』し、自分とラプラスを囲むように『捻じれ逆巻く母なる海』を展開した。
イデアは『真竜天命ノ息吹』という1度だけ致死の傷を負っても再構築して復活できるという根性スキルを全体に使用してくれた。
『真竜天命ノ息吹』は燃費も悪く、1度使用すると数週間は使用不可になるとっておきの1つだ。
「これも抜けてくるのかよッ! ぐぅッ!?」
「うぐッ!」
俺とラプラス、そしてレクエルドの心臓部分に刺さるまで見えない不可避の矢が突き刺さる。
『捻じれ逆巻く母なる海』という外からの全てを拒否する防御札を切ったのに……まるで関係ないかのように通過してきやがった。
『真竜天命ノ息吹』が無かったら完全に心臓貫かれてゲームオーバールートだったかもしれない。
自分の身体と矢を透過させる『見えるけど見えない者』が特にヤバすぎる!
先は間に合わなかったけど、とりあえずメルのスキルである『分裂』を使用して、たくさんの俺を『捻じれ逆巻く母なる海』の内側に展開する。
「阿修羅下がる!」
「応ッ!」
――ゴゴゴゴゴゴッ!
阿修羅がグリーンコメットを囲みこむが、まったく気にすることなく丁寧な所作で弓を構えようとしているグリーンコメットを見てイデアが叫ぶ。
さすがに阿修羅もどう展開していくか悩んでいたんだろう。イデアの叫びに素早く応じ、グリーンコメットから距離をとっていく。
4人に分身した阿修羅がグリーンコメットから距離をとって、俺たちの近くまで跳んできた瞬間、イデアが前に出ながら夥しい量の魔力を解放する。
「『天威創生・悪の宇宙』」
――パリンッ!
ガラスが割れたような音が鳴り響き、イデアの周囲半径500mほどに銀河のように煌めいている魔力が解き放たれる。
キラキラと美しい魔力が辺りを覆い尽くし、矢で俺たちを射貫くように構えの所作に入っていたグリーンコメットの視界を遮るように魔力が光りだす。
そんなことお構いなしと言わんばかりにグリーンコメットは俺たちを真っ直ぐと見ながら矢を解き放った。
『『射法八節・落日弓』』
「『不完全生成の秘儀』、そして『ゾビアーの水鏡』」
――パリンッ!
俺たちの目の前に展開された『ゾビアーの水鏡』が気付けば飛んできていた矢によって粉々に砕かれる。
砕かれた鏡の破片に映し出されていたのは、『見えるけど見えない者』によって透過していたはずのグリーンコメットの腹に矢が突き刺さり苦しんでいる姿だった。
『グゥッ!? 何故身体が!?』
「それがデミウルゴスが授けた新たな肉体だよ。まぁ元のモノから考えればだいぶ不完全だけど許してね……私は不完全なる悪の神様だからさ」
『どういうことだ? どうして俺にスキルをかけることができた?』
「そこは秘密かな……まだ終わって無いからね! 『混沌にて輝く一雫』」
――ドドドドドッ!
グリーンコメットが何故自分の身体が具現化されているのかに気付かせぬ間にイデアが『混沌にて輝く一雫』を放って仕掛けていく。
襲い掛かる銀色の雫を『ゾビアーの水鏡』による反射ダメージで膝をついているグリーンコメットは回避することができず直撃していく。
イデアが発動したのは原罪である『創悪』だ。
『天威創生・悪の宇宙』はイデアの魔力に触れ、影響を受けている者をイデアのスキルの強制対象にするスキルであり、これは効果範囲に入ってしまうと絶対に不可避であり、僅かな痕跡や魔力の残りかすだけでも捉えられてしまう恐ろしいスキルだ。
そして『不完全生成の秘儀』は効果対象の肉体を新たな者へと創り変えるスキルだ。創り変えられた者は不完全な者にされてしまうのもあって相当劣化させられる。
『悪』を掲げる不完全なる偽りの神、それがデミウルゴスであり、ウチのちょいクールな姉御役であるイデアだ。
「ふぅ……これも効かなかったら、メルの『原罪』出すしか無かったかもね」
「……ようやく反応した。……『女神』の気配が濃いよ」
「勇者の肉体に『女神』様の一部でも埋め込んだんだろう」
『混沌にて輝く一雫』で見るも無残な姿になってしまったグリーンコメットに油断はせずに近づいていく。
メルとの合体を解除した後、先ほどまで完全に捉えられなかったグリーンコメットの核を認識することができて、内側まで情報を得ることができたようだ。
イデアの『創悪』は俺たちも下手すると危なくなりかねないので、ここで済んで本当に良かった。
いつものようなテンポ感で終わったように見えたけど、敗北……俺が死ぬってとこまで来たのは『七元徳』との魔王戦争以来だが、あっちは手があったけど、今回はイデアの判断がなければ速殺されてたな。
俺は少し考え事をしている阿修羅に声をかけにいく。
「まるで阿修羅読みされてるかのような敵だったな」
「イデアがいなければ若を失って負けていた。メルもどうにか出来たかもしれないが、あの魔王が無事か怪しかったからな」
「あの3種のスキルセットで完封されるところだったな。ちなみにだけどラプラスいるから強がっているけど痛すぎて泣きそう」
「あの矢を受けて泣きそうで済んでいるのなら、若は立派な魔王だ」
俺は唖然とするラプラスと苦い顔をしているレクエルドに話せることを伝えるため、とりあえずはダンジョンの立て直しを手伝っていくことにした。
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