第19話 照らすは『太陽』
『大罪の魔王』を閲覧していただきありがとうございます!
――『罪の牢獄』 ダンジョンエリア 闘技場
帝国騎士団第7師団団長『太陽』ことソレイユ。
彼は今、ポラールにより転移魔法を決められて、『罪の牢獄』の地下11Fの闘技場に跳ばされた。
転移してきたソレイユが目にしたのは、一度戦ったことのある威圧感のあるアンデッド騎士の姿。
「ルビウスで完封されて以来か……この世に存在していて欲しくない魔物だよ」
「………」
ソレイユの問いに対し、一度戦い完封したことのあるアヴァロンであるが、特に反応することなく『火ノ神聖魔剣』を地面に堂々と突き刺し、仁王立ちの如くソレイユの動きを見ている。
能力を防ぐと同時に使用不可にしてくるアヴァロンの鉄壁を一度経験しているのもあり、攻め手が浮かばず、踏み込むことを躊躇してしまうソレイユ。
実力差は以前の戦いで解ってはいるが、帝国騎士の団長の意地にかけて、弱さを見せるような姿勢をしたくないと、ソレイユも自慢の剣をアヴァロンにむける。
「この世に完全な者など存在しない……その守り……必ず突破してみせる!」
――ゴウッ!!
ソレイユの身体から尋常ではない量の炎が吹き上がる。
出し惜しみをすれば一瞬にして葬られてしまうと、前回の戦いで学習しているソレイユは『太陽』の出力をいきなり最大限に放出する。
「『花咲く小太陽』『獄炎向日葵』」
――バリンッ!
ソレイユの2種の攻撃は前回と同じように跡形も無く消滅してしまう。
勢いよく跳んでいった威力のある火球『花咲く小太陽』も、足下から敵を焼き尽くす『獄炎向日葵』も、何かが割れるような音と同時に消滅し、以後使用不可になってしまう現象をソレイユは確かめる。
前回の戦いでは何が条件でスキルが使用不可になってしまうのか解らず、攻勢にでていたはずの自分が、ただただ消耗していくという事態に陥ってしまったことを思い返しながら、ソレイユは立ち止まらないように動きながら頭を働かせる。
『太陽』の影響により、闘技場は大炎上舞台へと変わりつつあるが、そんなことお構いなしと言わんが如く、アヴァロンは『火ノ神聖魔剣』に雷の魔力を纏わせ、自身の頭上に剣閃を放つ。
「『雷雹剣雨ヴァルテクス』」
――ズドドドドドドッ!!
上空から降り注ぐは、雷魔力で形作られた魔力剣の雨。
何かに狙いを定められているわけではなく、凄まじい速さで地面に向けて直線的に降り注ぐ雷剣の群れにソレイユは冷静に対応すべく、剣に闘気を纏わせて迎撃の構えをとる。
「『太陽は昇り続ける』」
――ゴゴゴゴゴゴッ!!
上空から降り注ぐアヴァロンの『雷雹剣雨ヴァルテクス』に対し、地上から大量の火球を放ち続けることで相殺を狙うソレイユ。
炎上し続ける炎の中から次々と放たれる火球は雷剣とぶつかり合い、衝撃波を巻き散らかしながら相殺されていく。
――パリンッ!
「くッ!? 本体を狙う訳じゃなくても、本体に当たるだけで封じられるのか」
――ドドドドドドッ!
『太陽は昇り続ける』がアヴァロンの『永遠伝説十二ノ苦難』の守りで使用を封じられ、『太陽』の出力をあげて炎の壁を放出しようとするも、アヴァロンの『星をも砕く狂気』の守りを無視する能力の前に意味を無くす。
持ち前の身体能力と剣技で何本かの『雷雹剣雨ヴァルテクス』を撃ち落していくが、凄まじい速さで降り注ぐ雷剣の勢いを捌き切れず、少しずつ傷が多くなっていく。
「くッ!?」
「『雷轟鉄槌』」
――ガシャァァァンッ!
降り注ぐ雷剣に苦戦していたソレイユの隙をついて、雷の魔力を纏った剣撃を叩き込むアヴァロン。
雷剣を捌くことに意識を割いていたソレイユが、アヴァロンの一撃を咄嗟のタイミングで防げることは叶わず、勢いよく闘技場の壁まで吹き飛ばされてしまう。
『太陽』の魔力にまったく影響を受けず、灼熱の闘技場の中を雷の魔力を放出しながら、壁に吹き飛ばされて不利状況に陥っているソレイユに近づいていくアヴァロン。
勢いよく壁に吹き飛ばされたソレイユは土埃を魔力風で吹き飛ばしながら、体勢を整え、ゆっくりと迫ってくるアヴァロンにむけて剣を構える。
「実力差があるってことは……前の戦いで判っていたけれど……やはり恐ろしい存在だ」
僅か数瞬の攻防で圧倒的な力の差を見せつけられ、思わず弱音がでてしまうソレイユ。
スキルを防ぐどころか封じてくるという反則レベルの鉄壁性能、
ソレイユの何倍もの単発火力と圧迫感を感じるような戦線維持能力。
そして、アヴァロンの守りを突破した先に待ち受けるのは、火系統の力を吸収して回復してしまうという、火の力に特化したソレイユからすればどうしようもない能力を実は持っている。
因縁の戦いかと思えば、確実に勝てるであろうマッチを仕掛けるソウイチの戦略でお馴染みの、絶対に勝てるであろうマッチング作戦なのである。
「わざわざ1対1の場面を作り出しての戦闘……『大罪の魔王』は何を考えているんだい?」
覆しようもない戦闘力の差。
ソレイユが持つ『太陽』のポテンシャルを最大限に発揮しようにも嬲り殺しされるであろうレベルの差。
ソレイユが思い浮かぶに、この状況は完全に実験体として戦わされているとしか言えないような状態。
諦めたわけではないが、どうにも打開できるような方法が浮かぶわけでも無く、少しでも帝国騎士団第1師団副団長であり、ソレイユたちをアークに行かせる作戦を立案した『運命の輪』の期待に応えるべく、アヴァロンにダメもとで声をかけ続けるソレイユ。
(『運命の輪』がこの状況を視えているのなら……少しでも情報を引き出して、帝都の民を確実に安全な道に導けるはずだ)
圧し潰されそうな闘気を撒き散らしながら、どっしりと歩いてくるアヴァロンに闘志を絶やさずに視線をむけるソレイユ。
『運命の輪』の詳しい能力を知っているわけではないが、指定した人間がどこにいようと様子を確認することができるという力があるのは知っており、アークにきた自分たち3人の様子は視られているだろうと予測し、できるかぎりの情報を引き出し、帝都に迫る危機を回避するため、自分の命は惜しくないという覚悟を持ち、アヴァロンに質問を投げかけていく。
「……どれだけ優れた能力だろうが、確実に穴があるはずだ」
――ゴウッ!!
ソレイユの身体から勢いよく炎の魔力が溢れだす。
少しでも戦闘時間を長引かせることでアヴァロンの能力の秘密を帝都で覗いているであろう『運命の輪』に解明してもらうため、持てる全てをぶつけるために、ソレイユは残る全ての魔力を自身に纏わせる。
「第7師団の意志……『太陽』の魂は次世代に引き継がれる」
『太陽』の力で傷口が勢いよく再生していくのを感じながら、自身の剣を強く握り、アヴァロンにむけて鋭い闘気をむけるソレイユ。
自身の放つ魔力や闘気が無効化されないことを、しっかりと確認したところで、ソレイユはアヴァロンにむけて跳ぶようにして向かっていくのだった。
最後まで閲覧していただきありがとうございます!
太陽ォォォォォォォォォォォッ!
って叫ぶゲームが昔あったような……。
ガン・〇ル・ソルって今思えば、かなりカッコいい名前ですよね。
次話もよろしくお願いします!




