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第5話 『懐かしい』日々へと


 夜の街を迷惑にならないような声量で話をしながら歩いている、元『七人の探究者(セプテュブルシーカー)』の4人。

 なんといってもそのうち3人はEXランクの人間であり、普通の迷宮都市ならば、そこのダンジョンはすぐにでも攻略されてしまう勢いだが、アークはそうではない。



「そんなにヤバいの~? すっごく気になる!」


「7人揃っても勝てないな……と思ったのは初めてだったな」


「副団長にそこまで言わせんのか」


「気になるー!」



 最強のスキルを作りたいソラからすれば、アルバスが絶対に勝てないとまで言わせる魔物が気になるのも仕方がない話だ。

 カノンは長くなりそうだからと話を切り替えてあげることにした。



「そういえば2人は八虐をそれぞれ倒してくれたんだってね? 手紙でも書いたけど、無事でよかったよ♪」


「『不義(アンライチャス)』は元勇者の恭弥さんが、『不孝(アンフィスファル)』はソラがほとんどやってくれたおかげだけどな」


「そーそー! 面倒な奴だったけど、アタシの相手じゃなかったわね! 本当に死んだかどうか怪しいけど」



 カノンに呪いをかけただけでなく、たくさんの人を犠牲にして何かをしようと考えている『八虐のユートピア』を許していない4人。

 ルークとソラは襲撃を受けたこともあり、なんとか退けることが出来ており、その都度メンバーには手紙を送っているので『七人の探究者(セプテュブルシーカー)』内での情報共有は怠っていないのである。

 今回のソラがアークにやってきたのでも、カノンが5人に完治したという手紙を見たが故にやってきたことなのだ。



「あいつらどーやってアタシたちの場所を突き止めてるんだろー?」


「私の命は奪っておきたかったみたいだから、何かしら仕掛けてくるかもしれないね?」


「そういうのフラグって言うらしいよ」


「面倒な集団だ」



 『七人の探究者(セプテュブルシーカー)』の面々からすれば、解散させられた憎き集団でもあるし、非人道的な行いをしている見過ごせない連中でもある。

 カノンが話を逸らしはしたが、ソラは忘れていないようで、ピョンピョン飛び跳ねながらアルバスに近づいていく。



「魔王と知り合いだったら頼んでよー!」


「そこまで暇じゃ無いし、無条件で動く者でもない……この状況も知っているだろうしな」


「ぶーぶー! アタシみたいな美少女のお願い聞いてくれないのかなー?」


「自分で美少女って言うか普通?」


「煩いルーク! 噂では美少女冒険者って呼ばれてんのよ!」


「ソラちゃんが美少女なのは分かるけどな~」


「カノンに言われても嬉しくないんだけど」



 ソラも認めざるを得ない美女であるカノンに褒められてもイマイチ乗り切れないソラだが、どうにかアルバスでも勝てないという判断をさせた魔物と戦うために作戦を考え始める。

 ルークはそんなソラを見て、まだ1度しか挑んでいない『罪の牢獄』のことを思い返す。

 そこまで難しくも無かったけど、火の魔族にはソコソコ苦戦させられたし、自分がいなければ全滅していただろうから、ダンジョン難易度はソコソコあるだろうと思っていたが、アルバスに勝てないと言わせる存在が奥地にいるだなんて挑戦したときには思ってもみなかった話だ。


 ナッシュがクリアしてみたいと言っていたのを思い出して、明日になったら反対しようと決意するルーク。

 ソラが飛び跳ねながら考えているのを3人は微笑ましく見守る。

 『七人の探究者(セプテュブルシーカー)』時代はソラとルークは、本当に子どもとも呼べる年齢で、カノンとアルバスに引き取られてから色々教えてもらい、能力を上手く制御出来るようになったとはいえ、子どもだったあの頃から成長したことを実感できて、ルークは少し嬉しい気持ちになってようで、表情が緩んでいる。


 それに気付いたカノンとアルバスだが、あえて指摘はせずに2人も懐かしむように夜道を歩いていく。


 結局1時間程歩いて、さすがに眠くなったカノンの一言で解散の流れになり、ソラはカノンとアルバスが使用している宿にお邪魔することになり、ルークとは途中で別れたのであった。








――『罪の牢獄』 居住区 ソウイチの部屋



――ツンツンッ



「……ん~、もう朝か?」


「んーん、ますたーごめんね、気になることあった」



 1日を終えて、メルと一緒にお話ししながらゴロゴロしていたら気付いたら寝てたな。

 俺の右手を枕代わりに使っている人間形態のメルが何かあったようで起こしてきた。とりあえず寝間着も可愛いし、メルも可愛いので愛でたいところだが、とりあえずは報告を聞かなくちゃな。



「気になること?」


「うん。元勇者に引っ付いてた子が1人で街から出て行こうとしている」


「……エルちゃんだったかな? こんな時間に1人で外に出るなんて危ないけど、どうしたんだろうか?」


「思考が読めない。まったく何も考えていない状態」



 何も考えていないのに、街の外に向かうように歩けているってのは何かしらありそうだな。

 エルちゃんの『認知の隙間を生きる者(コード:アンノウン)』は『枢要悪の祭典(クライム・アルマ)』には効かないみたいだけど、発動したら存在も忘れてしまうようで、俺もメルに言われなかったら思い出せもしなかったかもしれない。


 メルはアークにしか根を張っていないから、様子を見に行くなら今がギリギリってことだな。



「……メル、動けるか?」


「ますたーと一緒なら何時でも大丈夫って言いたいところだけど、ごめんなさい、少し遅かったかも」


「……街の外から出たか?」


「うん……街の外で転移したっぽい」


「俺たちに追跡させないみたいなやり方だな」



 とりあえずメルを撫でながら、何が起こっているのかを冷静に考えてみるけれど、エルちゃん含む、四大学園から来ている人間との接点が少なすぎて、なんでエルちゃんが転移したのかも分からんし、朝になったら戻ってくるかもしれないから、今手をだすべきじゃないか。



「まぁ…なんとかなるだろ?」


「……起こしちゃっただけになった」


「もう一回眠くなるまで、お話の続きでもするか?」


「いいの?」


「せっかくだしな、先に寝たほうが負けだぞ」


「さっきは、ますたーすぐ寝たくせに♪」


「次勝てば五分だから平気平気」



 きっと俺の方が先に寝てしまうんだろうけど、メルが楽しそうだし、こんな感じで魔物たちと関わる時間は俺も好きだし、何より癒しなので最高だ。


 メルやガラクシア、ポラールにイデアやハク、すんごく稀にデザイアとリース、そして果樹園に遅い時間に行くとレーラズに誘われる。みんな関わり方がもちろん違うし、誰と関わっていても面白いので、俺としては寝る時間が楽しみだったりする。

 何気にウロボロスの上でキャンプ気分で寝るのも凄く好きなんだよな~。

 

 1度ウロボロスの上にテントを張らせてもらって、みんなで寝たこともあるが、かなり楽しい時間になった記憶がある。盛り上がって寝れなかったが…。

 魔王の俺が寝ないとやっていけないのは、完全な欠陥なんだと思うんだよな。みんなは寝なくてもピンピンしているのに…。


 メルとの勝負、まずは朝ご飯は何が美味しいのかって話をしていたはずだが、いつの間にか俺の意識は失われていた。


 

 

最後まで閲覧していただきありがとうございます!


口癖になりかけている言葉「平気平気」。あまり良い傾向に無い気がする。


次話もよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] そういう言葉を意識して力づけるために言うのは良いけど、口癖で意識せずに口にするようだと危ない。 ソースはIT土方の俺と周囲(病んで辞めた人はよく見たし俺も辞めた)
[良い点] アヴァロン先生の洗礼を受けるがよい 大抵手札を2、3個封じられたら一旦撤退を考える思考の罠がエグいからなぁ 13以上もスキル持ってるやつがまず少ないだろうし
[一言] あー、これは他の魔王の小細工かもしれませんね。 あと元勇者くんのカウンターは本人の生死に関わらず返すんですかね?かなり大きな違いですけど、そこの所は追々なのかな?
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