第8話 『神の獅子』
『大罪の魔王』を閲覧していただきありがとうございます。
『神の〇〇』
天使を調べれば様々な異名が出てきますが
大抵かっこいいのズルいですね。
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします‼
『知恵』のスキルである『瞬光聖翼』により、神熾天使の中でもトップクラスの速さをだせるようになったフロネシス。
翼と剣に闘気と『聖神力』を大量に纏わせ、レーラズの動きを観察する。
何かしらのスキルやアビリティが発動していることは理解できているフロネシスではあるが、『怠生夢現楽土』の効果には気付けず、先ほどから自身の攻撃が回避されているのは、転移能力に近い何かであると考えているフロネシス。
『知恵』によるステータス加算のおかげで自身の能力には自信のあるフロネシスは、速さと力の暴力で制そうと動き出す。
「『暴れ狂う光撃獅子』」
「『星空領域凍獄盾』」
――ドドドドッ!!
闘気と『神聖力』にモノを言わせる高速突進の連続攻撃である『暴れ狂う光撃獅子』と、『怠惰』のスキル、蒼く輝く濃霧のような魔力を周囲に広げる『星空領域凍獄盾』。
根の壁を粉砕しながら暴れ回るフロネシス。
跳弾のように跳ねまわりながらレーラズの気配を感知するが、そこでフロネシスは違和感に気付き、急停止して周囲を警戒する。
「この魔力……どうなっている?」
空間を覆い尽くすのは蒼く輝く魔力の霧。
レーラズが使用した『星空領域凍獄盾』、これは相手の気配探知系統の力を封じ、ステータスをバフが加わる前の基礎の状態で固定するという守りのスキル。
魔力の霧で視界も遮られ、気配探知も効果を無くし、『知恵』の力でステータスが上昇していた部分も消されてしまい、さらには『怠生夢現楽土』による感覚や体感時間をも狂わされているフロネシス。
「気配を断ち、我が『知恵』をも打ち消す。恐ろしいタイプの魔物だ」
「速くて驚きましたが、止まれる思考力はあったんですね♪」
「……声は聞こえても、気配も何も感じぬとは……」
「飛んでいる敵に対して、攻め手が少ないのが私の困りどころですねぇ~」
「随分余裕であるな」
「そうですか~?」
『大罪』側の六封城の効果と相まって、レーラズの『怠惰』の力が完全にフロネシスと『知恵』を上回っている現状、完全に攻め手を封じられ、動き出せずにいるフロネシス。
こういった時に軍全体をサポートしていたのが『節制』の『美徳』であるイスラフィアであったが、彼女はすでに死んでしまっている。
前線に飛び出し、レーラズと1vs1をしていることが、いかに不味い状況なのか、さすがのフロネシスにも分かってきたようで、気配を断たれながらも、一旦後退すべく頭を働かせる。
(『知恵』に『神の獅子』としての召喚術を封じられた今、如何にして抜け出したものか……)
「ちなみにお仲間さんはここまで辿り着けないと思うので、あんまり待ってても意味ないですよ?」
「……我ら『美徳』を舐めるでない」
「6人で役割分担しなくちゃいけないのに、ここに来る余裕のある天使さんはいるんですか~?」
「我が力を測り終えたと思われるのも心外なり……『偉大なる神の獅子へッ!』」
――ゴウッ!!
フロネシスの鎧が機械人形だったのかと如く変形し始める。
闘気と『神聖力』を溢れ出しながら、姿形が翼の生えた獅子へと変わっていくフロネシス、『知恵』によるステータスの恩恵、猛獣たちを召喚する術、そして破壊力のある武技を封じられてしまい、追い詰められたフロネシスが繰り出した最終奥義である。
咲いていた花々を巻き上げながら誕生したのは、白銀に輝く重厚な獅子。
『偉大なる神の獅子へ』、このスキルはフロネシスの姿を獅子へと変形させるだけでなく、Lvを900から920へと上昇させ、基礎ステータスも1.5倍に跳ね上げるもの。
剣を使用した武技であったり、極光魔導を使用できなくはなるが、『獣王闘技』という違うスキルが使用可能になり、先ほどまでとは違う戦闘スタイルで戦える切り替え技でもあるのだ。
「消し飛べッ! 『獅子王大暴嵐ッ!』」
「周辺全部吹き飛ばすつもりですか~」
――ゴウッ!!
獅子の姿へと変形したフロネシスを中心に暴風が巻き起こる。
巻き上げたモノを斬り刻む暴風は根の壁を粉砕し、大地を削り、レーラズが展開していた『星空領域凍獄盾』や『夢幻花粉』を消し飛ばした。
レーラズが創り出した根の迷路の中心、『七元徳』側からすれば、1番近い六封城の大地の一部をも消し飛ばした一撃は、天使たちが苦戦していたところに訪れた道標にもなるような規模。
レーラズの『星空領域凍獄盾』と『怠生夢現楽土』から解放され、気配を機敏に察知できるようになったフロネシスは1つの大きな異変を感じる。
自身の真上にレーラズとは違う……とてつもなく巨大な魔力の持ち主を…。
「馬鹿な……貴様ら幹部は互いにエリアを区切って戦うのではないのか!?」
「主曰く、「『そんな戦法するわけない』って思わせた時点で一手は確実に決まるもんさ」……だそうだ。さすがに警戒が無さ過ぎたな」
フロネシスの真上に現れたのは、4本の腕、巨大な弓に三又槍を装填して構えている人型の魔物、『神化』によって『災害ト暴嵐ノ神』に姿を変えたシャンカラであった。
フロネシスが先程使用した『獅子王大暴嵐』とは比べ物にならない風の力と闘気を纏った三叉槍は、引き絞られた弓によって放たれようとしていた。
「『叫べ、暴虐の風神槍』」
「オォォォォォォォォッ!!!」
――ドシャァァァンッ!!!
大技を放った直後の隙に放たれたのは、『災害ト暴嵐ノ神』による無慈悲な『叫べ、暴虐の風神槍』。
レーラズの感覚鈍化と気配遮断は全て、シャンカラが来るまでの一瞬のその場しのぎ、フロネシスが何かしらの手段で抜け出し、力任せに根の壁を破壊し、天使たちの士気が上がるかと思った瞬間に沈めるという性格の悪い策。
神速で迫る『叫べ、暴虐の風神槍』に果敢に立ち向かうフロネシスであったが、勢い空しく、暴風の槍に斬り刻まれながら、凄まじい勢いで空から地へと叩き落されていく。
根の迷路の下側から突き抜け、2㎞ほど穿たれたところで、フロネシスは木端微塵となって消滅していってしまう。
「本当にこれで天使の士気が下がるの~?」
「……上がっても下がっても変わらないと思うけどね」
『神化』を解除し、通常の状態に戻ったシャンカラは、フロネシスの気配が完全に消滅したことを確認し終え、レーラズの隣までやってくる。
魔王戦争では見せてこなかった『枢要悪の祭典』によるエリアを区切らぬ連携プレイ、アビリティやスキルで互いを妨害してしまうが、組み合わせややり方で連携をとるという策。
今回の場合はフロネシスが強引にレーラズの妨害能力を突破すると予測した、シャンカラによる不意の一撃必殺。味方の能力を強制解除するアビリティの無いシャンカラとレーラズだからこそ成し得る不意打ち作戦。
「統制って言うけど、自分から乱して突っ込んで来た時点でコチラの勝ちだったかな~?」
「次の作戦に移るとしよう。最初の城を壊すまで、敵陣に転移出来ないのが痛いけれどね」
「根の迷路の再生に30秒待っててほしいな~♪」
「……承知したよ」
『大罪』と『七元徳』の魔王戦争。
最初の幹部クラスで合った神熾天使アリエル・フロネシスの消滅、戦争開始から僅か3分程の出来事であったが、『七元徳』の天使たちに衝撃を与えるには、十分すぎる最初の攻防なのであった。
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